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Book a safezone

 エレベーター内にブザーが響き渡る。扉が閉まろうとした瞬間である。

 美咲の手元にAwazon超お急ぎ便の箱が出現していた。ずっしりと、重たい。

 エレベーター内は、美咲の他に8人がいた。そのすべての視線が美咲に集まる。


「す、すみません! 降ります!」


 美咲は慌ててエレベーターを出る。

 箱を開封する。小説の文庫本がみっちりと詰まっていた。


「……はい?」


 美咲は首をひねった。どう考えても、今すぐ必要とは思えない。

 振り返る。美咲のいたスペースには、既に別の女が乗っていた。ビジネススーツを来た、気が強そうな女だ。

 エレベーターのドアが閉まる。そのまま上に昇っていくのを、美咲は黙って見ていた。

 不意に、何かものすごくすっぱい臭いが鼻を突いた。気にはなったが、深く考えないことにする。美咲はエレベーターのボタンを押す。


「もう……Awazonも余計なことして……」


 美咲は箱を抱えてエレベーター前で待った。表示板は5。6、7と進み、そこで止まった。人が乗り降りしてるのだろう。美咲は上を見上げたまま待っていた。

 美咲はしばらくそうしていた。

 表示板は、「7」のまま動かない。


「……遅いっ!」


 エレベーターは2本あるが、そちらも動いていなかった。

 美咲は諦めてエスカレーターで昇ることにした。

 現在位置は1階、目的の書店は5階。足取りは軽くはなかった。気分的なものもあるが、Awazonから届いた箱が存外に重たかった。


 美咲は書店でさらに10冊の本を買った。

 本はAwazonから大量に送られてはきたが、物だけ渡されるのと、実際見て選ぶのでは楽しさが違った。荷物は増えたが、重さと幸福度が比例していた。


 美咲はエレベーターに向かう。ちょうど、ドアが開くところだった。


「あれ?」


 美咲は首を傾げた。

 降りてくる人間は、さっき美咲が乗った時にいた人間と一緒だった。30分ほど前の話である。


「ひょっとして、エレベーター止まってたのかな?」


 エレベーターから降りる人間は、一様にぐったりしていた。無理もないと美咲は思った。あんな狭い空間に大人数で閉じ込められたら溜まったものではない。


 最後に、ビジネススーツを着た気の強そうな女が降りてきた。颯爽と歩き、美咲の真横を通っていった。

 途轍もなくすっぱい臭いが嗅覚を刺激して、美咲は顔をしかめた。

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