第二十九話
止まっていたサクヤちゃんが動き出す。
「月光結界・地乱閃!」
いつもの地閃なら一本の緑の半円の風の刃が飛んでくるだけなのに対して地乱閃はそれが十枚飛んでくる。
慌てず地を蹴り空に逃れると私はスキルを発動する。
「闇を誘う風、暗雲招来。〈因子結束〉・闇・影。モード=闇夜乃観測者…行くよ、サクヤちゃん。ウルト!マスターオーダー…暗黒決闘陣!」
空から自由落下する際に私はウルトを発動した。
黒い膜が球状に私とサクヤちゃんを包み込んだ。
「ハルカお姉様?ここは…」
「ごめんね、サクヤちゃん。勝たせて貰うよ…?」
ここは私の世界、私の意思がそのまま現実となる場所だ。
一対一、絶対必中の必殺技を当てる為の場所だ。
何処ぞの漫画の設定を丸パ…発想を拝借して作ったウルトである。
この中では私の攻撃は必ず当たる。
サクヤちゃんには悪いけど、早々に試合を終わらせよう。
深々と台座に突き刺さった一振の刀。
正邪を屠る為のただ断ち切るという一念のみを込められて作った妖刀ムラサメ。
これを左手で掴み引き抜く。
抵抗はまるでなくどうぞお好きに、とでも言うかの様に私の意思に従って台座から引き抜かれた。
羽根の様に軽く私の思い通りに動かせる。
「ここは私の世界。私の意思を汲み、私の思うがままにあり続ける。まぁたった一分だけなんだけどね。さぁ…始めようか?」
ムラサメが揺れると同時にサクヤちゃんの右腕が吹き飛ぶ。
刃の長さは自由自在であり、意思に従って動き出す。
何処を切りたい、どう動きたいかを頭の中で計算しないといけないんだけど、脳が大容量の演算が許容出来るのが一分だ。
時間制限を付けないと効能が下がっちゃうんだよね。
なのでこのウルトは一分を過ぎれば私の負けとなる。というか動けなくなるのだ。
残り四十秒。
妙に落ち着いているサクヤちゃんは吹き飛んだ右腕を掴み、回復をして腕は繋がっていく。
今は私の暗雲招来で夜となっていて月も出ている。
サクヤちゃんの強化になってるんだけど、それでも発動条件として相手に有利な状態でないとそもそも発動できないのだから仕方ない。
「ハルカお姉様、流石ですわ。これがユニークジョブを超えたジョブ…エクストラジョブですか。私も早くお姉様の域に達したいものです。」
「フフ…サクヤちゃんならきっと私の上まで行けるよ。」
和やかに話しているけど、動きは殺伐としている。
私の振るムラサメはサクヤちゃんの身体を段々と削っていき回復も追いつかなくなっている。
サクヤちゃんは気付いたのだろう。
自分が負ける事を。
それでも無邪気に笑みを浮かべており、今この瞬間を楽しんでいる。サクヤちゃんが私に問い掛けた。
「あはははは!ねぇ、ハルカお姉様!私、今すっごく楽しいんです。ハルカお姉様はどうですか?」
「うん、私も楽しいよ。サクヤちゃん強すぎるから対策しなくちゃ勝てないからここまで徹底的にやっちゃったけど次は勝てるか分からないからね。……ありがとう、サクヤちゃん。」
残り五秒。
「バイカーシュート。」
「月光結界…秘術・月下流星!!」
サクヤちゃんの胸に吸い込まれた蹴りがサクヤちゃんの身体を粒子へと帰る。
同時に発動されたサクヤちゃんの技で空から流星群が振り乱れる。
黒い膜がシャボン玉の様に弾け割れるともっセルさんが肩で息を切らしながらも、私に向けてピースサインを送っているのを見届けて私は粒子化した。
あぁ…楽しかった…!




