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わがままを封印した規格外少年の、時空を巡る送り人伝 —Departures—  作者: megane-san
第4章 ダリオン国

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46.ダリオン国

フルーラ辺境伯領に帰る日、俺たちは聖エリス国の国境にある転移門で足留めされていた。


「えぇ〜!なんで転移門使えないんですか!」


「聖エリス国の転移門使用許可名簿に、君たちの名前はないからな。使用は出来ない」


モーリーは、ガーラ国王から発行された許可証を門番たちに見せたが、彼らは俺たちが転移門を使うのを頑固に許可しなかった。


(どういうこと……?)


 

門番に抗議していると、大きな黒い人影が俺たちの後ろに現れた。

 

「儂の孫たちの許可証に何か不備があるのか?」


「おじいさま!」

「辺境伯!」


門番たちは、突然現れた隣国の有力貴族に明らかに動揺していたが、すぐに転移門の管理長が前に出てきた。


「大変申し訳ありません。手違いがあったようです」


管理長は、深く頭を下げると、門番たちに目配せした。


門番たちは、それに気がつくと、転移門を起動させ、俺たちをチラチラと見ながらも何も言わずに門を通した。


ガーラ国側の転移門に到着した俺たちは、すぐに転移の魔道具で王都のタウンハウスに移動した。


「おじいさま、ありがとうございました」

 

「辺境伯、ありがとうございます。でも、なんで俺たちが足留めされてるってわかったんですか?」


じいちゃんは、タウンハウスの談話室に防音結界を張った。


「聖エリス国にいる者たちから、報告が入った。筆頭教皇補佐が、お前たちを足留めするように指示したとな」


「筆頭教皇補佐……」


「それと……、シャーロット博士からも話を聞いた」


「博士から?」

 

「あぁ……。辺境伯城に来られてな、すべて聞いた。お前たちを心配してのことだ」


(博士……)


「ダリオン国には、オウルとレオが同行する」


「えっ、レオさんも?」


「商船を護衛という名目で、うちの海兵団を同行させることにした」


(大がかりなことになってしまってる……)


モーリーが、じいちゃんに頭を下げた。


「辺境伯、ありがとうございます……」


じいちゃんは、ふふっと笑うと、モーリーの肩に手を置いた。


「モーリー、地底族は儂らの家族同然だ。それに、儂は地底族に命を救われたからな。こんなもんでは、命を救ってもらった礼には、まだまだ足りん」



 


そして俺たちはフルーラ辺境伯城に転移して、3日後の出航まで、準備を進めながら過ごすことにした。


「お、おばあさま……。腕を離してくれないと……、風呂に入りたいので……」


ばあちゃんは、俺が城に帰ると、ず〜っと腕にしがみついたままでいた……。


「セイ、いい加減にせんか!」


ばあちゃんは、口を尖らせてじいちゃんをにらみ付けた。


「我もダリオン国に行きたい……」


じいちゃんは、大きくため息をつくと「今回は駄目だ」と首を振った。


「おばあさま、今回は調べたいことがあるから、少人数の方が動きやすいんだ。10日ぐらいで帰ってくるから、少しだけ待ってて……。あっ、おばあさま、俺、『あんみつ』食べたいな!」


ばあちゃんは、拗ねてうつむいていたが、『あんみつ!』と顔を上げると「待っておれ!すぐに作るぞぇー!」と調理場へ走っていった。


じいちゃんは、ふう〜っと息を吐いて、背中を椅子にもたれた。


「ルキリア、ダリオン国には何を見つけに行くつもりだ?」


「おじいさま、これを見てください」


俺は、クリスさんが念写紙に写したデーモン族の印と、学院の敷地内にあったガーラン公爵家の屋根の一部の写真を、じいちゃんの前に置いた。


(昔からこの世界にあった写真機を改良して、超キレイな画像を写せるようにしたから、ハッキリ紋章が見えるな。あとで、みんなの集合写真を撮って、ばあちゃんにプレゼントしよう)


「これは?」


「クリスさんが第3教皇補佐の闇魔力の中に見たデーモン族の印と、学院の敷地の外れで見つけたガーラン公爵家の屋根にあった紋章です」


「まったく同じ絵柄だな……」


「学院の土魔法クラスに、魔法陣に詳しい友達がいるんです。その子が紋章の文字を読み解いてくれて、『ガーラン』は『三角の土地』って意味らしいんです」


「三角の土地……」


「そしてその紋章は、ダリオン国の貴族の紋章に似てるって言ってました」


「たしかに、このような紋章が多いな……」


「ガイにも聞いてみたんですが、『ガーラン』という場所は知らなくても、『ガーランド』という港はあるそうなんです。だから俺たち、その港を調べてみようと思って」


「なるほど……」


「あっ、あと、おじいさま……」


「ルキリア、落ち着け。どうやら儂に内緒だったことがたくさんあるらしいな……」


「あっ……」


じいちゃんは、腕を組みながら、ふふっと笑った。


「ルキリアが、儂らを心配させまいとして、内緒にしたのは分かっている。心配するな……、お前が辺境伯当主を継ぐまでは、儂は死なん」


「おじいさま……」


「ルキリア、あとは何だ?全部吐き出せよ」


そして俺は、連れ去られた双子の片割れが、ダリオン国のメナード辺境伯領の孤児院に預けられたのではないかと、モーリーが推測したことを話した。


「なるほどな……。全てがダリオン国に集中したのか……」


「はい、双子の片割れは、ダリオン国と関係があるように思います」


「わかった。孤児院に関しては儂の方で調べてみよう」


「おじいさま、ありがとうございます」


「あとな……、儂が『三角の土地』と聞いて頭に浮かんだ場所がある。ガーランド港付近の三角州だ。お前たちは、そのあたりを調べてみろ」


「三角州……!わかりました、先に書庫で調べてみます」


俺が書庫へ駆け出した後、じいちゃんが小さく呟いた。


「あいつは、ルークにそっくりだ……。血は繋がっておらんがな……」



 

俺たちは、ダリオン国に出航する日を迎えた。モーリーのお父さんも、モーリーを見送りに港まで来ていた。


「親父、そういえば、じいちゃんからは連絡入ってるの?」


「最近、連絡が無いんだ……。こちらから連絡しても返答が無くてな。まぁ、族長のことだから大丈夫だとは思うが……」


「魔道通信機が、繋がらないところに行ってるのか?」


(んっ? 魔道通信機が繋がらない場所……?)


 


「そろそろ乗船してください。出航します」


船から降りてきたレオさんが、埠頭から俺たちを手招きした。


俺たちは、商船ではなく、レオさんの海兵団の船に乗ることにした。


タラップを上っていると、ばあちゃんが何か大きな箱を持って、俺たちの後ろを駆け足で上がってきた。


「ルキ、これを持っていきなさい」


そう言うと、ばあちゃんはじいちゃんに怒られながら地上に降りて行った。


「なんだろう、これ?」


岸壁から船が離れると、操舵室に席を作ってもらった場所で箱を開けた。


「……すげーな」

「ばあちゃん、寝てないな……」


箱の中にはぎっしりと『最高級ポーション』が入っていた。


外海に出て操舵を交代したレオさんが、俺たちのところに来て箱をのぞくと、驚いた顔で目を見開いた。


「すごい数ですね……。セイ様のポーションは、久しぶりに見ました。今ではなかなか手に入らない、セイ様の最高級のポーションですよ」


(ばあちゃん、ありがとう……)


 


船がフルーラ辺境伯領の港を出てから3日目の朝、ダリオン国の港が見えてきた。


「おぉ~!ダリオン国の港だ!」

「あれが、ガーランド港……」


レオさんが双眼鏡で何かを見つけたように首を捻った。


「あれ?埠頭で『イカ焼き』を食べている2人って……」


「レオさんどうしたの?」


双眼鏡を受け取って覗いたモーリーは、口を大きく開けて叫んだ。


「うそぉ~!なんでそこにいるんだ、じいちゃん!」


(えっ、族長?なんで、ダリオン国?)




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