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【HEART】 goes on

 心臓が臓器灌(O)流保存(C)装置(S)の中で微かに動いていた。

 拍動が、耳の中ではっきりと鳴っていた。

 陽川には、その音が目の前にある心臓のものなのか、自身の心臓のものなのか、区別が出来なかった。


 Awazon超お急ぎ便。入っていた箱にはそう書かれていた。

 箱の中には、「これはあなたが10秒後に欲しくなる商品です」と書いた書面と共に、書類が同梱されていた。

 臓器提供者ドナー移植希望者レシピエントのクロスマッチ試験の結果である。


 陽川の手に熱が帯びていく。移植希望者の欄にある名前は、水野晃樹。陽川の患者だ。「いつの間に検査を?」という疑問は浮かんだが、それどころではなかった。

 結果は陰性(Negative)。つまり、移植の拒絶反応リスクがほとんどない。


 陽川は書類を見つめたまま動けなかった。

 水野晃樹は10歳である。そんな幼い子供が、病室で生死を彷徨っている。

 つい先程、両親に2、3日の命だと告げたばかりだ。絶望に歪んだ顔は網膜に焼き付いている。


 封筒が、足元に落ちる。書類の間に挟まっていたようだ。宛名面に「担当医先生御机下」と書いてある。手で破って開ける。

 中には、便箋が入っていた。差出人は畑村九曜。臓器提供者ドナーであった。

 綺麗な字ではなかった。しかし、丁寧に書かれた字であった。


「素晴らしい先生に渡っていると信じています。

 僕の命をよろしくお願いいたします。

 神居大学医学部一年生 畑村九曜」


 短い文面であった。医学部一年生。その文字に、陽川の目頭が熱くなる。そこから察せられることは余りある。

 彼に、恥ずかしい背中は見せられなかった。陽川は受話器を取る。


「陽川です。今すぐ手術オペ室の準備を」


 これが国内初のAwazon超お急ぎ便を使った心臓移植手術となった。

 同時刻、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸の移植手術も行われていたが、陽川がそれを知るのは、水野晃樹の笑顔を見てからであった。

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