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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第2章 王立学院

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第26話 モーリーの治療

「シャーロット博士!」


「王弟殿下、患者はその子ですね」


シャーロット博士は、チラッと俺を見てうなずくと、その場でモーリーを診始めた。


「魔力の糸が、複雑に絡んでいる……。こうなった原因をルキリア君は知っているね?」


シャーロット博士は、モーリーの手を握りながら俺を見上げた。


「……はい」


「私たちに話せない内容かもしれないが、その原因を知らないと治療が難しい。この状態が続くと、彼は目を覚ますことが出来なくなる」


(えっ……)


「王弟殿下と私になら、モーリー君の事情を話してもいいと思うよ。むしろ話しておいた方がいい」


「はい……」

 


モーリーをベッドに寝かせると、俺は先生とシャーロット博士に、モーリーのループのことと、週末にあったことを話した。


「ループか……」


先生は、つぶやきながら真っ暗な部屋のソファに座った。


シャーロット博士も、ソファに座って腕を組むと、黙って何かを考えている様子だった。


(モーリー……、ごめん。俺、モーリーのこと話しちゃったよ……)


俺たちが、真っ暗なモーリーの部屋で、考え込んでいると、オウルが王弟殿下を呼びに部屋に入ってきた。


「王弟殿下、側近の方が、急用だということで、屋敷に来られています」


「わかった……。博士、少し席を外します」

 

先生が部屋を出て行った後、シャーロット博士は、じっと俺の目を見ながら口を開いた。

 

「ルキリア君、モーリー君を治療するために、君の力を借りたい」


「えっ……、俺の力……?」


(俺の力のことは、博士は知らないはずなのに……)


「君の暗黒魔力が、必要なんだ」


(なんで、暗黒魔力のことを……)


「……博士は、なんで俺が暗黒魔力を持っていることを知っているんですか……」


「それは、時が来たら……、君に話そう。今は、モーリー君の治療が先だ」


(時が来たら……?)


「……わかりました。俺の魔力を使ってください。どうやってモーリーを治療するんですか……?」


「彼は、今世ではまだ継承されていない地底族長の魔力を、封印されていた過去世の魔力から、無理矢理引きずり出した……、いや、引きずり出された。記録玉に込められていた彼の魔力によってね……」


「過去世の魔力……」


「今の彼は、引きずり出された過去世の魔力が、今世の魔力に絡みついている状態だ。彼の身体の中の次元が歪み始めている……。このままでは、危険だ」


「過去世の魔力……。族長を継承した時の魔力を消すんですね」


「その通り……。私が君の暗黒魔力を導くから、心配しなくていい」


(俺の暗黒魔力を導く?シャーロット博士は、何者なんだ……)


「君の魔力を貸してくれるか?」


「はい、モーリーを助けてください」



俺は、モーリーのそばに立って、慎重に暗黒魔力を引き出した。


博士は、俺の手を取り、もう片方の手をモーリーの心臓の上に当てた。


「過去世の魔力を消し去る時に、彼が苦しんでも、暗黒魔力は流し続けてくれ。絶対に手を離さないように」


「……わかりました」


博士は、俺の魔力をモーリーの身体に少しずつ流し込んでいった。


しばらく経つと、モーリーが体を捻って苦しみ出したが、俺は空いている手で、モーリーを押さえ込んだ。


「ぐああああっ!!あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」


モーリーの体の内側からミシリ、と嫌な音が響いた。


「モーリー!!!」


「……もう少し、だ……。過去世の魔力のみ消し去る!」


博士が、自分の光の魔力と俺の魔力を合わせて一気に流し込むと、モーリーは一瞬眩いほどの光に包まれた。 


(モーリー!!!)


そして、しばらくの間、部屋は魔力の残滓による淡い光が漂い、光が収まると、モーリーは気を失ったかのように静かになった。


「博士……」


博士は額の汗を拭うと、モーリーの身体をしっかりと診てから俺に振り返った。


「もう大丈夫だ」


(……モーリー、よかった……、よかった……)


「王弟殿下には、彼の治療が済んだことを話してくるから、ルキリア君は、彼に付いていてくれ。あっ、王弟殿下には、私が君の暗黒魔力を知っていることは、内緒にしておいて欲しい」


博士は、俺にいたずらっぽく微笑みながらウインクすると、静かにドアを閉めて部屋を出て行った。


(シャーロット博士は、なぜ……。時が来たら……って言ってたけど……)



しばらくすると、バタバタと階段を駆け降りてくる音が聞こえて、先生とオウルが部屋に入ってきた。


「モーリーは、大丈夫か?博士が治療は終わったと言っていたが……」


「あっ……、はい。博士が光魔法で治療してくださいました」


(博士との約束だから……)


「……そうか、良かった……」


先生は、ホッとした様子でうなずいた。


「博士は、明日、もう一度診察に来ると言っていた。あっ、モーリーとお前は、今週は学院を休むと連絡しておくから、モーリーに付いていてやれ」


「あっ……、ありがとうございます」




数日後、フルーラ辺境伯のタウンハウスに、鐘が鳴るような玄関のチャイム音が響き渡った。


ちょうど、正面玄関の前を通って地下のモーリーの部屋へ行くところだった俺は、オウルを待たずに玄関のドアを開けた。


「アル!ガイ!」


アルジェントとガイは、お見舞いに持ってきたのであろう花束と果物の入ったカゴを持って、玄関入口に立っていた。


「俺たち、モーリーのお見舞いに来たんだ」


「ありがとう!まだモーリーは目を覚まさないけど……、今日の診察ではもうすぐ目を覚ますだろうって言ってたよ。あっ、モーリーの部屋はこっちだよ」


俺が2人を案内して地下に向かおうとしたが、アルジェントは、玄関の外に立ったままで、屋敷の中に入ろうとしなかった。


「アル、どうしたの?」


「……俺は、この屋敷に入ってもいいのか……?」


「なんでダメなの?」


「お前は、俺をノクタリア国のスパイか刺客だと思わないのか?」


「あぁ~、そうか……。俺は、アルは何らかの指示を受けて留学してきたんだろうなって思ってはいるよ。でも、それはそれで、これはこれ、なんじゃないかな?アルは、モーリーを心配して来てくれたんでしょ。ノクタリアの仕事と、俺たちの友情は、別に考えていいと思うよ。今、アルは、俺たちの友人として来てくれたんだから」


「えっ……、それでいいのか……?そんな考え方……」


「アルが、ノクタリア国の刺客として俺の前に来たら、『刺客のアル』として俺が対応するだけだと思うけど。仕事とプライベートは別でもいいんじゃない?」


アルジェントは、口に手を当てて黙り込んだ。


ガイは、そんなアルジェントを見て、「行くぞ」と言いながら、グイッと腕を引っ張って、みんなでモーリーの部屋に行く階段を下りた。



「モーリー入るよ~」


真っ暗な部屋のドアを開けて、俺とアルジェントは普通に部屋に入ったが、ガイはドアの入口で立ち止まっていた。


「ガイ、どうしたの?」


「真っ暗で、何も見えない……」


アルジェントがガイのそばに行くと、ガイの手を取って、部屋の中に導いた。


「ガイ、目に闇の魔力を集中してみろ」


「えっ、闇の魔力?」


「あっ、俺もつい最近知ったんだ。闇の魔力を目に集中させると、暗闇でも普通に見えるようになるよ」


ガイは、「やってみる!」と数分頑張っていたが、闇の魔力を一箇所に集めることが難しいようだった。

 

「……んん〜、うまくいかない……」


「……俺が、ナビゲートする」


アルジェントが、ガイの目の上に、そっと手のひらを当てた。


「この手のひらに向かって、お前の中の黒い魔力を動かせ。俺の魔力でお前の闇魔力を導くから、出来るはずだ」


「わかった……」


ガイは、深呼吸すると、さっきよりもリラックスした感じで闇魔力を目に集中させた。


「どうだ……?」


「おぉ〜!見えるよ!闇魔力、すごい!」


(ガイ、闇魔力への嫌悪感、薄れてきたみたいだ……)

 


「……お前ら、うるさいよ……。病人の寝てるそばで、魔法の訓練かよ……」


「「「モーリー!」」」


「気分はどう?あっ、オウル呼んでこなきゃ!」


ガタガタッ!ドタッ!


「ルキリア、落ち着け……って、あぁ、階段でこけてるわ……」


「気分は、どうだ?」


アルジェントが、モーリーのベッドのそばの椅子に腰掛けた。


「あぁ、もう大丈夫だ……。お前、この屋敷に入ってこれたんだな……、良かった……」


モーリーは、アルジェントに答えると、目を瞑って、また寝息を立て始めた。



 



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