第4話
――次の日。
「ん……」
窓から差し込む朝日で目が覚めた。ずいぶん長い時間眠ってしまった。疲れていたうえに、私が5人くらい優に寝られるベッドもあり得ないほどふかふかで心地よすぎた。もう少し布団の中で頭が覚醒するのを待とう。そう思って、仰向けから右に寝返りを打つとそこにはエイデンがいた。
「!?」
左側からも人の体温を感じる。確認すると、やはりアルバートがいた。
慌てて飛び起きて、とても広い部屋の隅まで離れる。一気に寝起き直後のふわふわとした意識が飛んでいった。
推しが隣で寝てる状況ってなに!? 朝から心臓に悪すぎる……!
胸に手を当てて急上昇した心拍をなだめていると、エイデンが起きたようでこちらに気付いた。
「んー……リン、起きたの……?」
「あはは……なんで、ここにいるんですか……」
「リンは大事だから、僕たちが見守っておかなきゃだからね」
「は?」
大事って昨日会ったばかりの私に何を言っているんだろう。というか、ゲームのエイデンはこんな性格じゃなかったような……。明るい性格で、爽やかな王道キャラって感じじゃなかったっけ。なんか別のゲームにこんな感じのヤンデレキャラいた気がする。
そんなことを考えていると、いきなり誰かに抱き締められた。
「!?」
「……大切なリン」
「アルバート!? いつの間に! じゃなくて、離してくださいっ」
先ほどまで寝ていたはずのアルバートが、いつの間にか後ろに立っていた。突然の出来事に、慌ててアルバートの腕から離れる。簡単に離してくれてよかった。アルバートの方に向くと、どこか満足気な表情をしていた。エイデン同様、アルバートもゲームとは少し違った性格をしているようだった。こんなに表情豊かじゃなかったはず……。
私が必死で集めたアルバートルートのスチルよりも、今のバックハグは乙女ゲームをしていた。
「リンのためにいっぱいドレス用意したんだ。寝てる間に運んでもらったけど……あった! リンはどれがいい?」
「わっ……ほんとにいっぱいある……」
煌びやかな装飾をしたものから落ち着いたカラーのものまで、古今東西のドレスがクローゼットに入っていた。どれがいいと言われても、この世界のドレスの常識とか知らない。粗相があるといけないから――。
「……二人は、どれがいいですか?」
「! 僕はこれ!」
「……俺も」
嬉しそうに一着のドレスを指さすエイデンと、同じドレスを選ぶアルバート。
息が合っていて、思わず小さな笑みがこぼれる。
「さすが双子、好みは一緒なのね。あ、でも昨日のケーキは違ったっけ」
「うん、だからリンのことも――」
「失礼致しま……! 申し訳ありません! そろそろお目覚めかと思い……」
エイデンの言葉を遮って部屋の扉が開く。私専属のメイドさんが私の世話をしに来てくれたみたいだ。
「大丈夫ですよ。……えっと、着替えるので、二人は……」
「……エイデン」
「分かってるよ。じゃあ、朝食あとで一緒に食べようね」
そう言って二人は部屋から去っていった。二人とも、いつから私の部屋にいたんだろう……。変な寝言とか言ってないといいけど。
「どちらのドレスにいたしますか?」
「あ、えっと、これで」
「かしこまりました、リン様にお似合いになりそうですね!」
ドレスを着て髪の毛もセットしてもらって、部屋の扉を開けて廊下に出るとそこにはエイデンとアルバートが立っていた。朝食を食べよう、と言っていたから、ダイニング的な部屋にいるんだと思っていた。
「うん! やっぱり、リンにぴったり!」
「……かわいい」
「あ、ありがとう……?」
昨日外でこの身体の顔を確認した時、確かにかわいらしい顔をしていた。私に言われているようで言われてない不思議な状況になんと答えればいいか分からなかったから、一応お礼を言っておいた。
二人に連れられて朝食の用意がされてある部屋へと向かう。相も変わらず私を間に挟んでいた。
昨日は早く寝てしまったからケーキやお菓子しか口にできなかったが、ごはんもそれは素晴らしい物だった。ここ最近の私の朝食と言えばシリアルとビタミンサプリだったから、余計に感動してしまった。欲を言えば、日本人だから白米が食べたかったところだけど、この世界にはなさそうでそれだけは少し残念。
「リン。今日は、昨日できなかったから家の中を案内するよ。ずっとここに住むだろうし、いろいろ必要になる部屋もあるし」
「え、ずっと? いや、そんなには……」
「……ずっと、俺たちと一緒、だ」
「っ!」
アルバートはそう言って私の左手を強く優しく握りしめる。思わず固まってしまっていると、エイデンが私の右腕に自身の腕を絡ませてきた。この二人、作中でこんなにスキンシップ多かったっけ。私の知っている『そらえん』ではないことにひどく戸惑う。二人はそんな私にお構いなしに、屋敷案内をスタートさせていた。




