第三十七話
集まり出したメンバーを見て私は一つ声を掛けた。
「スノウさん、何人か引き連れてタカマガツハラの方を監視してもらってもいいですか?多分そろそろ動きがあると思うんです。」
「あぁ…例の件だよね。分かった。黒部隊のショミーとキララに協力要請してあるよ。人が足りないから琉歌達と社畜軍連れてく。モハメドとヤンスは先に行ってるんだっけ?」
掲示板で何処かのお馬鹿さんが襲撃予告をして来たのだ。スノウさんには迎撃と防衛を頼んだ。
最高戦力のサクヤちゃんはイベント会場にお留守番。私の応援をしてくれるみたい。
「ドーンさんと舞侍さんは置いて行って下さいね。アカネさんはすぐ『ミヤコ』に向かうんでしたっけ?」
「そだよー。だからデュオとソロ以外は道中に使うつもりー。こっちはヤエモンさんとジンゴさんと動くから心配しないでー。」
「念の為ユイさんとソレビさんを連れて行ってください。多分イベント戦がある筈です。」
「にゃははー。一応対策は考えてるけど、心配性なボスの命令だから仕方ないにゃー。ほら二人とも行くよー!」
「フフーフ…遂にボォクの出番かい?任せ給え!」
「えー。ユイちゃん様暴れたりないんですけど…あ、これから暴れるのか。なら仕方ないか…行ってくるわ。」
スノウさんとアカネさんにはとある目的で動いてもらってる。
イベント期間中に襲撃を企てる掲示板をモハメドさんが発見し、確度の高い情報だと判断された。
朝からモハメドさんとヤンスさんはタカマガツハラに潜っていて工作兵らしきプレイヤーを数人捕縛している。
スノウさんにはそちらの応援を頼んだ。
アカネさんはまた別件だけど。
「まさかエクストラジョブのヒントがミヤコにあるなんてねー。本当に私がもらって良いのー?」
「アカネさんにはお世話になってますからね。そのくらいの役得なら勿論構いませんよ。」
それは今日のログイン待機のマリーさんとの会話がきっかけだった。
『ハルカ、いらっしゃい!今日も元気にこちらの世界へ遊びに来てくれたのね。』
「はい、マリーさんに会うのも毎日楽しみになってて。」
『嬉しい事を言ってくれるじゃない、管理者冥利に尽きるわね。貴方の気持ちに報いたいわ。何か贈り物をしたいわね。…そうだ。ハルカだけに特別な情報を教えてあげる。タカマガツハラのミヤコに行きなさい。この紙をアイテムストレージに入れておくわね。エクストラジョブ獲得のヒントを書き込んでおいたわ。もし良かったら有効的に使いなさい。』
「え?でも私は既にエクストラを持ってて…」
『ふふ…!エクストラジョブを獲得出来るのは一つだけだなんて誰が言ったのかしら。』
「もしかして複数のジョブに就けるんですか?」
『ええ。その人の魂の資質によるけど、ハルカは私の見立てでは…三つかしら。あ、今の情報は他の人には内緒だからね?けど、ハルカが獲得するも仲間に与えるも自由よ。精進なさい。』
「ありがとうございます!頑張りますね!」
と言うような会話があった。
ストレージから取り出した紙を確認する。ヒントというかほぼ答えな情報を吟味し、刀系統のジョブっぽいのでアカネさんに丸投げした次第である。
だってジョブ名に刀って入ってるし。
回想終了…で、今に至る。
「それにしても《夜刀神》と来たか…どう見ても近接戦闘タイプだよねー。」
「字面的には明らかにそうですよね。しかも前提が魔法無しのレベル100、しかも四次職以上で侍系統のみなんて誰が就けるんでしょう。」
「にゃははー。その条件に当てはまっちゃったのが私なんだけどねー。と言うことで行ってきます!」
「アカネだけズルい…私の所のサポートAIは何もヒントくれない。私もエクストラジョブ欲しい。」
「あー、スノウさんの所のAIは…リョフでしたっけ。三國志と関係あるんですかねー。」
「そうみたい。女体化してるけど頭から触覚生えてて大っきい薙刀みたいの持ってる。デフォルメされた真っ赤なユニコーンもいる。偉そうだし、上から目線で武勇伝語ってくる。会話が合わなくて私が正論で応えると泣いて勝手に手続き進めちゃうし。」
ログインサポートAIは何種類か別れているらしく、スノウさんとこのリョフや私の所のマリーさんは珍しい部類っぽい。
その中で多いのが男性型で大抵ヒデヨシやらノブナガ、イエヤスという三英傑の名前が付けられた猿、鷹、狸がデフォルメされた獣人の姿らしい。
そういえばセイさんってめちゃめちゃレアナビゲーターなのでは?
掲示板で確認したが誰も存在を知らない様だ。
タカマガツハラに縁のある人だってマリーさんが言ってたけど、いつ、何処で会えるのかも分からない。
もうすぐ会えるみたいな事も話していたような…
話を戻そう。
マリーさんやリョフの情報を私やスノウさんが掲示板に流したのが三日ほど前。
掲示板はかなり荒れた。
通称AIガチャと呼ばれるその行動はアカウントを削除しても変わることが無いらしく、三英傑がハズレなんて言う愚か者が掲示板では沸いている。
当然、私はマリーさんで良かった。
めっちゃ可愛いし、優しいからねー。
褒めると耳を真っ赤にしてはにかむのはとてつもなく可愛い。
スクショをいっぱい撮った。
掲示板に貼ったら阿鼻叫喚だった。
深雪さんと大笑いして楽しんだ。
「スノウさん、そろそろ時間ですよ。モハさんが救援を!って同盟チャットで騒いでます。」
「むぅ…仕方ないから行ってくる。防衛頑張ってくるから待ってて。」
「はい、行ってらっしゃい。私達もそろそろ試合ですよー。行きましょう。初戦からタカマガツハラの強豪黒鍬衆ですからね。気合い入れて臨まないと!」
「おうよ!ワシも頑張るぜ!」
「あー面倒くせえ…まぁボスの方針には口出さねえけどよ…」
「フフフ…今日もボクのマジックで観客を魅了するとしよう。」
「これ…俺がリーダーの意味ってあるのか?…考えても無駄だな。頑張るさ。」
「皆さんやる気満々ですね!では行きましょう!」
突っ込むのも面倒なのでそのまま流す。
けどこれくらいで私達は丁度いいのだろう。
所詮は烏合の衆、所詮はゲームなのだ。
だったら楽しんだ者勝ちである。
ならば全力で楽しむべきだろう。
さぁ、始めようか。
私達のショータイムだ!




