第二十八話
Side サクヤ
私は気付いたらいつも一人ぼっちだった。
他の子より知育力が高かったのか、同年代と遊んでいるのが馬鹿馬鹿しくて、最初は集まっていた子達も段々と私の周りから離れていった。
私の事を理解してくれたのは一回り上の姉、華久耶姉さんだけだった。
けど私が9歳の誕生日を迎えた真冬の雪が降る日に姉さんは亡くなった。
どうしようもない現実と喧嘩が増え、のちに離婚した両親、子供特有の反抗期も相まって私は非行に走った。
そんな私がアイドルになったのは2年前、世麗那と深雪との出会いがきっかけだ。
いつもの様に中学校をサボり、繁華街で知り合った似たような境遇の不良達と傷の舐め合いをしている日々。
ヒップホップを垂れ流しながらショーウィンドウの前でダンスを狂った様に踊っていた。
華久耶姉さんが亡くなってから灰色だった世界に突然現れた世麗那と深雪の二人は私の運動神経を一瞬で見抜き、あれよあれよと言う間に私はステージの上に仮面を付けて立っていた。
地下アイドル、ペルソナガールズの2期メンバーとしての新たな人生は良くも悪くも私を変えていた。
あっという間の2年間が過ぎ去り、プロデューサーが飛び、ペルソナガールズは解散。
それから暫く経って、心にぽっかり穴が空いたような日々が始まった。またやさぐれ始めた私は姉さんが亡くなった日のような寒い真冬の日に、運命の人に出会った。
春風 美空
後から知ったその名前を私は胸に刻み付けた。
吸い込まれそうな青空の様な切れ長の青い瞳に紫掛かった黒髪、透き通る様な白い肌、高い鼻に小ぶりな血色の良い唇。
どれ一つを取っても国の文化遺産と比較も出来ないほどの調和が取れた美術品。それが私の評価だ。
私の1つ上の先輩で誘拐されそうになった私を助け出してくれた命の恩人。
この人の為に生きよう、と派手に染めた髪を黒に戻し、私は規則正しく生活する様になった。
人に馴染めないけど、高校に上がり美空お姉様と再開してからはあの日のお礼も言えたし、一緒にご飯を食べてくれたり、一緒に登下校したり、と毎日が色づき始めた。
誰よりも気高く冷ややかな瞳で有象無象を睨みつけるかのように退屈そうな学生生活を続けていると聞く。
付いた渾名が冷姫‥
心ない者達がそう呼んでいると知った。
だが所詮はただの噂。
実際の美空お姉様は真逆で温かくて、優しくて、お茶目な太陽の様な存在だ。
気付けばやさぐれていた頃の自分を美空お姉様に知られない様に、と矮小な羞恥心に震えていた日々だったけど、自分から打ち明けても美空お姉様は私を抱き締め、一言辛かったね、と優しく頭を撫でてくれた。
ささくれだった心が癒されていく不思議な感覚だった。
優しかった華久耶姉さんをふと思い出した。
あの日誓った美空お姉様に人生を捧げるという誓いを私は改めて固めた。
毎日一緒にゲームを遊ぶ時間が何よりも楽しく愛おしい。
そして今現在、私は美空お姉様と対峙している。
何度も戦って私が勝ち越しているのだけど、今日の美空お姉様は纏っている雰囲気が一味違う。
気合を入れて臨まないと。




