piece of "RICE" cake
空気が、ぴんと張り詰めた。
花織と敬人に緊張が走る。2人は目配せをする。
「いやあ、むーちゃんのついたお餅、楽しみだなあ」
「じいじ、たくさんたべてね!」
八郎と睦月は目を合わせて笑う。
雑煮から、湯気が立っていた。
八郎は箸で白くて柔らかい不定形の物体を掴む。餅だ。睦月が八郎と一緒についた餅だ。
餅は、子どもの握り拳ほどある。花織の額に汗が流れ落ちる。
「やっぱり正月といえば餅だからな」
八郎は快活に笑う。
敬人は八郎の箸から目を離せなかった。餅。あまりにも大きい。
「ぱぱー、たべないのー?」
「ほら、敬人君も食べて食べて」
敬人は、苦笑いを浮かべた。
八郎は、大きく口を開け、餅を迎え入れる。
敬人は口に運ばれるまでを注視していた。自分の餅どころではない。
腕が引っ張られる感触があった。花織が袖を引いていた。足元に、Awazon超お急ぎ便の箱があった。
敬人は慌てて開封する。「10秒後にあなたが欲しくなる商品をお送りします」という書面。そして掃除機。やはりだ。
「うっ!」
八郎が、呻く。敬人は掃除機を持って立ち上がる。背後の襖が開く。振り返る。
「あらあ、ちょうど掃除機が壊れたところなのよ」
梅子がそこに立っていた。なんとない様子で、敬人の持っていた掃除機をひょいと取り上げる。
「敬人君は本当に気が利くわねえ。アワゾン特急便? だったっけ? で用意してくれたんでしょ? 花織にもその気配り見習って欲しいんだけど」
梅子はそのまま戻って行った。
敬人と花織は、ふいに我に帰る。八郎はどうなっているのか。
「じいじ、おいしいね!」
「ねー! むーちゃん、もう1個食べるかい?」
「たべるー!」
既に、2人の椀は空になっていた。
八郎は、睦月の椀に餅と汁を注ぐ。
「じいじ、たくさんたべてね!」
「おう、任せろ!」
八郎は豪快に笑った。
「餅ならいくらでも楽勝じゃ!」




