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わがままを封印した規格外少年の、時空を巡る送り人伝 —Departures—  作者: megane-san
第2章 王立学院

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33. 卒業実技発表

「ガイ、来月の卒業試験の準備は順調か?」


モーリーは、教科書をバッグに仕舞いながら、ガイに尋ねた。


「闇魔法の訓練の仕上げも、先生から合格もらったよ。でも、本当にみんなも、俺と一緒に卒業試験受けて、大丈夫なのか?」


アルジェントは、ガイにうなずいた。


「俺も卒業試験を受けて、高等学院の魔法薬科に入ることになった。シャーロット博士の研究所にも、引き続き見習いとして通う」


(アル!良かった!)


「アル、ノクタリア国の王太子は……、大丈夫なのか?」


「最近は、連絡も来ない。……もう、俺には興味がなくなったのかもな」


(連絡もない……?)


「ずっと俺を監視していた護衛の1人も国に帰ったしな……」


(護衛って……。ばあちゃんをケガさせた奴……。国に帰ったって……?)


俺たちが、座学の授業が終わっても席を立たずに話しをしていると、先生が手紙を持って教室に入ってきた。


「あれ?先生、どうしたんですか?」


先生は、「手紙を預かってきた」と言って、俺たちに銀色の封蝋がしてある手紙を渡した。


「学院長からだ。どうやら、卒業試験の実技試験で、お前たちが披露する魔法に、リクエストがあるらしい」


「リクエスト?」


俺たちは、急いで封を切ると、実技試験で披露して欲しいと書かれた魔法が羅列されていた。


「「「「えぇ〜〜〜!」」」」


そこには、初級から上級魔法まで、10を超える魔法が書かれていた。


「そして……、先ほど決まったんだが、お前たちの実技試験は、全校生徒の前で行われることになった」


「「「「はぁ〜〜〜?」」」」


「お前たちが、特級魔術師の実技試験で刺激を受けたように、生徒たちにも、お前たちとの実力の差がどれほどのものか見せたいらしい」


「えぇ〜、俺たちの魔法って……、お手本になるかな?」


「お前たちは、いつも4人で訓練しているから気がつかないだろうが、お前たちの実力は、高等学院の生徒と比べてもトップレベルだ」


「えぇ〜、マジで!」


先生は、笑いながら、続けて俺たちに言った。


「お前たちが使っている教科書も、高等学院の生徒が使っているものだ」


「「「「えぇ〜!」」」」


「お前たちは、既に高等学院の卒業試験を余裕で受けられるほどの実力も知識もあるんだ。学院の生徒たちをびっくりさせてやれ」


俺たちがガヤガヤ騒いでいると、ドアを開けて学院長が教室に入ってきた。


「みんな、賑やかじゃのぉ〜」


「「「「「学院長!」」」」」


「楽しそうで何よりじゃ」


「学院長、どうされました?」


「みんなの顔を見に来たんじゃ。みんな、儂の手紙は受けとったかの?学院の生徒たちに、君たちの魔法を見せて、すこ〜し、刺激を与えて欲しいんじゃ……。昨今の生徒たちは、ある程度出来たらすぐに満足してしまって、向上心を無くしてしまっているからのぉ」


(刺激か……。まあ、平和だと、必死になる理由なんて無いからね……)


モーリーは、「あっ!」と何かを思い出し、学院長にニッコリと微笑んだ。


「学院長、俺たち頑張って他の生徒に刺激を与えられるような魔法を披露します。……で、別件なんですが、学院長にお願いがあります」


「おっ?お願いとな?」


「俺とルキリアを、聖エリス国に留学させて下さい」


「「「聖エリス国?」」」


「なんと!……理由は、なんじゃ?」


「え〜と、聖属性魔法について……、あっ、これじゃダメか……。光と他の魔力の複合魔法の構築研究のためっていうのは、理由になりますか?」


(モーリー、咄嗟に『でっち上げ』な理由が口から出るのは、さすがだよ!)


学院長は、俺を見ると、続けて話すようにと、目線でうながした。

 

「えっ……と、俺は光を含む全属性の魔力を持っています。上級光魔法、いえ、それ以上の光魔法を学んで、複合魔法の可能性を広げたいと思っています。俺とモーリーは、共同で研究をしているので……、2人で留学したいんです」


学長は、俺たちの話を、ふんふんと言いながら聞いていたが、最後には、「面白そうじゃのぉ」と言って首を縦にふってくれた。


「よかろう、手配しておこう。手続きが整ったら連絡する」



学院長が、教室を出ると、先生、そしてガイとアルジェントが、びっくりした顔で俺たちを囲んだ。


「いつから、そんな計画をしてたんだ?」


モーリーは、飄々とした顔で、「結構前から、かなぁ」と答えたが、実のところ、聖エリス国に行こうと決めたのは、昨日の夜だった。


「……お前たち、何か目的があるんだな……?」


「はい、先生……。俺たち、確かめたいことがあるんです」


先生は、俺たちを見て、大きくため息をついた。


「……危ないことは、するなよ」


モーリーは、真面目な顔で、先生にうなずいた。


「先生、大丈夫です。……無茶はしません」




俺たちは、その日の午後、聖エリス国に留学することを報告しに、フルーラ辺境伯領に向かった。


「ルキ!休みの日でもないのに、急にどうしたんじゃ?」


「おじいさまと、おばあさまに、許可をいただきたいことがあるんです」


「許可とな?」


俺は、ばあちゃんと一緒にじいちゃんの執務室に入ると、じいちゃんが俺の顔を見て驚いた。


「ルキリア、何かあったのか?」


俺たちがソファに座ると、チャールズがお茶を持ってきてくれた。


「おじいさま、おばあさま、実は、俺、来月に学院の卒業試験を受けることになりました」


「飛び級か?」


「はい、竜人族のガイが、急遽、学院を飛び級で卒業して、竜人の谷で修行をすることになったので、俺たちみんなで卒業試験を受けることにしたんです」


「ルキ、学院を卒業したら、この辺境伯領に戻って来るのかえ?」


ばあちゃんは、嬉しそうな目で俺を見た。


(ばあちゃん……、ごめん……)


「おじいさま、おばあさま、俺……、聖エリス国に留学しようと思います」


「せ……、聖エリス国……」


ばあちゃんは、びっくりした顔をしていたが、目に涙を溜めて俺を見上げた。


「セイ」


じいちゃんが、ばあちゃんの名前を呼ぶと、ばあちゃんは、サッと目尻を手の甲で拭った。


そして、何かを決めたようにうなずくと、じいちゃんに振り返った。


「ハン、我も行く!」


「ダメだ……。セイ、ルキリアの独り立ちを邪魔するな」


(じいちゃん……)


ばあちゃんは、『独り立ち』という言葉に、「あっ……」という表情をすると、寂しそうに下を向いてしまった……。


「ルキリア、聖エリス国に、屋敷を準備する。モーリーも、その方がいいだろう」


「おじいさま……」


「行ってこい。そして、聖女とデーモン族について調査してこい」


「はい!おじいさま、ありがとうございます!」


じいちゃんは、俺の腕をギュッと握っているばあちゃんに気がつくと、やれやれと苦笑いした。


「セイ、月に一度、ルキリアとモーリーの様子を見に行った方がいいかもしれんな……。厳重な結界を張るが、月に一度は、ルキリアたちの身体を確認した方がいい……。何が仕掛けられるかわからんからな……」


ばあちゃんは、じいちゃんの言葉に、パッと反応して、晴れやかな顔でじいちゃんに振り返った。


「ハン!我に任せておけ!」


(じいちゃんは、何だかんだ言って、ばあちゃんに甘い……)


それからのじいちゃんは、俺たちの留学の準備を滞りなく進めるために随所に赴き、完璧なる準備を整えてくれた。


 

 


そして俺たちは、卒業試験の実技発表の日を迎えた。


「あぁ〜、今日でこの学院も最後か……」


「結構、楽しかったな……」


「俺は、今まで生きてきて、1番楽しく過ごせた時間だった……。理由は何であれ、この国に来れて良かった……」


(アル……)


「俺も……、ダリオン国から、この学院に来れて、みんなと友達になれて……。あの国から俺を連れ出してくれた先生には、感謝だな……」


モーリーは、跪いて学院の訓練場の土を確認しながら、俺たちを見上げた。


「まだ感傷に浸るのは、早いぜ〜。俺たちには、この学院のみんなの記憶に残るような、でっかい刺激を与える課題があるからな!」


「あぁ、そうだな。でも、みんなで考えた『発表会』の練習も楽しかったな……」


そう言いながら、ガイは、火魔法で地面を焼き切るようにして、50メートル四方の正方形を描いた。


「よし、準備は整ったな!」



俺たちがグラウンドの準備をしていると、次々と観覧席に生徒たちが入ってきた。


そして学院長と先生も、俺たちを見つけて、準備が整ったグラウンドに入ってきた。


「おはよう!おっ、準備は整ったようじゃな」


「「「「おはようございます」」」」


 学院長は、みんなの顔を見まわすと、笑顔でうなずいた。


「今日は、儂がこのグラウンドに強力な結界を張るから、思う存分やってくれていいぞ!楽しみじゃのぉ!」


そう言うと、学院長と先生は、教員席に戻って行った。


観覧席が埋まり、チラッと教員席を見ると、なんとガーラ国王とじいちゃん、そしてモーリーのお父さんに、シャーロット博士までが、席に座っていた。


(えぇ〜〜!)


みんなもそれに気がつき、俺たちは苦笑いをしながら学院長の挨拶を待った。


学院長は立ち上がると、拡声魔法で、声を訓練場全体に響き渡らせた。

 

「これから、特別クラスの、飛び級卒業の実技試験が行われる。君たちと同じ年頃の者が繰り出す魔法を、しっかりと目に焼き付けて、今後の訓練の参考にしてほしい」


学院長は、両手を空に掲げると、グラウンドに強固な三重結界を張った。そして、俺たちにうなずいた。


「やるか!」

「俺、ドキドキするけど、なんか楽しい!」

「あぁ、こんなにワクワクするのは初めてだ!」

(みんなと一緒で……、俺、楽しいよ!)

 


俺たちは、ガイがグラウンドに描いた正方形の四方に立った。

 

そしてみんなで中心を向いて右手を掲げ、魔力を錬成すると、4人の魔力錬成の音がグラウンド中に響き渡った。

 

「「「「キュィーーーーン」」」」

 

「魔力錬成で、あんな音がするのかよ!」

「すごい密度の魔力が練られてる!」

 

そして俺たちは、自分の右側の相手に初級から中級までの攻撃魔法を繰り出していった。

 

そして左側の相手からの攻撃に、同時展開で防御魔法を張った。

 

「すごい!いくつもの魔法を同時に展開してる!」

「あんなこと、高等学院の生徒でも出来る奴は少ないぜ!」

 

そして、攻撃魔法を終了させると、アルジェントがグラウンドの中心に、幻影魔法で巨大な魔獣を出現させた。

 

「うわぁぁぁ!何だよアレは!」

「幻影魔法ってわかってても、俺は無理!」

 

俺たちは、幻影魔法で出現させた巨大魔獣に、上級攻撃魔法を打ち込んでいった。

 

ガイは、超高熱を放つ『究極火炎魔法』

 

アルジェントは、影を実体化させ、無数の刃で敵を切り裂く『影刃魔法』

 

モーリーは、無数の岩槍を地面から瞬時に突き出す『殲滅魔法』

 

俺は、真空刃を発生させ、敵を削り飛ばす『暴風真空刃魔法』


そして、俺たちの攻撃で幻影の魔獣が消えた瞬間、観覧席が静まり返った。


静寂を破って誰かが拍手すると、観覧席は大歓声となって、みんなが立ち上がり、大喝采となった。

 


観覧席の歓声がおさまると、俺たちは中央に集まって、空に腕を掲げた。

 

そしてーー

 

アルジェントが、結界内を暗く染め、

 

モーリーがキラキラした砂粒ほどの鉱石を空に打ち上げ、

 

ガイが、その鉱石の一粒一粒に火をつけた。

 

そして俺がそれに光をまとわせると、色とりどりの火花が、結界内の空一面で弾け、訓練場は幻想的な夜空を思わせる景色となった――


俺たちは、学院での思い出を振り返りながら、最後の一粒の光が消えるまで、ずっと空を見つめていた。



 


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