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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第2章 王立学院

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第22話 トリンプ先生 / 図書館での発見

 アルジェントは、朝からまとわりつく護衛にイラついていた。


「アルジェント様、私たちが学院で護衛につかなくてもいいんですか?ノクス様から常にそばにつくように言われているのですが……」


アルジェントは、小さくため息をつくと、苛立ちを隠すように、そばにいた2人に顔も向けずに馬車に乗り込んだ。


「マルコ、サム、お前たちは、あのフルーラ辺境伯の孫に顔を見られている……。俺の護衛に付いて、おまえたちがそばにいることがわかったら、私がノクス様から何か指示を受けていると勘付かれるだろう」


サムは、「あっ……」という表情をしてうつむいた。


サムは、なぜか『あの時』の記憶がはっきりと思い出せないでいた。


マルコとサムは、ノクスからアルジェントを監視するように指示を受けていたのだが、王都についてからのアルジェントは、2人が護衛に付くのを嫌がっていた。

 

アルジェントは、2人の指に嵌められた、ノクスの魔力が込められている指輪をチラッと見た。


(ノクス様は、私を信用してくれていないのか……)



♢*♢*♢*♢*♢

 


俺とモーリーが、学院に着いて教室に入ると、ガイは、すでに席についていた。


「「おはよう」」 


「ガイ、早いな!」


「おはよう……。俺は、寮から通ってるからな……」


ガイは、魔法理論の教科書を広げながら、俺たちに顔を向けた。


(彼は、寮で暮らしてるのか……。王宮から通ってるのかと思った……)


 

しばらくすると、アルジェントが教室に入ってきた。


「おっ、アル、おはよう」


「……おはよう」


(アルジェント君、なんか今朝は機嫌悪そうだな……)


「アル、お前、今日は朝からイラついてるな」


「……お前には関係ない」


アルジェントは、そういうと机に肘をついて目をつむった。




1、2時限目の「魔法理論」を教えてくれる先生が教室に入ってきた。


「お、おはようございます……。私が、このクラスの全ての座学の授業を担当するトリンプです……」


(えっ、座学は、この先生だけ?)


「えっ、先生が座学全部を担当するの?他の先生は?」


「あっ、いえ……、他の先生方は都合が悪く……」


「ふ~ん。まぁ、いいけど」


(トリンプ先生、書類を持つ手が、小刻みに震えている……)

 

「トリンプ先生、教科書、逆さまだよ」


モーリーがトリンプ先生に本を逆さまに持っていることを指摘すると、「ヒッ!」と小さく飛び上がった。


「先生、俺たちを怖がらなくていいよ。誰も先生に危害を加えようとは思ってないから。今はね……」


モーリーは、教壇で怯えている先生を見ると、ニヤリと笑った。


「モーリー!先生を怖がらせるなよ。先生、俺たち、魔力がちょっと多いだけで、他の生徒と変わりはありませんから、大丈夫ですよ」


ルキリアは、先生に恐怖心を与えないようにニッコリと微笑んだ。


「ルキリア、その満面の笑み、たぶん余計に先生を怖がらせてる」


(えぇ~!)


「じゅ、授業を始めます……」


トリンプ先生は、始終緊張した様子で、授業終わりのチャイムが鳴ると逃げるように教室を出て行った。



「今日の授業は、これで終わりか。午後は自習だったよな」


モーリーは、立ち上がると、そのまま腕を伸ばして体をほぐした。


「ルキリア、昼メシ食いに行こう。あっ、ガイとアルも一緒に行こうぜ。今日は、初日だし、この学院のカフェテリアのメニュー、みんなで見に行こう〜」


(たしかに……、初日だし、1人で行くのは勇気いるよね)


「……あぁ、俺も行くわ」


(おっ、ガイと話をするチャンスだ!)


アルは少し悩んでいたが、モーリーがパッと腕を絡めて、「アルも行こう!」と強引にみんなでカフェテリアに向かった。



カフェテリアに入ると、すでに大勢の生徒がトレイを持って列を成していた。


「このトレイに、食いたいものをのせていけばいいんだな!おっ、日替わり定食はAとBセットの2種類あるのか!」


モーリーは、俺がまわりを見回しているうちに、AとBセットの両方をトレイにのせていた……。


俺たちが空いていた窓際のテーブルに座ると、周りの視線が俺たちに集中しているのに気がついた。


「ルキリア、こんなの気にしてたら、メシの味が分からなくなるぜ」


「う、うん……」


「アル、ガイ、お前たち、瘴気のある場所って、入ったことあるか?」


ガイは、口に入れていたチキンを飲み込んだ。


「……俺はあるよ。ダリオン国で住んでた辺境伯領が、魔の森のそばだったから……。昔、あの森に彷徨い込んだことがある……」


「えぇ〜!迷わなかったのか?」


「父が……、探しに森に入ってきたよ……。怒られたけど……」


そう言うと、ガイはフォークを持っていた手を固く握った。


「アルは?」


「……ノクタリア国には、あちこちに瘴気だまりがある。瘴気を浴びた薬草を育てるために、瘴気だまりには、薬草園が作られている」


(瘴気を浴びた薬草!ばあちゃん、知ってるかな?)


興味深げにアルジェントの話を聞いていたガイは、フォークを置くと、モーリーに質問した。

 

「地下都市には、瘴気の多い場所ってあるのか?」


「ある。瘴気自体が固まって石になったような物が埋まってる場所があって、そのまわりにある土は瘴気を帯びてる」


(えっ……、地下都市にもそんな場所があるの!……ってことは……、俺だけ瘴気未経験……)


「俺、瘴気に触れたことない……」


ガイが、可哀想なものを見るような目で、俺を見た。

 

「俺が魔の森で彷徨った時、侍従が俺を追いかけて魔の森に入りかけたけど、1週間ぐらい寝込んだよ……。人族は瘴気の中では、呼吸が出来ないっていってた……」


モーリーが、「マジか……」と言いながら、俺を見た。


「そういえば、ルキリア、お前は純粋な人族なのか?」


(えっ……、俺って、人族じゃなかったの!?俺って、……何族?)


 

 

昼食を食べ終わった俺たちは、各自で自習しようということになり、カフェテリアで解散した。


「どうした?悩みごとか?」


「さっきの『何族?』ってやつ……。俺は何者なんだろう……」


モーリーは、俺の頭をペチっと叩いた。


「何者だっていいだろう?ルキリアはルキリアだ。先生は、お前が瘴気の影響を受けないって確信があるから、魔の森で授業をするんだと思うぜ」


「そうだね……。あっ、モーリー、俺、図書館に行ってくるよ」


「調べ物か?」


「次の休みに、地下都市に行って地底族の記録玉を見る前に、少し聖エリス国について調べておこうと思って……」


「あっ、俺も一緒に調べるよ」


俺とモーリーは、あちこち校内を散策しながら、図書館にたどり着いた。

 

「すごい図書館……」

 

「あぁ、すげーデカいな……」

 

王立学院の図書館は、3階建の立派な建物で、魔法に関しての蔵書数が半端ない、国でも有数の図書館だった。


図書館の大きさと広さに圧倒された俺たちは、入口で唖然としながら突っ立っていると、図書館の司書と思われる男性が声をかけてきた。

 

「こちらの図書館は、初めてですか?」


「はい、あ……、俺たち新入生です。これだけ広かったら、ここで本を探すのは大変ですね……」


その男性は、ふふふっと笑うと、図書館受付の横に備えてある小さい画面のついた魔道具を指差した。


「あの魔道具で、本を検索してください。本のある場所を表示してくれます」


(へぇー、それぞれの本に、チップのような物がついてる……。この仕組みなら、絶対に本が紛失しないな……)


俺たちは早速、『聖エリス国』と『聖女』についての本を探した。


そして、机の上に大量の本を積み上げて、2人で手分けして本の内容を確認していった。


「はぁ……、聖エリス国や聖女について詳しく書かれている本はないね。ほとんどが、聖属性魔法についての内容だよ……」


「こっちも無い……。この国は、聖エリス国と平和協定結んでるんだよな?隣国についての記述がほとんど無いって、おかしいだろ。もしかして、意図的に削られている……?」


(意図的に?もしそうなら、誰が、何のために?)


「でも1冊だけ、ある公爵家が、聖エリス国を建国する際に教団を支援したって書いてあるのを見つけた」


(教団を支援……?支援したってことは、今もその公爵家が聖エリス国にあるかもしれない?)


「ある公爵家……、名前は書いてる?」


「『ガーラン公爵家』って書いてある……」



 

魔の森での魔法授業初日、俺たち4人は、学院の門のところで、先生を待っていた。

 

「おはよう、今日は魔の森での授業初日だ。出発する前に、みんなに魔の森での注意事項だけ言っておく」


「あの、先生……。俺は瘴気のある場所に入るのは、初めてなんですけど……」


(みんなは、経験あるけど……、俺だけ瘴気は未経験だから……)


「大丈夫だ。魔の森に入る前に、全員の瘴気の耐性を魔道具で調べるから安心しろ」




魔の森のそばに転移した俺たちは、先生の魔道具で、それぞれの瘴気の耐性を調べた。


「みんな全く問題ないな。心配してたルキリアも、他の3人も、瘴気に対して全く影響を受けない。……もしかしたら、この森の中の方が、君たちにいい影響を与えるかもしれないな……」


(えっ、先生、どういうこと!)


「先生、それって、瘴気が俺たちにとって、良いものだっていうことですか?」


「あぁ、大昔、ほとんどの魔族は瘴気の濃いこの森に住んでいた。昔の魔族は、瘴気を身体に取り込んで、魔力に変換できたらしい。今の魔族は、だいぶ身体が進化してしまっているがな……」


(瘴気を魔力に変換!)


俺は、魔の森の入口で鬱蒼と茂る森を見上げた。

 

そして大きく深呼吸すると、俺の身体に瘴気がスーッと吸い込まれて、身体が浄化されるような、清々しいい、不思議な感じがした……。

 


♢*♢*♢*♢*♢

 

 

その頃……


「からっ……、辛ぁ〜い!族長、ここのカレーは辛すぎます」


「ん〜、このヨーグルトの飲み物は、爽やかですねぇ」


「族長、私の分も注文してください!」


「んっ?川に、『光るもの』が浮いてますね……」


「あれ?前に拾った光る玉と同じものに見えますが……?」


「あっ……、えぇ〜!族長が川に飛び込んだぁ!族長が泳いでる〜!?」



 








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