表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/124

流され女と錨

「ちょっとゴム取ってくるわ」


 男は、全裸のまま寝室を出て行った。

 ああ、《《また》》だ、と恵理奈は思った。

 大した仲良くもない同期に誘われ、行きたくもない合コンに行き、さほど好みでもない男と流されるまま関係を持つ。

 思えば、高校も大学もそうだ。大した高望みもせず、親や教師の薦めるまま、行けそうなレベルの学校になんとなく行ってた。

 涙が、溢れてきた。恵理奈は自身がとても矮小な存在に思えてきた。今まで歩んできた道は、誰かが舗装した道だ。舗装された道を、舗装されいてるからという理由で歩いただけだ。そこに、自分の足跡は刻まれていない。


 恵理奈は未来を想像する。きっと、それなりの企業に勤めて、それなりの男と結婚して、それなりの生活を送るのだろう。

 不意に、大学を辞めた友人を思い出した。後進国に学校を作るのだと、太陽のように輝く眼で未来を見据えていた。

 彼女が絶対に幸せになれるとは限らない。それくらいは知っている。普通の生活だって悪くないかもしれない。ただ、自分の道を自分で決めていることが羨ましかった。


 視線の先に、Awazon超お急ぎ便の箱があった。そういやAwazonプライムに登録してたなと、恵理奈は思い出す。それも、友人に勧められて仕方なく登録した。

 持ち上げようとするが、持ち上がらない。重い。恵理奈は情けなくなった。自分が欲しいと思うものすら、持ち上げられないほど自分は非力なのだ。そう思うと、急に哀しみが怒りに変わっていく。

 両腕に力を籠める。口から、くぐもった咆哮が漏れる。両脚にも力を入れる。荷物が、上がった。


「あ」


 声が出た。荷物が手からすっぽ抜けて飛んで行った。


「ごめん恵理奈ちゃん、ゴム切らしてたからナマでぶべっ!?」


 緩やかな放物線を描いた荷物は、男の顔に直撃した。

 恵理奈の頭に、晴れ間が広がった。偶発的ではあるが、流れを自分自身で変えたのだ。

 恵理奈は乱れた服を整えて、部屋を出た。

 外は、にわかに白み始めていた。恵理奈は空に向かって両腕を伸ばした。これは、自分自身の夜明けだ。

 まずは、ジムに行くことからでも始めてみようか。英会話教室でも良いかもしれない。

 恵理奈は、やや肌寒い表通りを、1人で歩いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ