第五十六話
そんな事を考えていると二回戦が始まる。
あ、運営からメールが来た。
移動待機宜しくとの事らしい。
ポテトナイツねー。
んー、試合は見てなかったけどどうやらリンネさんところの下部組織らしい。
たまたまそんな話をリンネさんから今朝聞いたんだけどね。
リーダーやってる人の名前がクレインロールさんって人でリアルの友人らしい。
大学のサークルでの戦友って言ってたけど何の戦友なんだろ?
モデル関係か元地下アイドルなのかな?いや…もしかして?
「ねぇ二人とも。ポテトナイツについて何か情報ある?」
「私とアーハーはカルテットの決勝トーナメントの一戦目で戦いましたけど動きは悪くありませんね。」
「固有は最後まで使ってませんでしたね。登録メンバーの氷織さんって人がやけに僕の事ねちっこく追いかけてきたんですけど、反撃もせずに大人しく倒れたのが不思議で印象深かったです。」
「あー…なんかイケメン、年下、疑似DV、新作ネタ…とか何とか呟いてましたね…」
「ちょっとお近付きになりたくな…あーそういうことか…」
あ…察し。
確定しました…リンネさんの戦友…じゃなくて同行の士ってことだよね。
私知ってるんだよね。
リンネさん…初音さんが隠してる秘密。
オトナ向けの同人誌を書いてるっぽくて良く私とスノウさんの会話を横でスマホを弄りながら聞いてるんだよね。
多分ネタ帳代わりにメモかメールの未送信機能を使って何か書き溜めてるみたい。
前にスマホが放置されてて
深雪、美空に抱き着く→美空、嫌がりながらも本心ではなさそう→百合…キマシ…みたいな不穏なワードが書いてあったの。
それに毬萌さんに呼ばれて一緒にゲームして帰る時、たまたま帰ってきた初音さんがそそくさと持っていた袋を自分の部屋に急いで隠そうとして逆に、底が抜けてぶち撒けちゃってR18な内容の本が廊下に散乱しちゃったんだけど内容がゴブリンに襲われる女騎士だったのを私は覚えている。
「み、見るな!美空くん頼む!見ないでくれ…あ…やばい…私の内側が美空くんに知られ…クッ、殺せ…!」
「いやいや、そんな物騒な事しませんよ。」
なんてやり取りをした覚えがある。
それにネームだっけ?
荒い絵の描いた書類数枚とインク壺、筆が一緒に散乱してたから何かしら書いてるっぽい。
もしかしたら同人誌の戦友という意味で言葉を使ったのでは?と私は考え着いてしまった。
まぁ大体今の会話で察してしまったので、アーハーを前に出しておけばお姉様方が喜ぶだろうから私とステラちゃんは危なくなるまで観戦しとこっと。
アーハーもステラちゃんも大丈夫と言っていたので任せることにした。
「んじゃアーハーあと宜しくねー。一応後ろに居るし三人相手は無理だって判断したら援護するから。」
「アキ、ハルカちゃんに良い所見せるチャンスだよ!踏ん張りなさい!」
「……ふぉおおおおおああ!!!」
奇声を上げながら飛び出したアーハー。
いや、まだ試合も始まってないし、前の試合決着着いてないからね?!
慌ててステラちゃんがアーハーを取り押さえ大事には至らなかった。
試合中に奇声を上げて闖入する人チームメンバーなんて嫌だよ私。
何とか昂ぶったアーハーを(拳で)沈めて移動を開始する。
ポテトナイツとの試合開始が間もなくとなった。
『おぉっとー!ばいおれんすうぃっちーず。の勝利です!これ程の番狂わせがかつて有ったでしょうか!惜しくも敗した大きな拍手で讃えましょう。第二試合 火花VSポテトナイツの開始はこの後五分後を予定しています。此処で協賛してくれた会社の紹介ーー』
おっ、漸く私達の出番だね。
さて、作戦の整理をしようかな。アーハーに暴れて貰うとして私とステラちゃんは後方待機、場合によっては援護と近接って所かな。
公式アーカイブを確認した所、ポテトナイツのメンバーはクレインロールさん、氷織さん、セツナさんの三名。
騎士、錬金術士、罠士の構成でクレインロールさんが防いで氷織さんがデバフとバフを担当し、セツナさんが罠で仕留めるといった戦い方をしていた。
アーハーには氷織さんとクレインロールさんを対処してもらって私はセツナさんを注視しておこう。
場合によってはステラちゃんに氷織さんを仕留めて貰う事も視野に入れておかないとね。
整理した作戦をステラちゃん達と共有し、ステージに上がる。
歓声を受け、手を上げると更に大きな歓声が上がった。
そういえばあまり意識してなかったけど、目立つのはあまり得意ではないけど、学校でも全校生徒の前で表彰されるからそれとあまり変わらないか。
観客の規模が違うだけ、大丈夫。
いつも通り私は観客の求めるHALCAを演じよう。
「貴方がハルカさんですね。私はクレインロール。リンネの屈殺騎士団の下部組織、ポテトナイツを率いています。」
「ハルカです。お噂は予々(かねがね)聞いてますよ。リンネさんのご同輩だとか。」
「まぁ、そんな感じですね。リンネは志を共にする同志で日々助けられています。そんなリンネが一目置く貴方とこうして刃を交える機会に恵まれ光栄です。」
「ええ、お互い楽しみましょう。」
私とクレインロールさんが握手を交わす横で氷織さんがアーハーに何事かを囁いて、セツナさんがそれを諌めて…と言った様な一幕が起きていたが、見なかった事にした。
アーハーは臨戦体勢なのか、威嚇する猫のように四つん這いで毛を逆立てているような感じだ。
あくまで幻覚だけどね。
やる気は充分、リアルの体調も万全。
いつでも来い!
『試合…開始!!』




