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魔法少女まじかるキララの切り札

「おひさまのパワーでスペシャルげんき! まじかるキララ!」

 トゥインクル・ステッキをふりかざして、南雲杏奈は、まじかるキララに変身した。

 ピンクの可愛らしいフリルドレスを着たまじかるキララの目のまえには、巨大なモンスターが立ちはだかっていた。

「キシャアアアアア!!」

 モンスターはびっくりするような雄叫びをあげる。このモンスターは「イーヴルドリーム」といって、人々から漏れ出した悪意が固まってできた存在だ。

 目のまえの「ドラゴンタイプ」のイーヴルドリームは、人間なんかすべて食べつくしてやると言わんばかりに口を大きく開けた。

 まじかるキララもステッキを人間の力を見せつけるような掲げ方をした。

「わたしは決してあきらめない!」

 まじかるキララはその場でくるくると回った。とっておきの必殺技をくり出す。

「まじかる・トゥインクル・レインボー!」

 きらきら光る7色のビームが、イーヴルドリームをチリすら残さないと言わんばかりの勢いで飛んでいった。ドラゴンタイプはそれをあっさりと跳ね返す。つま先に、なにかが当たった。Awazon超お急ぎ便の箱が、そこにあった。

 杏奈は舌打をした。落ちている箱を、足で踏み潰すようにこじ開ける。自動小銃《AK》が顔を覗かせた。足で、跳ね上げる。龍の爪。真っ直ぐに杏奈に伸びてきた。からだを捻る。切っ先が頰を掠めていた。血が、一筋流れる。

 龍が、飛びかかってくる。杏奈は、冷静に照準を向け、引鉄を引く。龍がのけ反る。鎧のような皮膚に、亀裂が入っていた。

 続けざま、弾丸を放つ。攻撃を緩めることはなかった。龍は踊るように跳ね続けた。

 弾が、切れた。最後の薬莢が、地面に転がる。

 龍は、虚な眼を空に向け、その場に倒れた。地面がどうと揺れた。二度と、動くことはなかった。

 杏奈は、煙草に火をつけ、龍の死骸を見た。

 平安時代から、「あしきゆめ」として、その存在が確認されていたイーヴルドリーム。彼らの強さは、人間社会の闇の深さと等号で結ばれる。かつては陰陽師だとか僧侶と呼ばれる者が、討伐に当たっていた。しかしながら、時代が進むに連れて人々の闇は複雑に、そして深くなり、それに比例して彼らも強大で凶悪になっていた。もはや、魔法こどもだましで倒せるレベルでなかった。

 無線が入る。今度は北区で出現したらしい。杏奈は煙草を靴底で消した。

 大型二輪ハーレーに跨る。アクセルを回して、杏奈は走り去っていった。

 深くなる人間社会の闇。強くなる怪物たち。もう、魔法ゆめは不要なのかもしれない。

 フリルドレスが風にたなびく。硝煙が、ほのかに薫った。

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