第六十三話
「そういえばハルナちゃんは回復術しか使えないんだっけ?」
「むぅ?多少は精霊の力を借りて妖術で攻撃する事は出来るがあまり得意じゃないのう…叔父上が言うにはわらわは護りの力に優れておるらしい。」
「あー、師匠が言うならその通りなんだろうね。ーーー多少は魔ほ…妖術がつかえるんだよね?ーーそれじゃ…ゴニョゴニョ」
私は思い付いた作戦をハルナちゃんに耳打ちする。
これで上手く行けばいいんだけど…
「うむ、それならわらわでも出来そうなのじゃ。任せて欲しい!」
「うん、じゃあ任せるよ?私が前に出るから背中を守ってね。」
ふと、ステータス画面のパーティ欄に視線を移すとハルナちゃんのレベル表記が101 光炎の神子 と表示されていた。
思わず二度見してしまう。
え、ちょっ…少し前までレベル60代だったよね?
…もしかして師匠の仕業?!
「ハルナちゃん…この部隊表示なんだけど…もしかしてエクストラジョブ…じゃなくて、固有職業になってる?」
「うむ。カンザブロウ叔父上、ゼンイチロウ叔父上と父上とヤエモン、ジンゴと六人で[魔「ちょっと音声切るね」猪の宴]を周回?してたのじゃ!」
あぁ…やっぱり。
慌てて音声を切ったのでコメントがざわついてる。
ハルナちゃんがカンストしているのも聞かれてしまった。
ハルナちゃん、うっかり大事な情報流しちゃうから相談する時は音声オフか配信切らないとダメだね。
ハルナちゃんがエクストラジョブになってるって事は当然師匠やソウジロウさんもなってるよね?
もしかしてヤエモンさん達も?
「いい?ハルナちゃん、あまりそういう重要な情報は配信してる時に言っちゃダメだよ?もしかしたらフジミヤに敵対してる人が聞いてるかも知れないからね?」
「むむ…それは大変なのじゃ…!これからは気を付けるのじゃ!」
「うん。もう少ししたら同盟の人数を増やして一般にも宴を解放するつもりだからそれまでの我慢だよ。」
「分かったのじゃ。そうじゃ、ハルカ殿。此度のお祭りで何か良い結果を残せたらご褒美が欲しいのじゃ!」
「ご褒美?分かった、考えとくね。それじゃ配信戻すよ?」
「うむ!いつでも良いぞ!」
ご機嫌なハルナちゃんを連れ最初の試合へ臨む。
お相手は前衛二人、ハルナちゃんのカチカチ結界を抜けず、スタミナが切れた所を私がポイっと場外まで投げてサクッと終了。
登録人数が多いのか全部で十二戦戦うらしく試合ペースは早めで二戦目三戦目も似たような試合結果で終わる。
続いて四戦目、琉歌さんと紗月さんコンビとの試合だ。
「カーッ!大将との試合かよ…!運が悪いな、紗月ィ。」
「それは琉歌さんもでしょ。ハルカちゃん、配信見てたけどハルナちゃんもエクストラジョブを取得してるって本当?」
「えぇ、そうですね。見てたなら分かると思うんですけど、もうね…カッチカチですよ?」
「うむ、わらわの結界は誰も突破出来てないのじゃ!」
ハルナちゃんのドヤ顔をカメラに収めつつ、試合が始まる。
先手を譲るが同じ様な試合結果が続いた為マンネリ化を防ぐ為に少し細工を施す。
「ハルナちゃん、さっき話してたあれ。お願い出来る?」
「うむ、任せよ。水と土の精霊よ我に力を貸し与え給え…泥濘地生成。」
「おわッ」「キャッ」
「はいはーい、残念賞です。景品は…バイカーシュート!」
という感じで試合は終了。サクサク行きましょう。
五戦目から十戦目までも骨のある相手とは当たらなかった。
続いて十一戦目。
相手はアーハーとステラちゃん。
まさか同じ組に振分けられるとは思っても居なかった。
昨日の友は今日の敵とも言うので…あれ?
逆だっけ?まぁ、良いや。
「ハルカさん!今日こそは僕のこの熱き思いを受け取ってほしい!」
「こら!ハルカちゃん配信中だし変な事言わないの。あと普通にキモい…ハルカちゃんごめんね?良ければ三人でアーハー倒す?」
「えぇ…普通にドン引きだけど、試合は楽しむよ。ステラちゃんも本気で来て!」
「クククッ…全力で来るが良いのじゃ!魔王ハルカとその伴侶である、光炎の神子ハルナ・フジミヤが相手になるのじゃ!」
あぁ…八戦目、九戦目の相手が私を魔王と呼ぶのを聞いて厨二病お年頃のハルナちゃんが目を輝かせていたのを思い出す。
でも凄く楽しそうだからいっか。
試合が開始するとアーハーが此方に駆けて来る。
ハルナちゃんは泥沼の陣地を形成するもトッププレイヤーの更に上澄みであるアーハーは何の苦労も無く私達の前に来た。
「ハルカさん!今日こそ貴方を倒してみせる!」
「しつこい男は嫌われるよ?」
「お主…わらわのハルカ殿を手籠めにするつもりじゃな?かちんと来たのじゃ…!〈海陣盾〉…お帰りはあちらなのじゃ!」
ハルナちゃんがスキル〈海陣盾〉を発動するとアーハーの目の前に水が球体で九つ浮かび上がる。
その一つが弾けるとアーハーは場外へと押し出されるほどの大量の海水を浴びた。
球体一つだけでこの威力…〈海陣盾〉強過ぎない?
「ガボボ…ヴェ…ボベデボ、ボグバ、バビバベバビ(それでも僕は諦めない)…!」
「ククク…痺れるのじゃ!〈雷矢〉!」
海水に濡れたアーハーとステラちゃんに雷の矢が降り注ぐ。
アーハーはHPが全損し、ステラちゃんは耐えるに耐え兼ねたのか、棄権をした。
・アーハーかわいそ
・出落ち乙
・幾らトッププレイヤーでもエクストラジョブコンビにゃ勝てんやろ
ハルナちゃん恐るべし…!
怒らせるとこんな苛烈になるなんて知らなかった。
その後、十二戦目を見ていたトップスターのジオルク氏とその相方さんは棄権を発表。
決勝トーナメントに無事進出を果たした。
「んー!いっぱい暴れたのじゃ!最後は棄権されて消化不良じゃがわらわは楽しかったのじゃ!ハルカ殿はどうであろうか?」
「うん、ハルナちゃんと一緒だったから楽しかったよ。また明日も決勝トーナメント頑張ろうね!」
「うむ。…ハルカ殿は恥ずかしい台詞もスラスラ出せてズルいのじゃ…!わらわもハルカ殿を照れさせたいのじゃ…!」
プクーと頬を膨らませたハルナちゃん。
何この可愛い生き物。




