missing 【HEART】
「やるせねえな」
高城は部屋を見回して言った。
青いカバーのシングルベッド、白い木目調の机、デスクトップPC、薄い板で組み立てられた本棚。よくある大学生の部屋といった感じだ。
本棚に目をやる。医学書ばかりが目についた。この部屋の人間がどんな人間か、雄弁に語っている気がした。
枕元に、茶色の染みが残されていた。血痕である。
被害者は畑村九曜。20歳男性で神居大学医学部の1年生だ。
第一発見者は友人だった。連絡が取れないことを不審に感じて部屋に来たところ、鍵が空いており、中に入ると額に矢が刺さった畑村がベッドで横たわっていたそうだ。
畑村は片手にスイッチを持っていた。機械を遠隔操作するための物らしい。それがボウガンに繋がっていた。そして、傍らにはAwazon超お急ぎ便の箱が転がっていた。現在それらは鑑識に回されている。
「タカさん、鑑識からです」
歳納が、タブレットを渡してきた。ファイルはもう開かれていた。機械の扱いは、すべて部下に押し付けている。
高城は画面をスワイプする。
矢の入射角、放たれた位置、指紋の付着等について詳細が書かれていた。想像した以上のことは書かれていなかった。やはり、自殺の線が濃そうだ。
「被害者を診た医師からも証言取れました」
高城はタブレットに目を通しながら、歳納の言葉に耳だけ傾ける。悪性の脳腫瘍が見つかって、半年持たないだろうと言われていたらしい。
「ウチのガキくらいの歳なのになあ」
ゆっくりと液晶を撫でる。画面が緩やかにスクロールする。不意に、高城の指が止まる。
高城のこめかみを、汗が滴り落ちる。表情が、みるみる歪んでいく。
「タカさんどうしたんですか?」
高城は、押し付けるようにタブレットを渡す。
画面を見た歳納の顔が、みるみる青くなる。
「どういうことだこれは……」
畑村九曜の遺体には心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸が無かった。
報告書にはそう書かれていた。




