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わがままを封印した規格外少年の、時空を巡る送り人伝 —Departures—  作者: megane-san
第4章 ダリオン国

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51. ドワーフ村

「「「初代魔王様、16代目魔王様、お帰りなさいませ」」」


ブラックウルフ族長、ドワーフ族長、エルフ族長は、畏敬の念を込めて2人を見上げた。


じいちゃんは、首を傾げながら、「儂が、初代魔王……?誰かと間違っているのではないのか?」と、驚くこともなく、淡々と3人に言った。


3人は、ブンブンと首を振ると、エルフ族長が「失礼いたします」と言って、じいちゃんの目を覗き込んだ。


「間違いございません……。目の中に、古い魔族語の数字で、何代目の魔王かが刻まれております」


博士は、あごに手を当てて、前世の記憶を探りながら小さくつぶやいた。


「そんなものがあったとは……。私は引き継ぎもなく魔王となったからな……」


博士の声を拾ったモーリーは、じっと何かを考えるように博士を見つめていた。



じいちゃんは、腕を組みながら、族長たちに質問を続けた。


「儂の目を覗き込む前に、なぜ儂らが魔王だとわかったんだ?」


エルフ族長が、一歩前に出ると、じいちゃんに答えた。


「これは、それぞれの族長に、代々伝えられることです。魔国建国の際、魔王様と魔族たちは、『魂の契約』を結びました。そしてその契約は代々の子孫にまで受け継がれます。私たちは、その契約がある限り、姿が変わっても魔王様の魂を間違えることはありません」


(魂で判別してるのか……)


「魂の契約とは?」


「魔族は、魔王様に忠誠を誓い、そして魔王様はこの森と魔族を守ることを誓いました」


「なるほど……」


ドワーフ族長が、少し遠慮がちに横から顔を出した。


「あのぉ~、こんなところで立ち話も何ですから……、ドワーフ村にいらっしゃいませんか?ここからすぐのところにありますので……」


「ドワーフ村!?」


俺とモーリーは、すぐに反応した。


じいちゃんは、俺たちを見て呆れたように笑いながら、博士に目で了解を得ると、族長たちに顔を向けた。


「どうやら、孫たちが興味があるようだ。族長たち、お邪魔してもいいだろうか?」


「「「光栄でございます」」」



広場から10分ほど歩くと、小川が流れるそばに結界が張られている場所があった。


「こちらでございます」


ドワーフ族長がドレープのような結界を開いてめくると、俺たちを中へうながした。


(こんな形の結界があるんだね……)


俺たちは族長たちに続いて中に入り木々の中を抜けると、驚くような景色が広がっていた。


「ここがドワーフ村でございます」


俺たちは、辺りを見回して目を見張った。博士は驚いたように目を見開き、じいちゃんは口を開けたまま村の景色を眺めていた。


じいちゃんが、「祭りの櫓……?」

博士も、「提灯……?」

モーリーは、「見たことない真四角な建物だ……」

……と、みんなが呆けた顔をしている横で、俺は目を輝かせながら叫んだ。

 

「モーリー!ここ、俺が前世で住んでた日本を真似て作られてる!」


前世の小学校のグラウンドぐらいの広場を中心にして、まわりには、1階に店舗が入っている5階建の建物が3棟、そしてその隣には役所と病院だと思われる3階建の建物が2つ並んでいた。


そしてその広場の真ん中には、日本のお祭りのような櫓が建てられ、そしてそのまわりに出店の準備をしているドワーフたちがいた。


「今日は、偶然にも、魔王様に感謝を捧げる、年に一度の祭りの日なんです」


ドワーフ族長は、少し涙ぐみながら俺たちに微笑んだ。


(ドワーフ族長、嬉しそうだ……)


「いろんな出店がある!見てきていいですか!」


俺は興奮気味にモーリーの手を引いて、準備中の屋台を見てまわった。


出店を見てから戻ると、エルフ族長は、じいちゃんと博士に声をかけた。


「17代目様も、前世の記憶がおありなんですね……」


(えっ、俺、17代目って呼ばれた……!? あとで鏡で目を確認しなきゃ……)


モーリーは、「んっ?」と、首を捻ってからエルフ族長に質問した。


「エルフ族長、目に数字が刻まれるのは、いつなんでしょうか?」


「目に数字が刻まれるのは、魔王様の力が覚醒した時です。兄弟がいらっしゃっても、力を覚醒するのは、そのうちの1人だけだと聞いています」


(……ということは、博士の双子の片割れであるシエラさんが覚醒したのは、デーモン族の力だけ……)



部下に呼ばれて櫓の方にいたドワーフ族長が、戻ってくると、博士は族長に質問した。

 

「ドワーフ族長、なぜドワーフ村はこのようになっているんでしょうか?私たちの前世の世界を模したような……」


「あら?16代目様は、ここにいらしたことはなかったですか?この村は、前世を懐かしむ魔王様のために、その時々の魔王様が話してくださる前世の物をこの村で作って、懐かしんでいただいていたのです」


「魔王となる者は前世の記憶を持つとは聞いていたが……。私はここに来た記憶はないな……。小さい頃は、ヴァンパイア族長が俺のそばにいた記憶しかない。俺の妻もヴァンパイア族だったしな……」


「そうでしたか……。それなら是非とも、今日これから行われる『お祭り』を楽しんでいってください」



俺たちは、ドワーフ族長の家で、昼食に『山盛り魔獣肉うどん』をご馳走になった後、族長夫人が準備してくれた浴衣に着替えた。


「おぉ〜、モーリー、似合うよ!」

「そうか?涼しくていいな、これ!」


じいちゃんと博士も、浴衣に着替えていた。


「おじいさまも博士も、まったく違和感ないです!でも、よくおじいさまのサイズの浴衣がありましたね?」


ドワーフ族長の横にいた族長夫人が、俺の疑問に答えてくれた。


「この浴衣は、魔王様のために仕立てたものなんです。いつ魔王様がいらっしゃってもいいように、毎年必ず準備するんですよ」


(来るかどうかもわからない魔王のために……。魔王は、魔族たちに愛される存在だったんだな……)


「魔王は、みんなから愛されてたんですね……」




少し日が陰ってくると、櫓から笛の音が聞こえてきた。そして太鼓と笛の音に合わせて、村一番の歌い手が、盆踊りの歌を歌い、浴衣を着たエルフ族とブラックウルフ族も櫓のまわりに輪を作り、みんなで盆踊りを踊った。


「モーリー、踊り上手だね!」

「お祭り、楽しいな!」


じいちゃんと博士も、エルフ族の美女たちに手を引かれて盆踊りの輪に入った。


そして祭りの締めくくりに、全員で記念撮影をした。


「族長、今日はとっても楽しかったです!」


モーリーも名残惜しそうに、櫓の方を振り返った。

 

「族長、また来ていいですか!次来る時に、今日撮った写真を持ってきます!」


じいちゃんも博士も、とても満足そうな笑顔で手を振ると、結界を出た場所から船に転移した。


 


 

帰りが遅くなった俺たちを、ばあちゃんとレオさんが食堂で待っていた。


「「ただいまぁ〜!」」


ばあちゃんは、俺たちの声に振り向くと、「無事じゃったか!」と駆け寄ってきた。


「少し遅くなると、魔信便を送ってあっただろう」


ばあちゃんは、俺たちの浴衣姿を見て、「なんで浴衣なんじゃ?」と首を捻った。


「今日はね、魔の森にあるドワーフ村のお祭りに参加してきたんだ。その時に、浴衣を着せてもらっ……」


俺が最後まで言い終わる前に、ばあちゃんは、じいちゃんをじっと見てから、もの凄い怒りの魔力を溢れさせた。


「ハン……。浮気してきたのかのぉ……。かなり女臭いぞえ」


(あっ……、エルフ族の美女たちが、じいちゃんと博士にベッタリくっついてたから……)


「浮気など……しておらん……」


じいちゃんは、ばあちゃんから目をそらして、助けを求めるような目で俺を見たが……。


俺とモーリーは、苦笑いでじいちゃんに答えるだけだった。




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