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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第2章 王立学院

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第31話 特級魔術師試験

「「「「おはようございます」」」」


あれから、俺たちは話し合い、ガイは先生に、竜人族長に会いたいと魔信便を送った。そして、俺たちは竜人族の住む異空間で来月に行われる、『花魂祭』に招待されることになった。


そして今日は、竜人族の花魂祭に行く前に、先生が俺たちに見せたいものがあると、休日にもかかわらず、学院の門前に集合している。


「今日は、特級魔術師試験の実技試験を見学に行くぞ」


「特級魔術師?」


「あっ、アルジェントは知らなかったか?この大陸を統括する魔法協会が、この国にあるんだ」


「魔法協会ですか……」


「特級魔術師は、魔法協会が認めた者だけが得られる称号だ。特級魔術師になれば、国に縛られず活動できる。国王ですら、魔法協会を通さずには動かせない存在だ」


先生は、アルジェントに「どうだ?」とニッコリ微笑んだ。


「国に縛られない……」


「この試験は、4年に1度しか行われない。かなり厳しいぞ……。そして、この大陸に特級魔術師は25人しかいない」


(えぇ〜!大陸全土で、25人!)


「先生、試験はどんなものがあるんですか?」


モーリーは、腕を組みながら先生に尋ねた。


「試験科目は、3つだ。筆記試験、実技試験、そしてこの世界にはまだ無い、独自魔法の発表だ」


(独自の魔法!先生は、どんな魔法を発表したんだろう?……んっ、アル?)



 

魔法協会の訓練場に着くと、魔法協会の会長が先生を見つけて声をかけてきた。


「レイ、久しぶりじゃな!おっ、その子たちが、お主の教え子たちか」


会長は、頷きながら俺たちをにこにこと見つめた。


「これからが楽しみな子たちじゃ。今日は、ここでたくさんのことを学んでいくといい」


会長はそう言うと、呼びに来た試験官と共に審査員席に戻って行った。そして俺たちは、観覧席に座って、グラウンドで体をほぐしている受験者たちを眺めた。


「あれ?2人だけ、若い受験者がいる」


モーリーの視線の先を見ると、どう見ても20歳前後だろうと思われる2人が立っていた。


「あぁ、あの2人は、私の教え子だよ。ダリオン国から移住してきた兄妹だ」


「ダリオン国から?」


「ダリオン国は、魔力持ちが少ない。だから、見つかれば国に囲われる。彼らは、それから逃れてきた……」


「あっ……、ガイも……?」


「……俺も、国に連行される前に、先生が連れ出してくれた」


ガイは、領地のことを思い出したのか、少し暗い顔をした……。


モーリーは、ガイの表情に気がつくと、背中をバシッと叩いた。

 

「……おっ、始まるぞ!」




訓練場に受験者全員が揃うと、審査員の他に『光・闇・火・水・風・土』の魔法を使う6人の試験官が並んだ。そして、会長がみんなの前に立つと、試験の説明を始めた。


「実技試験は模擬戦じゃ。試験官には、君たちの相手をしてもらう。各自の持つ魔力と相性の悪い魔力を持つ者が試合相手となる。試験の順番は、くじ引きじゃ」


会長の説明が終わると、一人の受験者が手を上げて質問をした。


「この模擬戦は、相手を殺すつもりで魔法を撃ち込んでもいいんですか?」


「あぁ、殺すつもりでいきなさい。どんな道具でも使用してよい。特級レベルの治癒師も最高級ポーションもたくさんあるから心配せんでいいぞ。思いっきりいきなさい」


質問した受験者は、ニヤリとしながら前に並ぶ試験官を、じっとりした視線で眺めていた。


(うわぁ~、この人とっても性格悪そう~。えっ?土魔法を持つ女性の試験官、彼を見て微笑んでる……恐い……)



くじ引きをして、順番が決まった後に対戦者が決められ、受験者は試験を受ける順番に椅子に座らされていた。


「あっ、さっき質問してた彼が、一番最初だね」


アルは、興味津々で受験者に視線を向けていた。


(アル、何かが吹っ切れたみたいだ!表情が晴々してる!)

 

「彼の魔法は、ちょっと興味あるな……」


(モーリーの目も真剣だ!)



一番手の受験者の相手は、さっき微笑んでた土魔法の女性の試験官だった。


「それでは模擬戦を行います。始め!」


審判がサッと二人の間からグラウンドの外側に転移した瞬間、受験者は魔法を発動した。


サンダー!」


(えっ!彼、雷魔法を持ってる?とっても希少な魔力で、この魔力保持者はこの国に数人しかいないって聞いてたけど……)


対戦相手の試験官は、サッと自分を守るドーム型の結界を張ると「ライトニング・ロッド」と唱え、ドームの四隅に避雷針を出して受験者の放った雷を避雷針に落とした。


「チッ!」と舌打ちした受験者は続けて魔法を発動した。


雷散サンダースカッター!」


四方八方から落雷が降り注ぐ中、試験官は表情も変えずに地面の磁力をコントロールしてグラウンドの隅に雷を集めて落とした。


「くそ~!」


(凄い!攻撃を受け流す技が、的確で柔軟!)


俺が感動しながら試合を見ている横で、みんなも拳を握って集中して観戦していた。特に土魔法を持つモーリーは「磁力の使い方が上手い」と感心していた。


最終的に、受験者は対戦者の試験官に雷を通さない砂粒で体の動きを止められて、試合終了となった。


会長が試合終了後に二人の間に姿を現すと、受験者に今後のためにといくつかの課題を与えた。


「君の雷魔法は威力もあって素晴らしいものじゃ。しかしその威力だけに頼ってはいけない。今後は雷の基本的な性質を細かく研究してみなさい。きっと雷の弱点を補えるものが見つかるじゃろう。君にはまだまだ伸びしろがある。楽しみにしているよ」


そう言って受験者の肩をポンポンと叩くと、審査員の席に戻って行った。



そして次々と模擬戦が行われ、銀髪に紺色の目をした、あの女の子がグラウンドに出てきた。


彼女がグラウンドの中央に立つと、闇魔法を使う試験官が歩いてきた。


審判の掛け声と同時に、対戦相手が闇魔法で彼女の影を捕えようと魔法を発動した瞬間、彼女は詠唱も無しに対戦相手を光のドームに閉じ込めた。

 

そして蜘蛛の糸のような光の糸で相手をがんじがらめにすると、彼女は『針』と小さく呟き、光の糸から無数の鋭く長い針のようなものが出て、容赦なく一気に対戦相手の体を突き刺した。


「そこまで!」


審判が試合を止めに入り、治癒師が治癒魔法を施すと対戦者を連れてすぐに救護室に転移して行った。


(うわぁ……マジか……!容赦ない……)



次にさっきの女の子の兄がグラウンドの中央に入ると、風魔法の使い手で有名な魔術師が彼の前に立った。


「おぉ~!憧れの貴方に相手をしていただけるなんて光栄です!」


対戦者の試験官も「俺も楽しみだ。全力でこい!」とガハハっと楽しそうに笑った。


審判の掛け声と同時に、彼は重力の術式を相手の立つ地面に展開し試験官の風を封じ込める作戦に出た。


「おぉ、重力を操作できるとは、やるじゃねぇか」


彼が重力をかけ続けると対戦者の周りの地面がすり鉢状に深さ50メートルほどドンっと地面にめり込んで試験官の姿が消えた。その瞬間、彼の足元がボコっと盛り上がり、一気に竜巻が空へ巻き上がった。


吹き上げられた彼は地面を隆起させてジャンプする足場を作ると、『3つ』の魔法を同時に放った。


1つ目は、重力で相手の足を止め

2つ目は、ダイヤモンド級の硬い石矢を無数に相手の背中に放った。

そして3つ目は、……

 


風球ウィンドスフィア


試験官は超高速な風で球体を作り、風の結界を作り上げて彼の攻撃を弾いていた。しかし次の瞬間、結界が急に解かれ——中から対戦者が目と口を手で抑えて、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら出てきた。


「ギブ……」


みんなが首を傾げて、「何があったんだ?」と様子を見ていると、治癒師が走って来て「洗浄クリーン」と叫んで、試験官の体に洗浄魔法をかけていた。


会長がグラウンドに入り、「フォッフォッ!面白い作戦を考えたな!」と彼の背中をバシバシと叩いて大笑いした後に、みんなに何が起こったのかを説明した。


「彼は、初めの攻撃で重力操作をした際に、改良したハバネロの種を対戦相手の体にくっつけておった。そして相手が風球で結界を張った時にその種を発芽させて、結界内に辛い粒子を纏った花粉を充満させた。通常のハバネロを500倍の辛さに改良したものが目や鼻に入ったなら、儂もギブするだろうな」


彼は会長に背中を叩かれ、苦笑いしながら頭を掻いた。


「自分より魔力も技量も経験値も上の魔術師と戦うなら、ちょっと汚い作戦を使わないと勝てないなと思って……」


洗浄魔法をかけてもらって、ようやく立ち上がれるようになった試験官が彼のそばに来ると「お前、凄いな!」と笑いながら肩を叩いた。


会長は真面目な表情で、みんなに向かって助言をした。


「なぜ彼が、この試験で下級魔法を使ったかわかるかね?勝つためだ。彼はこの試験で、派手な魔法を使って自分の技量を見せつけようとはせずに、勝つための魔法を使った。魔法はただの道具に過ぎん。かっこいいものでも何でもない。ただの道具なんだよ。その道具をいかに使うか、その道具を上手く使える者が特級魔術師の資格を与えられる。みんな、柔軟な思考を持つんじゃぞ」



実技試験が終わると、受験者は、次の試験会場へ移動を始めたが、先生の教え子の兄妹2人が、俺たちが座っている観覧席に向かって走ってきた。


「師匠、お久しぶりです!」

「師匠!私、どうでした?」


(師匠って……?先生の弟子?)


「ギルもクリスも、面白い戦い方だったな。次の発表も頑張れよ」


「師匠、彼らは?」


女の子は、俺たちに顔を向けると、俺をじっと見つめた。


(えっ……、あっ、俺の色か……。えっ……!)


「私の教え子たちだ。今日は、お前たちの戦い方が、みんなのいい刺激になったと思うぞ。また今度、ゆっくり紹介しよう」


俺と彼女の視線がかち合うと、彼女はフッと笑って次の試験会場へ向かって走って行った。


じっと彼女の後ろ姿を見ていた俺の顔を、モーリーが覗き込んだ。


「ルキリア、あの子、好みなのか?」


「はっ?……えっ、ち、違うよ!」


みんな、俺を揶揄って笑ってたけど、俺は、彼女に見えた膨大な『闇の魔力』をじっと見ていただけだった。








 

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