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BLainchild

 深川壮一がホテルのドアノブに手をかけたのと、Awazon超お急ぎ便の箱がつまさきに当たったタイミングは、ほぼ同時であった。

 箱は、かなり大きい。両腕で抱えないと持ちあげられないだろう。


「なぁにぃ、それぇ」


 瑠美が、間延びした声で聞いてくる。

 壮一の心臓は、早鐘を打っていた。


「まさか……」


 瑠美との不倫がバレたのか。

 Awazon超お急ぎ便の出現タイミングからして、そうとしか思えなかった。


 壮一の背中に汗がじわりと滲む。細心の注意を払って関係を続けていた。密会のために、毎回2時間かけて札幌市から雨竜町まで来ていたのだ。

 外に出たら、きっと週刊誌の記者がカメラを構えているのだろう。紙面に踊る見出しを想像すると、怖気が走った。


 壮一は、清廉潔白な俳優として名を馳せていた。その長年かけて作り上げたイメージを失うことは、命を失うことより恐ろしいことだった。


 とりあえず、中身を確認することにした。

 10秒後の深川壮一は、いったい何を求めたのか。手を差し込んで、乱暴に箱を開ける。


「……どういうことだ?」


 開封すると、壮一は首を捻った。

 中に入っていたのは、化粧落とし、ジーンズ、Tシャツ、靴、キャップ、そして短髪のカツラだった。衣服はすべて男物である。

 これで変装しろということだろうか。しかし、そうではなさそうだ。どれもこれも、壮一が着るには小さすぎるサイズだ。カツラに至っては、壮一の髪型と大差ない。

 しばし考える。壮一の頭に閃きが走った。


「そうか、そういうことか! 瑠美にゃん! ちょっとこっちに来て!」

「ええ~、なになにぃ」


 壮一は手早く瑠美の化粧を落として、男物の服に着替えさせた。カツラをつけ、キャップをかぶせる。サイズが大きめの服なので、瑠美の豊満な体のラインが隠れている。どこからどう見ても男にしか見えないはずだ。


「これならバレないはずだ」

「壮ちゃん頭いい~」

「だろぉ?」


 2人は、熱い口づけを交わして、それからホテルを出た。

 車に乗ると、かすかにストロボの光が見えた気がした。

 壮一は、少しも臆することなくホテルを後にした。男と一緒にホテルを出たところで、何ら話題にならない。

 壮一は口元を緩めた。自分の判断力の良さが恐ろしかった。


 数日後、週刊誌の記事が世間を大いに騒がせた。

 壮一は、記事の見出しを見て驚愕する。


『暴かれた”禁断の"恋! あの人気俳優の不倫相手は男だった!?』

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