傘
水滴が、Awazon超お急ぎ便の箱の上で跳ねた。
隼司は上を見る。雨が、顔に落ちてきた。
雨足はすぐに強くなる。隼司は箱を小脇に抱えながら、駆け足で校内に戻る。雨音が、背後から追いかけてきていた。
「なんだよ、この天気は」
隼司は毒づく。風景があっという間に雨で塗り潰された。部活の最中は、腹が立つほどに青空が広がっていた。
Awazon超お急ぎ便の箱には1本の傘が入っていた。サイズが少し小さめの、暗い赤色の傘だ。驚きは無かったが、助かったと思った。駅まではどんなに急いだとしても5分はかかる。
傘を差そうとすると、玄関先に人影を見つけた。茜だ。外を見て、小さく息を吐いていた。隼司は横に並ぶ。
「何してんだよ」
「何って勉強に決まってんでしょ。テスト前だっつーの」
「まだ2週間もあるのに? 真面目ですねえ」
「アンタみたいなサッカー馬鹿に比べたらな」
そこで、会話が途切れた。雨は、少しも弱まる気配が無い。
「Awazonも気が利かねえな」
「ん? 何か言った?」
「これ、やるよ」
隼司は、押し付けるように傘を渡した。茜は目を丸くして隼司を見た。
隼司はウインドブレーカーを羽織り、フードを深くかぶった。
「隼司!」
茜が、走りかけた隼司の袖を掴んだ。
「一緒に行こうよ、どうせ同じ駅から乗るんだし」
ふたりは、同じ傘の下で歩いた。
会話は、無かった。ただ、淡々と歩いた。雨は変わらず強く振り続けている。
隼司は雨が強くて良かったと思った。心臓の音は、あまりにも煩かった。
「ねえ」
茜が口を開いた。
「来月、試合なんだっけ?」
「おう」
「……観に行ってもいい?」
「……おう」
駅までの道のりはまだ続いていた。
ふたりは、身を寄せ合って歩いた。Awazon超お急ぎ便で届いた傘は小さく、そうしないと濡れてしまうからだ。
「……Awazonも気が利くじゃん」
茜は呟いた。雨音にかき消されて、隼司の耳には入らなかった。
駅に着くと、茜の手元に箱が出現した。Awazon超お急ぎ便。そう記載されていた。
茜は、中に入っていたタオルで、隼司の服を拭いた。左の肩から袖にかけてが、びっしょりと濡れていた。
「……ありがと」
隼司は、顔を背けながら言った。
茜も、顔を赤らめていた。
入ってて良かった、Awazonプライム。




