入滅未遂(続・葬式未遂)
祖父が死んだ。
フグの毒でも死ななかった祖父が死んだ。
「スキューバダイビングに行くぞ!」とあんなに意気込んでいたのに、その当日の朝に眠るように死んでいた。
今度は、生き返ることはなかった。葬式は粛々と行われた。
和寿は墓の前にひとりで佇んでいた。ただ、墓石を見つめ続けていた。
墓石は何も語らない。そこにあるだけだ。
涙は流れなかった。拝む気にもなれなかった。
——骨は所詮骨だ。それは人間じゃない。
生前に祖父が言っていた。小学生だった和寿にはその言葉の意味がわからなかった。漠然と、死んだ人間は墓の中に封じ込められると思っていた。
前の葬式から、長い月日が流れていた。和寿も子供を持つような年齢になっていた。今なら、祖父の言葉の意味がわかる気がした。
Awazon超お急ぎ便。墓の前に現れた。また、あのときと同じように、ビールが2本入っていた。
一気に嚥下する。爽快感が喉を駆け抜ける。これが美味いと思えるようになったのは最近だ。初めて飲んだときから、随分と時間が経っていた。
もう一本を開ける。和寿は祖父の墓の上で缶を傾けた。そこで、腕を掴まれた。
「石相手に、勿体ないことすんなよ」
和寿は缶を奪われた。ビールは一気に飲み干された。
「やっぱりビールは黒ラベルだな」
祖父の頭脳を移植した最新人型歩行ロボット「G-75 Standard Metalic Silver 5125 Custom」は大声をあげて笑った。




