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ミエナイチカラ

 札幌市中央区。最寄り駅まで徒歩10分。3LDK。風呂トイレ別。家賃3万円。敷金・礼金なし。

 上林かみばやしの頭に、期待より先に疑念が湧いてきた。いくらなんでも安すぎる。


「良い物件ですよね! この辺人気なんですぐに決めないと取られちゃうかもしれませんよ?」


 貼り付いたような笑顔であった。上林は、この梅田という営業員がどうしても好きになれなかった。仕事ぶりと口調は丁寧だが、拭いきれない嘘臭さがあった。


 上林は部屋を見回す。綺麗、というより、潔癖という言葉が思い浮かんだ。まるで何かを隠しているかのような。


「ここ築何年でしたっけ?」

「1年ですね。なのでほぼ新築で綺麗ですね。契約しましょう!」

「はあ」


 上林は曖昧な笑みを浮かべた。

 新築で家賃3万円。疑念はさらに深まる。

 水回りや火回りも確認する。どこにも、安すぎる家賃になる根拠は見当たらなかった。

 上林は腕を組む。事前に他の住人について調べたが、問題はなかった。普通の時間帯に務める普通の会社員しかいないらしい。騒音による苦情も無いようだ。

 事故物件の可能性も低かった。築1年である。北海道新聞のニュースサイトを検索しても何も引っかからなかった。


「上林様、契約しましょう!」


 梅田が恭しい態度で圧力をかけてくる。

 自分が考えすぎなだけなのではという気がしてくる。

 ふと、下を見ると、Awazon超お急ぎ便の箱があった。

 開封する。中にはプラスチックのケースが入っていた。中に、小さな粒がたくさん入っている。


「BB弾……?」


 サバイバルゲームの銃に使う、直径6mmの小さな球である。

 上林は首をひねる。その手の趣味はない。


「なんのために……ってうわっ!」


 BB弾が、宙空にばら撒かれた。上林の手が滑った拍子に、蓋が開いていた。

 BB弾は部屋のあちこちに着地する。

 あちこちに散らばった無数のBB弾は、一斉に部屋の同じ方向に向かって転がりだす。

 南東の角。BB弾が集まっていた。


 上林と梅田は目を見合わせた。

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