GO TO "J"
黒塗りの車が、猛スピードで大通りを逆走していた。
クラクションと急ブレーキの音が暗闇を切り裂く。午前2時の札幌である。黒塗りの車は、蛇行しながらすり抜けていく。
「こんなに上手く行くとはな!」
高尾は声を上げて笑った。
目出し帽を放り投げ、背もたれに身を預ける。
パトカーが3台、後ろから追ってきていた。
羊沢が助手席から銃弾を乱射する。先頭のパトカーがスピンし、後ろの2台を巻き込んだ。
高尾、羊沢、そして運転の壺内は爆笑した。
天が味方している。そうとしか思えないくらい、何もかもが順調だった。
トランクは、銀行から奪った金塊・宝石・現金で詰まっていた。港には、運び屋が待っている。そこまでたどり着いたら、後はジャマイカに向かうだけだ。人生の長い長いハッピーエンディングがそこで待っている。
サイレンが鳴り響く。パトカーは、前方からも後方からも来た。
高尾の手元にAwazon超お急ぎ便の箱が出現する。羊沢が銃を構える。引鉄から空音が鳴る。
「おい高尾、弾が無えぞ」
「慌てんなよ、ほら」
高尾は銃を羊沢に投げた。Awazon超お急ぎ便の箱の中にあった。
「入ってて良かった、Awazonプライム」
羊沢は、鼻歌まじりに引鉄を引いた。
ヒマワリが、銃口から咲いていた。
「は?」
「ん?」
「え?」
何が起きたか理解が出来なかった。別の角度からも見るが、やはりヒマワリだ。
パトカーが、道を塞ぐように止まる。羊沢は銃を窓から投げ捨てると、続いて届いたAwazon超お急ぎ便の箱から、閃光手榴弾を取り出す。
光。車内を包んだ。3人の視界が白く塗り潰される。高尾は咆哮した。閃光手榴弾は、ピンを抜く前に破裂していた。
車はコントロールを失う。そのまま、街路樹にぶつかって止まった。
3人は、ほうほうのていで車の外に出る。既に、警察が取り囲んでいた。
「……っの野郎! ぶっ殺してやる!」
壺内と羊沢は、黒い箱から機関銃を取り出した。警察の間に緊張が走る。
銃身が鈍く輝く。こんなこともあろうかと、あらかじめ用意しておいたものだ。
機関銃を直接仕入れるのはリスクが高すぎる。だから、部品を仕入れて一から組み上げた。組み上げるのは予想以上に簡単だった。組み立てに行き詰まったとき、決まってAwazon超お急ぎ便から部品が届いた。
高尾の背中に冷たいものが走る。
「おい待て! 撃つな!」
高尾の言葉が届くより早く、引鉄は引かれていた。銃身が破裂する。3人は、トリモチのようなものに包まれ、動けなくなっていた。
「……ど、どうなってやがる」
警察が、盾を前に向かってくる。
3人は、そのまま逮捕された。
Awazon超お急ぎ便は、稀に不良品であったり、ユーザーが望んでいないものが配送されたりする。
しかしながら誤配送によるクレームは、サービス開始から現在に至るまで、一切発生していない。




