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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第2章 王立学院

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第25話 モーリーの不調

聖女とその背後にいる誰かが、地下都市を襲撃した

聖女は、世界の破滅を止めたかった

聖女は、モーリーをループさせた

何のために……?

 

 

「……リア、ルキリア!」


遠くから呼ぶ声で、俺は、ハッと顔を上げた。


「あっ……、おじいさま、おはようございます」


「ルキリア、考え事をしながら素振りか?」


じいちゃんは、呆れた顔で俺を見たが、訓練場の端に置かれているベンチに座ると、俺を手招きした。


「昨日、ルキリアが言ってたガーラン公爵家だが、諜報員の報告によると、聖エリス国には、過去も今もガーラン公爵家という名は、存在していない……」


(えっ、過去の記録にも無い?図書館に1冊だけ、ガーラン公爵家の名前があったのは……?)

 

「今日の午後に、地下都市に行って、地底族があの山に移住した頃の記録玉を見せてもらうが……。地底族が魔の森を出た理由を、今の族長が聞かされていないというのは、おかしいとは思わんか?」


「俺も、そう思いました。重要な出来事は、口伝でも伝えられていると思うのですが……。記録玉に、少しでも手掛かりになるようなものがあればいいんですが……」


(不自然だ……。意図的に、何かが消されてる……)


「情報が無いまま、推測ばかりするのは、解決の妨げになる。まずは情報を集めてからだ」


「そうですね……。あっ、おじいさまに見てもらいたいものがあるんです!」


俺はじいちゃんの前で、闇と火魔法を使った『複合魔法』を見せた。


「ほう……、複合魔法の障壁か。通常は、一度に1つの魔力しか練ることが出来んが、緻密な魔力操作が出来れば、可能なのか……」


(じいちゃんは、腕を組んで考えているけど、これ、そんなに、難しくなかったけどな……)


「あっ、あと……これはまだ誰にも言ってないんですが、俺、基本の6属性の他に、雷と氷魔法も使えました」


「雷と氷……。その属性が使える者は、この国では、数人しかいない……。学院の魔法の授業は、魔の森でしているんだったな。それなら、他の貴族に知られることもないだろう。魔の森で、思う存分、練習してこい」


じいちゃんは、そう言うと俺の背中をバシッと叩いて、早朝の特訓を始めた。


(じいちゃんの今日の特訓、いつもの3倍ぐらい厳しい……!)



その日の午後、俺たちは族長たちに会うためにブルーマウンテンの山中に転移してきた。


「せっかくのお休みの日に申し訳ありません」


(あれ?モーリーは?)


「あの……、モーリーは?」


「モーリーは、昨日から体調が悪いと言って寝込んでおります……。今まで、病気なんてしたことが無かったんですが……。明日の朝、王都に戻る時までに体調が良くなっているといいんですけれど……」


(モーリー、大丈夫かな……)


「明日までに体調が戻らなければ、セイに診察させよう。ところで、族長、記録玉はありましたか?」


「記録玉はありました。……しかし、中の記録は全て消えていました……」


「消えてる?」


(記録が消えてる……?聖エリス国のガーラン公爵家の記録も無い……。やっぱり、意図的に消されている気がする……。あっ……)


「おじいさま……」


「……儂も同じことを考えた」


(暗黒魔法……)


じいちゃんは、俺の目を見てうなずいた。


「族長、その件は儂の方でも調べてみます。まだモーリーが族長を継承するまでは時間がある……」


族長はじいちゃんにうなずくと、族長補佐に目を向けた。


「ありがとうございます。私もモーリーが作ったと思われる、残り2つの記録玉を探しに行くつもりです……」

 


その頃……、

地下都市の族長代理(モーリーの父)の執務室では……


大量に積み重なった、領収書や契約書の山を必死に捌いている族長代理の姿があった。


「親父!また俺に仕事丸投げかよ〜!今度は、俺が探しに行くって言ったのに、速攻で却下だよ〜」


「あら、あなた、まだ計算機叩いてるの?ルキリア君が作ってくれた、経理処理の魔道具で、あっという間に終わるわよ〜」


「えぇ〜!」



♢*♢*♢*♢*♢



次の日の朝、モーリーは辺境伯城の転移室に族長と一緒に来ていた。


「モーリー、体調は大丈夫なの?」


「あぁ、もう大丈夫だ!心配かけたな!」


(モーリー、顔色悪い……)


ばあちゃんが、つかつかとモーリーの前に立つと、ガシッとモーリーの顔を両手で挟み込んだ。


「ん〜、やはり、魔力が揺れている……」

 

そして、目をつむってモーリーの魔力を整え出した。


10秒ほど経った後、ばあちゃんは、パッと目を開けて、モーリーのほっぺたを両手でぺちっと叩いた。


「とりあえずは、大丈夫じゃ。我は魔族の治療はしたことがないが、先ほどのモーリーを診ると、魔力の流れがブレておった」


(魔力のブレ?あっ、もしかして、記録玉の鍵を開けるのに、ループ前に継承した力を使ったから……)


「あっ、身体が軽くなった!すごい!辺境伯夫人、ありがとうございます!」


「モーリー、魔力の揺れは治まったが、根本原因は別にあるぞえ。魔族を診察できる医者に診てもらった方がよい」


俺たちは、みんなに見送られて、王都のタウンハウスに転移した。


「ルキリア様、モーリー様、おはようございます」


オウルが、タウンハウスの転移室で俺たちを待っていた。


「おはよう!」


「おはよう、オウルさん」


「馬車の準備が出来ております。急がないと遅刻しますよ」


「「ありがとう!」」


俺たちは、急いで馬車に乗り込んだ。


「モーリー、大丈夫?」


「あぁ、辺境伯夫人のおかげで、だいぶ良くなった。魔力が揺れてたって言ってたな……」


「推測だけど、記録玉の鍵を開けた時に、ループ前に得た力を使ったからじゃないかな?」


「俺もそう思う……」


「これは、記録玉の特性を調べる必要があるな……。それに、俺、記録玉作った記憶無いのに、あちこちに飛んでたたみたいだからな……」


「そうだね……」



俺たちが急いで教室に入ると、すでに先生が教壇の前に立っていた。


「「あっ、おはようございます……」」


「二人とも、遅刻だぞ!」


「すみません……」


俺たちは、コソコソと席についた。

 


「今日は、学院長から許可をもらったから、この教室から竜人の滝まで直接転移する」


(今日の魔法授業は、何をするんだろう?)


竜人の滝に転移した俺たちは、今日もたくさんの視線を感じながら、まわりを見回した。


「今日も、たくさんの観客がいるようだな。今日は各自が持っている魔力の初級魔法を見せてもらう。まずは魔力で矢を作って、あの木に向かって飛ばしてみてくれ。今日は、アルジェントから」


「はい……」


アルジェントは、前回より密度の高い魔力玉を作り、それを矢の形に変えた。


パシュッ!


闇の魔力で作った矢は、木の幹深くまで突き刺さった。


「おっ、すごい威力だな!アルジェント、身体の力を抜いて、自然体で立ってみろ。そして、力を入れるのは、魔法を放つ時のみだ。もう一回、やってみろ」


「はい……」


アルジェントは、ゆっくり深呼吸をした後、的の木の幹をじっと見てから、手を構えた。


ゴオッ…シュンッ!


空気を裂く鋭い音が走った。そして、放った矢は、的の幹を突き抜けて、その後ろの木に突き刺さった。


(すごい!)


「あっ……」


矢を放ったアルジェントも、矢の威力に驚いていた。


「もっと訓練したら、後ろの木も突き抜けるよ。アルジェントは、全体的に力が入りすぎだ。その癖を直したら、もっと柔軟に魔法が使えるようになるだろう」


「……柔軟に……」


「あぁ、お前の魔力を最大限に活かすんだ。お前なら、すぐに出来るようになる」


「……最大限に……。先生、あ……ありがとうございます」


「次は、モーリー、土魔法を使ってやってみろ」


「土魔法で矢を作る……、あっ、あれ試してみよう!」


モーリーは、地面に両手をつけると、「でりゃああッ!!」と大きく声を上げて、地中からたぶん純度99.99%と思われる透明の鉱石をモコモコと地面に浮き上がらせた。


そしてそれを矢の形に整えると、「とぉりゃぁぁぁ!」とそれを木の的に飛ばした。


「「「「えっ……」」」」


その鉱石で出来た矢は、的を突き抜けると、2本、3本……5本の木を突き抜けて、6本目の木に突き刺さった。


「よし!5本貫通!」


先生は苦笑いしながら、「俺が土魔法を使えと言ったのが間違いだった……」と言って、モーリーが飛ばした矢を魔法で回収した。


「モーリー、この鉱石は何だ?」


「これは俺が最近見つけた、最強に魔力が乗る石なんです。超硬いのに、魔法で加工しやすい。あっ、ルキリア、これも売れそうかな?」


(モーリー……、たぶんそれは、値段が付けられないぐらい凄いものだよ……)


モーリーは、俺に振り返った瞬間、ガクッと膝を着いて地面に倒れこんだ。


「モーリー!」


先生は、モーリーの手を取ると、すぐに抱きかかえた。


「意識がない……。魔力の流れも不安定で熱が出てきている……。アルジェントとガイは、すぐに教室に転移。ルキリアは俺と一緒に、フルーラ辺境伯のタウンハウスへこのまま転移する!」


アルジェントとガイを先に転移させた後、先生は1通の魔信便を飛ばしてから、タウンハウスへ転移した。




「オウル!」


「ルキリア様、どうされま……、王弟殿下!」


「オウル、モーリーが倒れた。今からここに魔族を診れる医者が来る。到着したら、すぐにモーリーの部屋へ案内してくれ」


俺たちがモーリーの部屋へ行こうとした時、タウンハウスの玄関のチャイムが鳴った。


オウルが玄関のドアを開けると、そこには、長身で均整の取れた体格の、黒髪に紅目のシャーロット博士が立っていた。


(えっ、王立魔法薬研究所のシャーロット博士……?)







 

 

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