情熱ヒーロー!クリムゾンブレイド参上!
孝之は酷く狼狽した。Awazon超お急ぎ便の箱に入っていたのは日本刀だった。
「これはあなたが10秒後に必要となる商品です」と記された書面が入っているが、日本刀が必要となる状況とはどんな状況だろうか。孝之の背筋が寒くなる。どう考えたって好ましい状況ではない。
孝之は全力で走った。1秒でも早く、この場から離れたかった。
十字路に差し掛かる。ここを左に曲がれば自宅はすぐだ。
「うわっ!?」
孝之は戦慄した。巨大な影が立ちはだかった。
蜘蛛だ。体長は、孝之の背丈を優に超えていた。無機質な青い3つの眼で、此方を視ていた。8本の脚で、じりじりとにじり寄ってくる。
どうやら、獲物と認識されたそうだ。逃げ出したい。そう願ったが、足が動かなかった。地面に、張り付けられたようだった。
もう、目と鼻の先の距離まで蜘蛛は近づいていた。食われる。孝之が覚悟した瞬間、ふいに怪物は視線を逸らした。その先を見る。へたり込んで動けなくなった子供がいた。
怪物は、狙いをそちらに定めた。孝之は咄嗟に刀の柄に手をかける。抜けない。刀は素人が瞬時に抜けるように作られていない。今はじめて知った。
ならばせめてと、孝之は子どもの前に立ちはだかる。
瞬間、蜘蛛が爆散した。全身赤タイツの男が、拳を突き出して立っていた。
「情熱ヒーロー! クリムゾンブレイド参上!」
「結局なんなんだこの日本刀は……」
帯刀したまま、孝之は歩いた。隠せるようなものを持っていなかったので、開き直ることにした。そのうち、すれ違う人間の視線も気にならなくなった。
「ああ、そこの若い人、ちょっとこれを切ってくれないですか」
老婆が、話しかけてきた。手には蜜柑の入った袋があった。どうやら、縛り口が固すぎて、開かないらしい。
孝之は、刀を少しだけ抜いて、紐に当てた。紐は、あまりにも容易く切れた。
日本刀って良く切れるんだなと、孝之は思った。




