(Not)shoot me!〜嫁と姑の10秒戦争〜
佳代子の顔が笑みで歪んだ。
嫁の困る顔を思い浮かべると、喜悦が湧き上がってくる。
嫁は、何もかも憎たらしいくらい完璧な女だ。今まで、様々な難題を押しつけてやったが、あっさりと解決されてしまった。息子が心底惚れているのも気に食わない。
しかし、今回は簡単には解決されないだろうと佳代子は踏んだ。石垣の掃除を押しつけたのだ。佳代子の母の代からある石垣は、ウン10年分の汚れが、根深くこびりついている。ちょっとやそっと掃除したくらいでは、取れやしない。
月子の顔に笑みが咲いた。
姑が喜ぶ顔を思い浮かべると、快い気持ちになる。
姑はとても良い人だ。月子のことを家族と認めてくれて、色んな仕事を任せてくれる。仁志のような素敵な男性を育てただけのことはあると月子は思う。
今回掃除を任せられた石垣は、お世辞にも綺麗とは言えない。しかし、Awazon超お急ぎ便で高圧洗浄機が届いた。これなら石垣はピッカピカになる。姑の喜ぶ顔が目に浮かぶ。月子の頰はまた一段と緩んだ。
佳代子は石垣の裏に潜んだ。この石垣には隠し扉がある。それを佳代子だけが知っていた。掃除に手こずっているところに「なにチンタラやってんだい!」と叫びながら出ていって驚かしてやろうと、佳代子は画策していた。
月子は石垣に高圧洗浄機を向けたまま、心の中でカウントダウンしていた。Awazon超お急ぎ便で届く商品は「10秒後に必要となる商品」なので、10秒数えなくちゃいけないと、月子は思っている。
佳代子は隠し扉に手をかけた。息を細く溜めて、心の中で10数える。
月子は高圧洗浄機のスイッチに手をかけた。息を細く溜めて、心の中で10数える。
「発射!」
月子は水を噴射した。佳代子は隠し扉から飛び出した。
「ぎにゃあああああ!」
「お義母さま!?」
家庭用シェアNo. 1の高出力噴射が、佳代子を母屋まで吹き飛ばした。




