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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第2章 王立学院

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30/31

30. ガイの父親との別れ

「魔の森での授業、厳しくなってきたな」


モーリーは、スペシャルランチの『バッファローバウのシチュー』を平らげた後、デザートの『濃厚チーズケーキ』に手を伸ばした。


「最近は、みんなそれぞれのカリキュラムで魔法訓練してるから……。俺は、今日は闇魔法100本撃ちだったよ」


ガイは、肩をすくめながら、ため息をついた。


「アルは、なんか超面倒なことやらされてたな?」


モーリーは、3個目のチーズケーキを食べながら、アルジェントに話を振った。


「あぁ……。王立魔法薬研究所で、薬草から成分を抽出する手伝いをしているから、その精度を上げる訓練をさせてもらっている」


(アルが、微笑みながら喋ってる!)


「俺、アルの慎重な性格とか、緻密な魔力操作が得意なとこ、薬学系の仕事に向いてると思うよ」


「……向いてる?」


「あぁ、向いてると思う。それに、アル、研究所の仕事の話をしてる時、すげー楽しそうだぜ」


「楽しそう……」


(うん、うん、楽しそうだね!)


「でも、俺……、ここを卒業したら、ノクタリア国に帰らないと……」


「ここにいたらいいんじゃないのか?王立学院には高等部があるから、そこで『ノクタリアのために、魔法薬の専門知識を学びます』って、言ってみれば……、あっ、お前の家族、人質に取られてるとか無いよな?」


「それは無い。俺の家は、側妃の実家だから……」


「じゃぁ、問題ない。ノクタリアの王太子がなんか言ってきても、先生と博士が盾になってくれるし、俺たちもお前を守る」


「えっ、俺を……」


「当たり前だろ。俺たち、マジ友だろ?仲間を守るのは普通だ」


(モーリー、マジ友って、何?)


ガイが、モーリーの発言を聞いて、ブツブツと何かを考えながら呟いていた。


「……俺が、養子になったら……、アルを守れるか……?」


耳のいいモーリーは、ニヤッとしながら、ガイにうなずいた。


「ガイ、やれよ。お前なら出来る」


(みんな、少しずつ、前に進んでる……。モーリーの言葉は、強いな……)


俺たちが、カフェテリアで話をしていると、先生が校内では禁止の転移魔法を使って、焦った表情で俺たちの前に現れた。


「ガイ、すぐにダリオン国に戻るぞ!」


「えっ、何かあったんですか?」


「セイランが、危篤だと連絡が入った」


「父上が……」


先生は、小刻みに震えているガイの手を握ると、その場からすぐに転移して行った。




♢*♢*♢*♢*♢


 


ガイと王弟のレイノルドが、転移でダリオン国の辺境伯城に着くと、城の入口で辺境伯副騎士団長のガルフが、2人を待っていた。


「セイランの怪我の具合は?」


「部下を庇い、正面から魔獣の攻撃を受けて、爪で腹部を深く切られました。意識が無く、治癒魔法を全く受け付けないので応急処置のみしか……」


「治癒魔法を受け付けない?」


「セイラン様が自ら魔法を弾いていると思われます……。辺境伯夫人が亡くなってからは、生きる目的を失い、ずっと死に場所を探していると、言ってました……」


「馬鹿か、あいつは……!」



部屋に入ると、血の滲んだ包帯を巻きつけた辺境伯が、ベッドに横たわっていた。


ガイは、血だらけの父親を見て、顔を真っ青にさせていたが、何も声をかけることが出来ずに、横たわる父親をただ見つめていた。


レイノルドは、頭を掻きながら「あ〜、もう世話の焼ける弟だ!」と、横たわる辺境伯に大声で怒鳴った。


「セイラン!聞こえているんだろ、目を開けろ!」


辺境伯は、レイノルドの声が聞こえたのか、薄っすらと目を開けるとベッドの側に立っていた二人を見上げて小さく呟いた。

 

「王弟殿下……、ガイ……」


「お前……、死ぬ間際ぐらい、お兄様と呼べ!」


辺境伯は、目尻を下げて微笑むような表情をした後、「すまなかった……」と、ガイに一言だけ言って目を閉じ、そのまま眠るように息を引き取った。


「えっ……、父上……」


「セイラン……!」

 

レイノルドは、奥歯をギリっと噛み締めながら辺境伯の手を取り、辺境伯の体から魔力が消えていくまで、無言で異母兄弟の弟の顔を見つめていた。


「ガルフ、辺境伯に近しい者たちを部屋に呼んでくれ」


ガルフは、うなずくと涙を堪えながら部屋を出て行った。


ガイは涙を堪え、握り込んだ拳を振るわせながら、横たわる父親の側に立ち尽くしていた。


「ガイ、これから辺境伯の葬儀が終わるまでは、お前が当主代理となる」


「俺が、当主代理……」


「あぁ、そうだ。お前は、この辺境伯の長子だからな。お前は、どうしたい?このメナード辺境伯領を継ぐ気はあるか?」


「……」


「お前がメナード辺境伯領を継ぐ気持ちが無いのであれば、分家に当主を譲ればいい。ガルフは分家である、グルフスタン伯爵家の息子だ。副騎士団長をしているから、そのまま当主兼騎士団長を継いでもらうこともできる」


(俺の血は、この辺境伯の血筋じゃない……。ガルフさんが、辺境伯当主を継ぐのが正解かも……)


「そうすれば、お前はただのガイとして暮らしていける。俺がお前の後見人になるから、経済的なことは心配しなくていい。ガーラ国王の養子になる話を受けてもいい……。まあ、まだ時間はある。じっくりと考えてみろ」


「はい……」


しばらくすると、辺境伯に近しい者たちが部屋に集まり、それぞれが辺境伯に別れの挨拶をした。そして、辺境伯に長く仕える従者が一歩前に出てガイの前に跪いた。


「ガイ様が学院を卒業されるまで、私たちがこの辺境伯領をお守りいたします」


その場にいた者たち全員が跪くと、ガイに向かって頭を下げた。


「みんな……、ありがとう……」


 


葬儀が終わり、ガイが学院を卒業するまでの当主代理を決める話し合いが持たれた。


そして、ガイが学院を卒業するまでは、副騎士団長のガルフが辺境伯当主代理を務めることになった。


転移でガーラ国に戻る日、レイノルドとガイが辺境伯城の玄関ホールに降りていくと、辺境伯城で働く者たちが全員整列して、階段を降りてくる二人を待っていた。


当主代理を務めるガルフが、前に出て胸に手を当て、ガイに騎士の礼をした。


「ガイ様、私はガイ様が戻られるまでの代理です。いつでも戻られたい時に帰郷してください。メナード辺境伯領の民達一同、ガイ様のご帰郷をお待ちしております」


「……ありがとう」

 

「ガルフ、何かあったら俺を呼べ」


「レイノルド様、ありがとうございます」


ガイは、玄関ホールに並ぶ者たちから目を逸らし、拳を握ってうつむいた。

 

そんなガイの様子を横目で見ながら、レイノルドは、青白い魔法陣を開くと、2人の姿が玄関ホールからスッと消えた。


 


王立学院の門前に転移してきた後、レイノルドはガイに何かを話しかけようとしていたが、ガイの様子を見て首を振ると、一言だけ声をかけて、その場からすぐに転移した。


「ガイ、目を背けている限り……強くはなれん」


レイノルドと別れたガイは、肩を落として、力無く学院の寮に向かって歩いていた。


「「「ガイ!」」」


後ろから、いつもの馴染みのある声が聞こえた。


「おかえり……、大丈夫か?」


「あぁ……大丈夫だ」


 (ガイ、なんか様子が……)

 

「ガイ、モヤモヤした顔してるぞ。俺たちに話せることなら、話しちまえよ」


「……俺……」


(うん……)


「……父上がいなくなってくれれば……、楽になると思ってた」

 

(うん……)


「でも、父の広い寝室に一人で立った時、動けなくなって、……怖かった。父が背負っていたものの重さが、初めて分かって……」


(あぁ……、俺には、言えない……。自信を持てなんて、今の彼には残酷すぎる)


モーリーは、芝生の上にドサっと座った。

 

「ガイ、お前、なんで怖いか、わかるか?」


「えっ……」


「お前の憎しみをぶつけてたものが無くなって、今、お前は現実を直視させられた。……そして、逃げることが出来なくなったから怖いんだ」


「……」


「……でもな、その恐怖は、お前が育てた怪物だ」


(モーリー……)


「お前の父親が、たくさんの民を率いて辺境伯領を背負ってたんだ。次はお前だって言われて、余計に怖いんだろ。……お前には、自信がないから」


(モーリー!)


「モーリー、言い過ぎだよ!ガイは、俺たちより経験がない。この世界で、モーリーは20年、アルは24年、俺は前世で19年生きてきたけど……」


「あっ……、そうか……。確かにな……」


「えっ……、みんな年上だったのか……?」


(あっ、ガイに言ってなかったな……)


「ガイ、竜人族長に会ってこいよ。お前の身体に流れてる血をちゃんと理解してこい。いつまでも逃げてたら、全てが中途半端になる」


黙り込んでいたガイの背中に手を置いて、アルジェントが小さい声で呟いた。

 

「俺もそうだった……。自分を見つめるようになってから、俺も少し強くなった気がするよ……」


(アル……)


「俺……、闇の魔力は、割り切って、受け入れたよ……。だけど、俺の中に流れる竜人の血は……」


(ガイ……、わかるよ……、わかるけど……)

 

モーリーは立ち上がると、ガイの声を遮った。


「ガイ、竜人の血と向き合え。わからないから、怖いんだ。理解したら、意外にちっぽけなもんかもしれない」


「……ちっぽけ?」


「竜人の血が、悲惨な呪いだけのものだったら、今頃すでに血は絶えているはずだと思わないか?竜人たちが、なぜ魔の森ではなく、異空間に移住したのか……それももしかしたら関係があるのかもしれない」


(……確かに)


「よし!ガイ、竜人が住んでる、あの滝の裏にある異空間に行くぞ。俺たちも一緒に行く」


(えっ!俺たちも!?)

 


♢*♢*♢*♢*♢

 

 

その頃……


「族長!こんなジャングルの中に、記憶玉があるんですか!」


「私の『感』が、こちらを指差しています。あっ!あの木の上!鳥の巣の中!」


「ヒィー!私より大きい雛がいる〜!」


「あっ、補佐殿、あの巣から、キラッと光っている玉を取ってきていただけますか?私、木登りは不得意なのです」


「えっ、えぇ〜!きゃー、私はエサではありません〜!ぎゃー、親鳥が戻ってきた〜!」




 

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