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わがままを封印した規格外少年の、時空を巡る送り人伝 —Departures—  作者: megane-san
第4章 ダリオン国

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57. リキータの手紙

聖エリス国の学院で同じ土魔法クラスだったリキータから手紙を受け取った俺は、すぐにじいちゃんの執務室に走った。


ドアをノックして執務室に入ると、ちょうどルーピンがじいちゃんと話をしているところだった。


「ルーピン!」


「ルキリア様、ご無沙汰しておりました」


ルーピンは、俺たちが聖エリス国から戻る時に、数人の従業員と共に現地に残っていたのだった。


「ルーピンが報告に来てるってことは、向こうに動きがあったの?」


「はい、筆頭聖女が洗脳魔法を施したルキリア様のご友人のリキータ様を、近々こちらへ訪問させる計画を立てております」


「洗脳……?あっ、今、ちょうどリキータさんから手紙を受け取ったんだ」


「手紙?タイミングが良すぎるな……」


じいちゃんは手紙を読むと、俺に判断をゆだねるように、尋ねた。


「ルキリアはどうしたい?」


(彼らがここに来たら、モリスさんや、この領地の人たちに危険が及ぶかも知れないけど……。リキータさんも心配だ……)


「おじいさま、彼らの訪問を受け入れてもいいでしょうか?洗脳された俺の友達も心配です」


じいちゃんは、俺の答えは正解だというような表情でうなずいた。


「危険は伴うが……訪問を受け入れよう。その子の洗脳の解術については博士と相談しておく」


俺は、執務室を出ると、このことをモーリーに伝えるためにすぐに地下都市に向かった。




「ルキリア君、お久しぶりですね」


「族長!お久しぶりです!久々の地下都市生活はどうですか?」


「地下の暮らしも良いですが、また外の世界を回りたいですね……楽しかったですから……。それに、モーリーの最後の記録玉も、見つけに行かなくてはなりませんからね……」


(あっ……、モーリーの記録玉、あと一つが見つかっていないんだった……)


族長補佐が、後ろからひょこっと顔を出した。


「私もまた旅に出たいです~!地下都市生活は退屈です~」


……と言った族長補佐を、「仕事が終わってからにしてください」と言って、モーリーのお父さんが引きずって行った……。


 


談話室に入ると、俺たちは、モーリーのお母さん手作りの『ミネラルたっぷりみたらし団子』を食べながら、手紙について話し合った。


「このタイミングで、リキータさんからの手紙って……かなり怪しいな」


「うん、ルーピンから報告があったんだけど、リキータさんが筆頭聖女に洗脳魔法を掛けられたらしい……」


「……ってことは……、モリスさんか、ルキリア狙いで来るんだろうけど、辺境伯は受け入れるって?」


「うん、リキータさんの洗脳も心配だし、解術については、博士に相談するって言ってた」


「そうか……。教皇たちがここにいることは、リキータさんたちには秘密にしないとな……」


「あっ、それなんだけど……」



 



次の日、俺はモーリーを連れて辺境伯城からすぐ近くの裏山に来ていた。


「ここか?」


どう見ても『普通の木』の幹部分をタッチすると、認証モニターが空中に現れた。


「この隠れ家の入口は人体認証だから、先にモーリーを登録するね」


そして、認証完了すると、何もない空間にドアが現れた。


「なんだよこれ!面白すぎる!」


中に入ると、長方形の二階建ての建物が一軒建っていた。


「外からは、普通の森にしか見えないのに!結界の中に秘密の隠れ家かよ!」


「うん、この一か月、暇だったからね。土魔法の訓練も兼ねてこの家を作ってみた。内装も設備も前世の住宅を真似てみた」


屋根には太陽光発電装置を取り付け、家の中には魔力を使わず『電気』を使った電化製品を設置した。


冷暖房、電子レンジ、湯沸かしポット、冷蔵庫など、これまで作りためた家電をすべて並べた。


家の中を見てまわり、冷蔵庫から『シュワシュワ』サイダーを取り出して試飲したモーリーは、目を丸くした後、『ここ、最高だな!』と声を上げた。


「リキータさんたちが来たら、教皇たちはここに隠れるってことだな」

 

モーリーは、その後、次々に試作品を食べ、帰る時には、気に入ったカップラーメンをお土産に持って帰った。



その日の午後、俺はじいちゃんとばあちゃんにも、この隠れ家をお披露目した。


「裏山に秘密基地を作ると言っておったが……、これは凄いのぉ〜!」


「これがルキリアの前の世界の建物か……。太陽光でこの道具は動くのか?」


「うん、その装置で太陽光から電力っていう、この世界には存在しない力を作り出してるんだ。この建物は二階建てだけど、前の世界は、もっと高い50階以上の高層の建物にたくさんの人が住んでたんだよ」


ばあちゃんは、あちこちボタンを押しながら、俺に振り返って、少し懐かしそうな顔をした。


「ルキリアの生きていた時代は、我らの前世のずっと先の時代だったんじゃな……」


(じいちゃん、ばあちゃん……、2人の名前は、歴史上の有名人として、俺が居た時代にも残ってたんだよ……)


俺は、2人が炭酸サイダーを飲んで喜んでいる姿に、とてもほっこりした気持ちになりながら、しばらく2人を見つめていた。




それから2週間後、リキータ、ダニエル、サラは、転移門まで迎えに行ったルーピンとともにフルーラ辺境伯城へやって来た。


「「「久しぶり〜!」」」


「みんな相変わらず元気そうだな!」


モーリーは、大きく手を振りながら駆け寄ると、ダニエルは涙を浮かべながら俺たち二人を見つめ、がっしりと肩を抱いた。

 

「2人とも、急に学院を辞めちゃったから、心配したんだぜ……!」


(ダニエルは、聖エリス国で初めて出来た友達だ……短い間だったけど、土魔法クラスのみんなで、毎日のように魔道具開発談義で盛り上がって楽しかった……)


俺たちが門前でワイワイ話していると、じいちゃんとばあちゃんがやって来た。


「みんなよう来たのぉ〜。1週間、楽しんでいきなさい」


(ばあちゃん、さりげなくみんなと握手して、魔力チェックしてる……)


みんなの挨拶が終わると、チャールズの案内で食堂に向かった。


「うわぁ〜!美味しそう!」


サラとダニエルがテーブルに並べられた料理を見て目をキラキラさせていたが、その隣でリキータは、顔色を悪くしながら、首に掛けていたネックレスを握っていた。


(……あのネックレス、たぶん盗聴の魔道具だ……)


「リキータさん、大丈夫?顔色悪いよ」


「転移酔いしたのかな……?頭が痛くて……」


ばあちゃんが、リキータを椅子に座らせると、額に手を当てて診察を始めた……そして誰にも聞こえないぐらい小さくつぶやいた。


「魔力が干渉し合っておるな……」


俺とモーリーは、ばあちゃんの小さな声を拾うと、目でうなずき合った。


(間違いなく、リキータさんは何か魔法を掛けられてる……)


魔道具に気がついたばあちゃんは、魔力の干渉だけを調整すると、リキータの顔色は良くなり笑顔が戻ってきた。


「転移酔いしたんじゃろう。食事の後は、少し横になって休みなさい」


「はい、ありがとうございます……」



その日はリキータさんは部屋で休むことになり、俺たちは、ダニエルとサラさんを連れて城下の町を案内することになった。


「なぁ、ダニエル、何で急にフルーラ辺境伯領に魔道具の見学に来ることになったんだ?」


ダニエルは、急に立ち止まると、「あれ?」と首を捻った。同時に、サラも「んっ?」と、眉間にシワを寄せた。


「なんでだろう……?」

「なんでだったかしら……?」


サラは道沿いにあったベンチに腰掛けて、2週間前の会話を思い出そうとしていたが、2人ともまったく思い出せないようだった。


(記憶操作されてるのか……)


モーリーは、俺に目配せしながらうなずいた。


「せっかく来たんだから、フルーラ辺境伯領の美味しいものたくさん食べて行ってよ〜」


……と、2人を連れて『とろけるパンケーキ専門店』に入っていった。


(モーリー、さっき昼食食べたばかりなんだけど……)



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