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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第四章 再開するおばさん編
107/361

あるある106 「誓約書にサインをさせがち」

その後、俺達がどうなったかは言うまでもない。

セリーヌが放った『ホーリーランス』が直撃し、白亜の塔もろとも粉砕されたのだ。

俺とアンナは道路で干からびているカエルのように息を絶ち――。


「ハアハアハア。これは私が預かっておきますわ」


セリーヌは息絶えている俺達に目もくれず、大きく肩で息をしながら残骸の中に落ちていたブルー・アイを手にとる。

幾何学的に削り取られた多面体のブルー・アイは光を反射し、幾つもの煌めきを生み出す。

海よりも深く、空よりも青い蒼紺色は神秘的で、この世に二つとない輝きを見せている。

大きさは30センチほどで重さは3キロぐらむほどだろうか、ずっしりと重みがあって宝玉貴重さを感じさせるものだった。


「おい、セリーヌ。カイト達を回復した方がいいんじゃないか?あそこでくたばっているぞ」

「いいんです!二度と浮気させないためのお仕置きですから!」


セリーヌは肩を怒らせながらくたばっている俺を蔑むように睨みつける。

その様子に唖然にとられていたミゼルだったが、女の勘を閃かせエレンに問いかけた。


「何かあったのか?」

「それはおいおい話してやるよ。おい、お前ら手を貸せ。カイト達を運ぶぞ」


言葉を濁してその場をやり過ごすとエレンはゴウ達を使って俺とアンナを運び出した。





俺とアンナがこの世を去ってからどのくらいの時間が経ったろう。

セリーヌは今だに並べられている俺達の遺体を睨みつけながら、どうしてやろうか思案を巡らせている。

エレンやミゼルからも「『蘇生』してやれ」と言葉がかかったが、それすら気に留めていない。

『蘇生』は時間が経てば経つほど『蘇生』出来る確率も下がって行くもの。

だから、確実に生きかえらせるならば早い方がいいのだ。

だけど、今のセリーヌの頭の中には俺が浮気をしないように出来るかだけしかない。


「このままだとカイトのやつ、やばいんじゃないか?コバエも飛び回っているようだし」

「体が腐ったらゾンビになってしまいますよ」

「ゾンビになったら冒険は続けられなくなりますね」

「逆に冒険者達に狩られる立場になるからな」


ゴウ、ルミウス三世、マークニットの3人は半ば諦め顔で俺の行末を心配している。

セリーヌがここまで頭の固い奴なのだと言うことは誰も予想していなかった。

と言うよりも女の嫉妬がこんなにも恐ろしい事態を招くなんてことは知る由もなかったのだ。

ゴウ達はきっと心の中でこう思っていただろう。

「自分じゃなくてよかった」と。


「セリーヌ。いい加減にしろ。このままだと本当にゾンビになってしまうだろう」

「エレンさんは黙っててください。カイトさんにはお仕置きが必要なんです」

「なら、アンナだけでも生き返らせてやれ。アンナはただの被害者なんだから」


エレンは真剣な眼差して説得するように説き伏せるとセリーヌは俯き黙り込む。

そしてしばしの沈黙の後、何か思いついたのかムクリと顔を上げるとカイト達の遺体に向けて両手を翳した。

セリーヌが『蘇生魔法』の詠唱に入るとカイト達を取り囲むように白金色の魔法陣が浮かび上がる。

キラキラと細かい粒子を漂わせながら煌々しく、そして荘厳に輝く。

これから神でも現れるかのような凛とした空気が漂っていた。


セリーヌは細かな粒子を手で掬いアンナの胸元にそっと押し当てる。

すると細かな粒子はアンナの体に吸い込まれて消えて行った。

カイトにも同じように施すと『蘇生魔法』の詠唱を終えた。


「う、うん……」


息を吹き返したアンナは長い夢から覚めた時のような顔をしている。

一体何が起こったのか理解できていないようできょとんとしていた。


「おい、アンナ。大丈夫か!」

「何、エレン?ふぁー。よく眠ったわ」

「体は大丈夫か?」

「大丈夫も何も体が凝っちゃって寝目覚めは悪いけどね」


心配するエレン達を横目にアンナは気怠そうに肩を回しはじめる。

腰を捻ったり両手を伸ばして伸び上がってみたりと軽めの体操をすませる。

そしてまだ横になっていた俺に視線を向けてから何かを思い出したように叫んだ。


「あーっ!そう言えばカイトに変態行為をされた途中だったんだわ!ちょっと、起きなさいよカイト。いつまで眠っているつもり!」


アンナは地面で死んでいる俺の胸ぐらを掴みあげて体を激しく揺する。

その度に俺の頭は振り子のように振られて頭に血が上ってしまった。


「ブッ。ウェー。気持ち悪い……」


喉を越えようとする胃液を抑え込んで大きな嗚咽をして目覚める、俺。

寝起きとしては最悪に部類する起こされ方だ。


「もっとまともな起こし方は出来ないのか!」

「変態男にはこれで十分だわ」


アンナは冷ややかな横目で睨みつけながら掴んでいた手を離す。

すると、慣性の法則に乗っとって俺の体は自然と地面まで戻る。

そして起き上がろうと踏ん張ろうとした時、変化に気づいた。


「ん?体が動かないぞ」

「どうしたの?」

「足が動かないんだ!これはどういう事だ!」


驚愕している俺を嘲るかのように冷たい視線を送って来るセリーヌの口角はどことなしか上がっているように見えた。


「おい、セリーヌ。何をしたんだ?」

「カイトさんの上半身だけ蘇生したのですわ」

「何で、そんなことをするんだよ?」

「カイトさんにもう二度と浮気はしないと約束してもらうためですわ」


セリーヌは動けない俺の上に跨ると誓約書が記された紙を差し出して来る。

その紙には”二度と浮気はしません。他の女性にも手を出しません。セリーヌだけを愛します。”と書かれている。

そこまではわからないでもないが、その後の文言が問題だ。

”浮気をしたらどんな罰でも受けます”と記されていた。

どんな罰のどんなが一番問題だ。

エスカレートしやすいセリーヌのことだからとんでもないことをするかもしれない。

そんな一方的な誓約書にはサインはしてならないと俺の本能が回避のサインを送って来た。


「そんな一方的な誓約書にサインが出来るかよ。それより下半身も蘇生させろ!」

「カイトさんがサインをしてくれないのでしたら、ずっとこのままですわ」

「ずっとこのまま?」

「そうです。下半身が腐って半人半ゾンビになるのですわ。浮気者のカイトさんには相応しい姿です」


下半身だけゾンビだなんて受け入れられない。

あんなことやこんなことも出来なくなってしまう。

年頃の俺には毎日のちょめちょめが大事なんだ。

それが全くなくなってしまうなんて死んだのも同然じゃないか。

俺は受け入れない、絶対に受け入れないぞ。


「おい、エレン。セリーヌを説得しろ!」

「カイト、諦めろ。セリーヌが決めたことだから私達にはどうすることも出来ない」

「そ、そんな……」


大きなため息を吐くエレンの視線は俺を憐れむような悲しい瞳をしている。

それは他の奴らも同じ意見だったようで俺に同情しながらも俺達と距離をとるように後ずさる。


「さあ、カイトさん。サインをしてください」

「くぅ……」

「カイト。ここは折れた方が無難だぞ。お前達の関係はわからないが、女の言うことは聞いておく方が後々問題も少なくなるものだ」

「ゴウ。お前までそんなことを言うのか」


ゴウだけでなくルミウス三世もマークニットもゴウの意見に賛成のようだ。

三人は揃ってガッツポーズをして一致団結しながら後ずさりして行った。

裏切り者。

お前達だけは俺の味方だと思っていたのに。

ブルー・アイを売った金は独り占めしてやる。


「浮気はしないと誓ってください」

「お、俺はそもそも浮気なんてしてない!さっきのは仕方なかったんだ。アンナにブルー・アイが奪われたらどうなるかわかるだろう?」

「わかりません」


俺の訴えに聞く耳を持っていないセリーヌは静かに首を横に振り応える。

誓約書をぐっと俺の顔に押しつけてサインをするように強要しはじめる始末。

エレン達もゴウ達もただの傍観者となり果てて俺達とは距離をとっていた。


「わ、わかったよ。サインすればいいんだろ。サインをすれば」

「そうです。サインをすればいいんです」


投げやりに吐き捨てる俺の言葉を真に受けてセリーヌは目を輝かせながら迫って来る。

そして俺の右手にペンを握らせると誓約書を前に差し出した。

しかもサインがしやすいように誓約書の下に板を敷いている。

どこからそんなものを持って来たのかと呆れてしまうがセリーヌは本気モード。

まるで借金の取り立て屋のようだ。

俺はやむなく誓約書にサインをするとセリーヌに蘇生を懇願した。


「これでいいだろう。早く下半身も蘇生してくれ。早くしないと本当にゾンビになってしまう」

「わかりましたわ」


セリーヌは再び『蘇生魔法』を唱えて俺の下半身を『蘇生』させた。

『蘇生魔法』が部分的に使えるなんてはじめて知ったが、これはこれで恐ろしい武器にもなる。

とりわけセリーヌが使えるのだから用心しないといけない。

目覚めたらゾンビになっていたなんてことも起こりえるかもしれないのだ。

セリーヌならばやりそうだ。


「ふーぅ。やっと生き返ったか」


俺は蘇生された足で飛び上がって生還の喜びを噛み締める。

四股が満足でないと生きた心地がしないからな。

すると、一連の流れを見ていたアンナが俺にツッコみを入れて来た。


「それでカイト達はいつからそんな関係になったの?」

「それはだな……」


アンナの質問を聞いてエレンがニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべながらアンナの肩に腕を回す。

そしてこれまでの経緯を淡々と話しはじめた。

これみぞとばかりに話を盛って事実とはかけ離れた事実を創り出して――。





「本当に!私も怪しいと思っていたのよね。カイトがセリーヌを見る目が怪しかったから。まさか、セリーヌに手を出すとはね」

「カイトはマザコンだからあり得ない話でもないぞ」


誰がマザコンだ。

好き勝手に話を盛るんじゃない。

ちゃんと事実を伝えろ。

俺はおばさんに手を出すほど落ちぶれていないのだから。

そんな俺の気持ちを無視するかのようにエレンは話を盛って行く。


「それだけじゃないんだ。セレスティア王国ではセリーヌに愛の告白をしたんだ。”セリーヌ、愛してる。俺が幸せにするからいしょに来てくれ”なんて顔にもないことを叫んでな」

「キャハハハ。それマジ?ウケるんですけと。いつの時代の告白よ」

「セリーヌみたいな純情な女にはウケる台詞だな。何の本を読んで見つけたんだ?」


嘘の話で盛り上がっているエレン達をよそにセリーヌは頬を赤らめて照れくさそうにしている。

まるで俺が本当にそんな告白をしたかのような態度だ。

言っておくが俺はエレンの言うような臭い台詞を吐いた覚えはない。

あの時はただ必死だったので思わぬことを口にしたかもしれないが事実無根だ。


「カイトにそんな過去があったなんてな。ただのスケベ男かと思っていたが愛の告白をしていたとはな」

「カイトさんは年上の女性が好きそうですからお似合いですよ」

「そうだな。年の差カップルなんて珍しくもないしな」


ゴウ達はゴウ達でエレンの嘘話を信じて盛り上がっている。

純粋と言うか頭が悪いと言うか、”男ならこれくらいの嘘は見抜けよ”と言いたくなる。

おばさんってのはとかく他人の恋愛ごとが好きで話を盛って嘘話を創りあげる。

その卑劣な行為にどれだけの人が泣いて来たのかも自覚することないのだから始末が悪い。

これはおばさんの暴挙だ。

暴挙にほかならない。

俺は断固立ち向かうぞ。

おばさんの暴挙から人々を救うために。


「エレン。話を盛るのもいい加減にしろ。俺はセリーヌに愛の告白なんてしてない!」

「カイトさん。あの言葉は嘘だったのですか。酷い!」


俺の言葉を受けてセリーヌは目にいっぱい涙を溜めて狼狽える。

か弱き乙女であることを主張するかのごとく乙女座りをしながら小さく肩を竦めた。

その様子を見てツッコミを入れて来たのはもちろんエレン達。

俺に責任をなすりつけるかのように詰め寄る。


「カイト。女を泣かせるなんて最低な男がすることだぞ」

「これじゃあセリーヌが可哀想だわ」

「責任をとれ」

「カイト。俺も今のは酷いと思うぞ」

「カイトさん。男らしくないです」

「本当のカイトさんを見せてください」


いつの間にか俺は四面楚歌状態に陥り逃げ道を失う。

”背水の陣”を得意とした武将もいたと言う話だが、この状態からは逃れられないだろう。

これは俺を悪者に仕立て上げようとするエレン達の罠なのだ。

誓ってもいいが俺はセリーヌにプロポーズなんてしていない。

あの時、言ったのはセリーヌを引き留めるための言葉だ。

それは仲間として、セリーヌを仲間として見ているから出た言葉だ。

けっして愛の告白なんて大それたものじゃない。


「俺は潔白だ!愛の告白なんてしてない!」


俺の決死の叫びに一同の視線が集まる。

冷ややかな目で俺を蔑むように視線を送る。

すると、それまで泣き伏せていたセリーヌが度肝を抜く告白をはじめた。


「私の裸を見たくせに」

「私も見られたぞ」

「お風呂でも覗いたの?」

「典型的なスケベ男だな」

「羨ましいことをしやがる」

「ぼ、僕も見てみたいです」

「お願いしてみようか」


1度ほど温度が下がったように一同の視線が冷ややかになる。


「私の胸を揉んだくせに」

「ついでに私の胸も揉んだんだぞ」

「カイトはやっぱり変態だね」

「女性の胸なら誰でもいいのか」

「俺だってまだ揉んだことないのに」

「カイトさんはおっぱい星人ですね」

「少しは俺達にも分けて欲しい」


更に2度ほど温度が下がったように一同の視線が冷ややかになる。


「私にキスしたくせに」

「それも濃厚な奴をな」

「キ、キス!」

「カイトにしては大胆な行動に出たな」

「そこまでしてシラを切るとは不届きな」

「男の片隅にもおけませんね」

「これは決定的ですね」


更に3度ほど温度が下がったように一同の視線が冷ややかになる。

すっかり辺りは凛とした空気に包まてていて微妙な緊張感が漂っている。

セリーヌはひとり涙を浮かべて責めるように俺を見つめていた。

そんな中で俺がどんな言葉を発するのか一同の関心が高まる。

ここで全てを否定しようものならゴウ達の非難を浴びて刺されてしまうだろう。

だから――。


「ああ、そうだよ。裸も見たし、胸も揉んだし、キスもしたよ。だけどな、それはそう言う状況になったからしたことだ。好きでした訳じゃない」


開き直った。


「あれは遊びだったのですか?私は本気だったのに……酷いわ」

「カイト。二枚目気取りはもう止めろ。お前がセリーヌに気があることはわかっているんだ」

「素直に認めて楽になりなさい。そしたら私達も祝福してあげるわ」

「責任をとってセリーヌと結婚をしろ。私が仲人を務めてやる」

「結婚式に俺も呼んでくれよな」

「祝電を送ります」

「なら、お祝いを用意しないと」


いつの間にか俺がセリーヌと結婚することに話が進んでいる。

話に参加するのはいいが盛るのは止めてもらいたい。

事実と妄想がわからなくなる。

俺は結婚の「け」の字も吐いていないのだから。


「俺はセリーヌとは結婚なんてしないぞ。俺には勇者になるという大事な夢があるんだ。そんなお遊びに構っていられるかよ」


言ってやった。

言ってやったぞ。

縋りついて来る奴には迷わずすっぱりと切り落とすのが効果的なんだ。

俺の崇高な夢を実現させるために邪魔なものは徹底的に排除する。

セリーヌには悪いがここは素直に諦めてもらおう。


「わかりましたわ。カイトさんがそこまでおっしゃられるのなら」

「セリーヌ。諦めるのか?」

「諦めることなんてないわよ。自分の幸せを一番に考えなさい」

「そうだ。女の幸せは結婚なんだぞ。幸せな家庭を築いて私達に子供を見せてくれ」

「女にここまで言わせるとは。カイトはただのクズだな」

「幻滅しましたよ。カイトさんがこんなに酷い人だなんて」

「俺は子供の名前まで考えていたのに。期待を裏切るなんて」


急に掌を返して納得するセリーヌの言葉を受けて一同はそれぞれ言いたいことを言いはじめる。

クズだの冷酷だの裏切り者だのと俺のことを蔑みながら興奮して行く。

これでは俺が一方的に悪いように見えるじゃないか。

すると、セリーヌが涙を拭い落ち着いた態度で告げた。


「カイトさんとの結婚は今は諦めます。私達はまだそこまで気持ちを高めていませんしね。カイトさんの夢を追いながら私は傍で見守らせてもらいますわ。ですからカイトさん、迷わずに夢を追い駆けてください」

「わかってくれたのか、セリーヌ。お前なら理解してくれるだろうと思っていたよ」


セリーヌはエレンと違って馬鹿じゃない。

話せばわかってくれる理解力のある女なのだ。

ただ「今は」と言う部分に妙にアクセントがあったような気もするのだが。


「セリーヌも馬鹿な奴だ。押して押して押しまくってカイトの首を縦に振らせればいいものを」

「セリーヌはエレンと違って純情な女だからね。そんなことは出来ないのよ」

「まあ、でも。それでセリーヌが納得できるのならば私達に言うことはないけどな」

「だけど男としてはダメな奴だな」

「女性に決断をさせるなんて男として最低です」

「カイトさんのポイントがだいぶ下がりましたね」


好きなだけ罵るがいい。

俺はぜんぜんダメージは受けないぞ。

こんな形で結婚に陥る最悪な事態は避けられたのだから。

俺はセリーヌほど年は食っていないから結婚に焦る必要なんてないのだ。

まだまだ若いんだしもっと青春をエンジョイしなければ。


「さあ、この話はこれで終わりだ。今後の作戦会議をするぞ」

「話がまとまったら急に元気になったな」

「結婚を避けられたから喜んでいるのよ」

「セリーヌの前でそこまで出来るとは」

「そこ、茶々をいれるんじゃない!」


俺の司会進行の邪魔をするかのようにエレン達は言いたいことをくっちゃべる。

まるで俺に全責任をなすりつけるかのようにあげ足をとるかのような言葉を並べて。

こいつらの口を開かせておくと進む話も全然前に進まないから黙らせておくのが一番だ。


「ここからは私語は一切禁止だ。意見のある者は挙手してから言うように」

「なんでカイトが仕切っているんだよ」

「ほら、そこ。私語は禁止だと言ったろう。挙手をしてから喋れ」


すぐさまツッコミを入れて来るエレンを押さえつけるように指摘する。

俺はさながら裁判所の裁判長のような立ち振る舞いでルールを説き伏せる。

すると、エレンは仕方なさそうな顔をしならら挙手をする。


「はい。エレン君」

「何でカイトが仕切っているんだ」

「それは私がカイト軍団のリーダーだらかです」

「いつからカイトがリーダーになったんだ。私は認めていないぞ」

「質問は一挙手に一度だけです」


ルールを無視するエレンの言葉を抑え込むように発言を却下する。

それを受けてエレンはふて腐れながらかったるそうに挙手をした。


「はい。エレン君」

「いつからカイトがリーダーになったんだ?」

「最初からです。出会ってからすぐに決まりました」


今度はアンナが挙手をして問題を掘り下げる。


「はい。アンナ君」

「カイトがリーダーだってことはわかったけれど今までリーダーらしいことはしたの?」

「もちろん。して来ました。まとまりの悪いチームをまとめてルールを作り課題をこなして来た事実があるんです」

「ルールなんていつ……」

「はい、そこ!」


俺の説明に不満を持ったのかすぐにアンナがツッコミを入れようとしたところを即座に遮る。

と、アンナは不機嫌な様子で仕方なさそうに挙手をしながらブー垂れる。


「はい。アンナ君」

「ルールなんていつ作ったのよ」

「あなた方が問題を起す度にです。あなた方おばさんは自分勝手に振る舞い人の言うことは聞きませんから、ルールが必要なんです。ルールがなければおばさんはまとまりません」


すると、今度はミゼルが挙手をして発言権を得る。


「はい。ミゼル君」

「カイトにとって私達はおばさんと言う認識でいいのか?」

「もちろんです。私の倍生きている女性をおばさんと呼ばなくてなんと呼ぶのです。あなた方は立派なおばさんです」


さすがの俺の全うな説明に言葉を失ったのかミゼルは黙り込む。

そして大きく項垂れながら観念した様子で大きく肩を落としていた。

そんな俺達のくだらないやり取りを見ていたゴウが見かねて挙手をしてきた。


「はい。ゴウ君」

「俺達は今後の作戦会議をしていたんじゃなかったのか?」

「そうでしたね。議題が逸れてしまったようです。では、本題に入りましょう」


おばさんを相手にするとこうも話が逸れてしまうのはいただけないところだ。

俺達は今後の作戦を考えると言う崇高な課題を議論するために集まったのだ。

だから、おばさん達の言葉は今度いっさい無視をすることにする。

それが話を進める唯一の方法なのだ。


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