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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第四章 再開するおばさん編
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あるある105 「浮気は絶対に許さないと心に決めがち」

坂を転がり落ちる石ころのように勢いを増しながら真っ逆さまに落下して行く。

手足を突っ張って止めようものなら手足が持って行かれてしまうだろう。

だから俺達に出来ることは何もない。

ただ、なるように身を任せて止まるまで待っているしかないのだ。


「あぁぁぁぁぁぁー!」


俺達の悲鳴だけが虚しく縦穴に鳴り響く。

そして落下してから30秒ぐらい経った頃だろうか、急に視界が開けてひと際大きい空洞に出た。

その瞬間、回転力は治まったのだが落下の勢いはそのままで成す術もなく真っ逆さまに落下して行った。


「落ちるぅぅぅぅぅ!」


団子状になりながら俺達は下にあった古びた寺院の屋根に大穴を開ける。

が、勢いは僅かしか相殺されず、そのまま寺院の床に落ちて行く。

瞬間、誰かの姿が視界に入ったと同時に鈍い衝撃が俺の後頭部に走る。

そしてそのまま寺院の床に大きなクレーターを造った。


寺院の中を埋め尽くすほどの土煙が巻き上がると空いた穴から逃げるように土煙が吹き出した。

その土煙の向こうで誰かを心配をする女性の声が聞えて来る。

しきりに叫びながら土煙を払いのけ覗き込むように誰かを探していた。


「おい、大丈夫か?」


俺はその声を片耳に止めながら体に走る痛みを堪えて体を起こす。

その時に突っ張った左手に柔らかな感触が伝わって来た。

それはまるでマシュマロを鷲掴みにしたような気持ちの良い感触でずっと触っていたい気分に包まれる。

すると、そのマシュマロの持ち主が顔を真っ赤にさせながら起き上がると俺の頬に向かって渾身の平手打ちを放った。


「いつまで触っているのよ、この変態!」


鈍い痛みが俺の右頬に入ると同時にボキッと鈍い骨の折れる音が耳に届いて。

俺の体は宙を浮きながら、その勢いのまま壁まで吹き飛ばされた。

俺の軌跡をなぞるように再び土煙が巻き上がり視界を塞いだ。


「痛ててて。いきなり何をすんだよ!」

「何じゃないわ。わざとしたでしょ。どさくさに紛れて私の胸を鷲掴みにするなんて変態のすることよ!」

「不可抗力だよ。たまたま手を置いたところにお前の胸があったんだ」


マシュマロの持ち主は顔を真っ赤にさせながら蒸気機関車のように怒りを吹き出している。

少しでもいい訳をしようものなら間違いなく、その鋭利な牙で食い殺されることだろう。

すると、その様子を脇で見ていたエレンが思わぬことを口にした。


「お前、アンナじゃないか?」

「え?何?エレン?あっ、セリーヌもいる」


エレンとセリーヌを目にとめてアンナは少し戸惑っていたがすぐに冷静さを取り戻した。


「何で、エレン達がここにいるのよ?」

「私達はシンポス地下神殿にある隠しダンジョンを調査していたのですわ」

「隠しダンジョン?」


セリーヌの説明に一瞬、言葉を失い小首を傾げてミゼルと顔を見合わせる、アンナ。

ミゼルの方も状況がまだ理解できていないようで困惑顔を浮かべている。

すると、話の間を割るように俺が隠しダンジョンの調査の目的を明かした。


「俺達は隠しダンジョンにあるブルー・アイを探しに来たんだ」

「な~んだ。私達といっしょじゃない。私達もブルー・アイを探しに来たのよ」

「ただ、私達の場合は偶然にここまで辿り着いたんだけどな」


ミゼルの告白に急にバツが悪そうな顔を浮かべるアンナは視線を逸らして目を泳がせる。

その様子を見てピンと来た俺はミゼルにツッコミを入れた。


「偶然ってどう言うことだ?」

「それはな……」

「あー!そんなのどうでもいいじゃない。それよりもブルー・アイを探しましょう」


明らかに動揺を見せるアンナは油汗をだらだらと流して気が気でない様子。

俺達に知られたらマズいことでもあるのだろうか。

今後の調査に支障を来さないように明らかにする必要があるな。

俺は名探偵のごとく着けていないメガネをずり上げる仕草をするとアンナに迫った。


「アンナさん。何か、隠してますね?」

「べ、別に隠してなんかいないわよ」

「それじゃあ私の目を見つめてもう一度おっしゃってください」

「そ、それは……」


俺がアンナの顔を覗き込むように近づけるとアンナは視線を逸らして目を合わせようとしない。

明らかに動揺して小刻みに目を泳がせながら呼吸を乱している。

確信を得た俺はさらに追い打ちをかけるようにおでこをアンナのおでこに押しあてて迫った。


「さあ?」

「くぅ……」

「さあ?」

「……」


すると、勘違いしたセリーヌが鬼のような形相でやって来て俺とアンナを引き剥がす。


「ダメ―!二人とも近すぎます。お話をするならもっと離れてください」


ひとり興奮しているセリーヌをよそに、俺はくるりと背を向けて話の切り口を変える。

さながら名探偵を思わせるような立ち振る舞いをして。


「では、話題を変えましょう。アンナさん、あなたはどうやってここまで来たのですか?」

「どうやってって。歩いて来たのよ」

「私が聞いているのは手段ではありません。どう言うルートを通って来たのかです。私達がここまで辿り着いたのはシンポス地下神殿の隠しダンジョンを通ってです。まさか、アンナさん達も同じルートで来たとはいいませんよね?」

「……」


俺の鋭い質問にすっかりと言葉を失いアンナは大きく項垂れている。

口を噤んだままチラチラとミゼルに視線を送りながら助け舟を求めはじめる。

すると、ミゼルは達観したような顔で首を縦に振ってアンナにサインを送った。


「わかったわよ。話すわ。私達はサラハル砂漠でヘル・イーターの巣に嵌ったのよ。ヘル・イーターは何とか倒したけれど、巣から逃れられなくて砂の下に埋もれてしまったわ。気づいた時にはこの地下にいたの」

「なるほど。ヘル・イーターの巣と、この地下空洞は繋がっていたことですね」

「そうよ。これでいいでしょう」


これでアンナ達がどうやってここまでやって来たかルートは明らかになった。

ルミウス三世の『空間認識』の力で明らかになった隠しダンジョンの構図もサラハル砂漠の下に位置している。

だから、この地下空洞の上にはサラハル砂漠があると言うことは明白だ。

ただ、疑問が一つ残る。

それは何でアンナ達がヘル・イーターの巣に嵌ったかと言うこと。

アンナ達もエレンに劣らず戦闘能力は高い。

そんな奴が簡単にヘル・イーターの巣に嵌るとは考えにくいのだ。

俺は人差し指を真っすぐに伸ばしてアンナに質問をした。


「ひとつだけいいでしょうか。アンナさんはエレンさんと渡り合えるほどの強者です。戦闘経験も豊富で頭のキレるアンナさんがなぜヘル・イーターの巣に嵌ったのでしょう?考えられることとすれば、アンナさんの理性を惑わせるようなことがあったのかもしれません」

「何が言いたい訳?」

「つまり、ヘル・イーターの巣にはアンナさんが大好きな宝石があったのではないでしょうか?アンナさんは無類のお金好き。宝石を手にいれて売って儲けようと考えた。だから、ヘル・イーターの巣に飛び込んだのです。そう考えると全てのつじつまが合うんです」


俺の鋭い推理に官服したミゼルは両手を広げてアンナにサインを送る。

アンナはバツが悪そうな顔をしていたが開き直って俺の推理を認めた。


「そうよ。みんなカイトの言う通りよ。ブルー・アイを探しに来たのも売ってお金に替えるためよ。あなただってそうでしょう、カイト?」

「もちろんそうです。ただ私達は欲意外にロマンを求めてやって来たのです」

「ロマン?」

「世界で唯一無二の宝玉ブルー・アイ。それはかつて聖獣麒麟の額に埋め込まれた魔力の根源とされていた宝玉です。それを目にした者は誰もおらず、伝説として語り継がれて来た。そんな存在するかもわからないブルー・アイを求めることはロマンに他ならないのです」


俺は地上に降臨して来た神のごとく達観した眼差しで民衆達(アンナ達)に慈悲を送る。

その傍らには俺のロマンに共感する信者達(ゴウ達)が寄り添い、俺が指し示した未来を見つめていた。

ただ、民衆達(アンナ達)にはロマンが理解できないようでお互いの顔を見合わせて困惑していた。


「ロマンなんてお金にもならないことによく夢中になれるわね。バカみたい」

「バカとは何だ。これは崇高な男の夢なんだぞ」

「カイトはスケベなことを考えていた方が似合うぞ」


こいつらにいくら説明しても無駄だろう。

金と酒にしか興味のないおばさん達なのだから。

ロマンなんて崇高な精神は生まれ変わっても理解できはしない。

しょせんおばさんはおばさんなのだ。


「おい、カイト。俺達にも紹介してくれよ。そちらの方々は誰なんだ?」

「おっ、忘れていたぜ」


すっかり出番がなくてイジケていたゴウがアンナ達を指さして質問して来る。

こういう入り方をしないと今のゴウには出番がないから仕方ないのだ。

俺はアンナ達を呼び集めてゴウ達に紹介をした。


「こいつが魔法使いのアンナだ。腕はエレンに劣らない手練れだぞ。だけど金にがめつくて金になることしか興味のない奴だ」

「余計なことは言わなくていいわよ」


アンナはムッとしながら俺の耳を引っ張るとゴウ達に頭を下げる。


「それでこいつが弓使いのミゼルだ。実力はまだ秘められている。美人だろう。エルフなんだ」

「ミゼルだ。よろしくな」


小さく頷くミゼルは無愛想な顔つきで愛想笑いのひとつもしない。

それが返って凛とした空気を生み出してミゼルの美しさを引き立てている。

ゴウ達はすっかりミゼルの美しさに魅了されて生唾をゴクリと飲み込んでいた。


「俺はソウル・ベルのリーダーをやっているゴウだ」

「ソウル・ベル?」

「カイト軍団のようなものだ」

「男ってのはしょうもない名前にこだわるのね」


アンナは呆れ顔を浮かべながら興味なさそうにゴウと握手をする。

続いてルミウス三世とマークニットを紹介した。


「こいつがルミウス三世。魔法使いの格好をしているが魔法は使えない」

「何よそれ」

「ルミウス三世です。よろしくお願いします」


ルミウス三世は律儀にも腰を曲げて大きく頭を垂れる。

その礼儀正しい態度を目の当たりにしてアンナはちょっと後ろにたじろいだ。

魔法使いのコスプレをしている頭のイカれた野郎だと思っていたから余計に度肝を抜かれたのだろう。


「こいつが剣士をやっているマークニットだ。剣の腕は未知数だ」

「それはつまり弱いってことか?」

「図星をつかないでください。俺だってやる時はやるんですから」


まあ、そう言うことにしておいてやろう。

恐らくだがマークニットは俺よりも弱い。

御大層な剣を持っているが、それはトラキアの街の武器屋から持って来たもの。

ブタに真珠じゃないけれどただの宝の持ち腐れだ。


「で、ここはどこなんだ?」

「知らないわよ。地下洞窟を歩いて来たらここに来たんだから」

「ここがハウベル教の信者達が造った神殿じゃないか?」

「神殿と言うよりただのボロ小屋だな」


エレンの指摘通り小屋は脆そうな土壁で覆われていて屋根は藁で出来ているお粗末なもの。

床にはかろうじて板が敷かれてあるが隙間が空いていて隙間風が吹き込んでいる。

部屋の奥には祭壇設けられていて、その上に何かの生き物を象った像が置かれていた。


「あれは何だ?」

「こいつはハウベル教の守護獣のひとつ一角獣だ」


一角獣と呼ばれたその像は立派な鋭い角を額から伸びて肉肉しい体つきだ。

首には馬のような鬣があり、尻に伸びる尻尾は豊かな毛を蓄えて頼もしい。

原寸サイズなのか大きさは全長でほぼ5メートルほどと言ったところだろうか。

木製でノミの痕がわかるくらい荒く削り取られていて、ランプの光を当てると波立ような影を造る。

それが返って一角獣の荒々しさを表しているようで力強さを感じた。


「これがハウベル教の守護獣か。強そうだな」

「強くなくては守護獣なんて務まらないよ。現存していたら聖獣に匹敵していただろう」

「それはいいですけれど、ここがハウベル教の神殿だとするならばブルー・アイもここにあるんじゃないですか?」

「その可能性が高い」


俺達は部屋の中を見渡してブルー・アイがないか探してみる。

しかし、飛び込んで来たのはお粗末な土壁だけでブルー・アイの欠片も見つけられない。

この小屋の中にあるのは一角獣を祀っている祭壇と祈る時に使う道具しかなかった。


「本名は中央の塔にあるのではないのか?」

「塔があるのか?」

「ああ。この神殿は方角を指すように小屋が配置されていて中央に高い塔がある。おそらくそこにハウベル神が祀られているのだろう」


アンナの光の魔法で明るくなった大きな空洞の中に白亜の高い塔が聳え立つ。

高さで30メートルほどあるだろうか、白亜の石が積み上げられていて荘厳な雰囲気を醸し出している。

他の建物とは一線を画するようなその風貌に思わず息を飲み込む。

俺達は中央の扉を押し開けて白亜の塔の中に入った。


まず、目に飛び込んで来たのはハウベル神を祀る祭壇とハウベル神の像。

高さ10メートルほどあるだろうか、白亜の石で彫刻されていて荘厳さが伝わって来る。

ハウベル神は目を閉じたままで両手を胸の前で組んで祈るような姿形をしている。

その姿は民の幸せとこの世の未来を見つめているポーズなのだと言う。

サーメット神とはまた違った雰囲気を醸し出していた。


「随分と立派な像なんですね」

「これをひとの手で造り出したことが驚きだな」

「そんな関心していないでブルー・アイを見つける方が先よ」

「そうだ。ブルー・アイが先だ。アンナより先に見つけるんだ」


俺とアンナはエサを探している野良犬のように這いつくばりながら辺りを探し回る。

しかし、目に飛び込んで来るのは白亜の石だけでブルー・アイの欠片も見つからない。

この中は全て白色が基調になっているから少しでも色付きのモノがあれば目に飛び込むはずなのだが。


「おい、ゴウ。ぼーっと突っ立っていないでお前も探せ」

「お、おう」


目の色を変えてブルー・アイを探し回っている俺達に呆気にとられながらゴウは俺に言われるままにブルー・アイの探索に入る。

すると、ルミウス三世がハウベル神の像の上の方に何かを見つけて叫んだ。


「リーダー。あそこで何か光ってます!」

「何だと!」


ルミウス三世が指している先を見つめるとアンナの光の魔法で照らされたブルー・アイが光を反射させてキラキラと煌めいていた。


「ブルー・アイだわ!」

「マークニット。あれは本物か?」

「遠すぎて本物かどうかわかりません」


マークニットの『真美眼』は近くのものには効果的でも遠くのものには働かないようだ。

確かに宝石かどうか鑑定する時も専用のレンズを使ってじっくりと見極めるから仕方ないと言えよう。

まずはあのブルー・アイをとってからマークニットに鑑定させるのが一番だ。

ブルー・アイはハウベル神の額にはめ込まれているから取り外しも出来そうだ。

すると、俺の指示を待たずにアンナがフライングをした。


「ブルー・アイは私のものよ」

「おい、アンナ。勝手な行動をするな!」

「そんなの関係ないわ。早いもの勝ちよ」

「野郎!」


アンナと俺は蜥蜴のようにハウベル神に張り付きながらよじ登りはじめる。

先にフライングをしたアンナの方がやや上で、それを追い駆けるように俺が続く。

その様子を下で見守っていたゴウが呆れたように呟いた。


「あいつら仲間じゃないのか?」

「アンナは金の亡者だから、ブルー・アイを先に奪われたら全部持って行かれてしまう。だからカイトも必死なのさ」

「酒の亡者のエレンに言われるようじゃお終いだな」


エレンの指摘は最もだ。

アンナは金に関することなら人が変わったように豹変する。

世の中にある金はすべて自分のもののように思って根こそぎ奪うのだ。

その姿は酒に溺れているエレンと同じだ。

だから、アンナに先を越されてはならないのだ。


「おい、アンナ。ブルー・アイは渡さないぞ!」

「先にとった方の勝ちよ!」


すでにハウベル神の腰のあたりまでよじ登って来た。

高さで言うと15メートルぐらいだろうか。

俺とアンナの差は体一つ分ぐらい開いている。

このままよじ登って行っても俺の負けが見えている。

ならば。

俺はぐいっと手を伸ばしてアンナの右足を掴んだ。


「ちょっと!足を掴まないでよ!落ちちゃうじゃない」

「ふん。先に登った方の勝ちなんだ。手段なんて選んでられるかよ!」


すると、アンナは右足を振って俺の右手を振り払う。

そして何を思ったのか右足で俺の頭を小突きはじめた。


「落ちなさい、カイト!ブルー・アイは私がもらうから」

「この野郎、人の頭を足蹴にしやがって。俺はモグラじゃないぞ」


このままでは確実に振り落とされてしまう。

その前に何としてでもブルー・アイを奪い取らないとアンナの思う壺だ。

こうなったら禁じ手だがあれを使うしかない。

俺は右手をグッと伸ばしてアンナの尻を鷲掴みにした。


「キャッ!どさくさに紛れてどこ触ってるのよ!変態!」

「ハハハ。何とでも言うがいい。俺は変態の中の変態だからな。お前を辱め地獄に落としてやる」

「何が辱め地獄よ。後で覚えていなさいよ!」


アンナは俺の手を振り解くように腰を揺らしてみせる。

だが、尻に食いついた俺の手はすっぽんのように離れない。

そればかりか尻を揉み砕くようにいやらしく触ってアンナを辱める。

すると、気持ちよくなったのかアンナの目がトロンとして来た。


「これくらいの変態行為なんかに負けないわ!ブルー・アイは私のモノよ!」

「ちぃ。これくらいじゃダメか。ならば――」


俺は右足を上に伸ばして踏ん張ると一気にアンナの背後まで競り上がる。

そして右手をアンナの背中に伸ばしてブラのフォックを外した。


「ちょっ!何をするのよ。胸が見えちゃうじゃない!」

「アハハハ。これぞ俺の必殺ブラ外し。みんなの前で胸をさらけ出せ!」

「こ、こいつ……」


アンナは顔を赤らめながらずり落ちて来る胸を必死に押し戻そうとする。

しかし、重力が邪魔してアンなのたわわな胸は徐々にズリ落ちて来た。

追い打ちをかけるように俺はアンナの上着を肌蹴させ、艶やかな肌をさらけ出させた。


「アハハハ。これでもう終わりだ。胸をさらけ出して俺の前に跪いたら許してやる」

「くぅ……」


すると、その様子を下で見守っていたセリーヌの沸点が最高を迎える。

鬼のようなと言うよりも地獄から這い出してきた悪魔のような形相で俺を睨みつける。

そして数多の生き物を死に至らしめるような禍々しいオーラを放ちながらブツブツと呪文を呟きはじめた。


「許せません。許せませんわ。エレンさんならまだしもアンナさんにまで手を出すなんて……」

「こりゃ、カイト。死んだな」

「さあ、ギャラリーは退散だ」


エレンとミゼルは呆れた様子でゴウ達を安全圏内まで下がらせる。

そしてこれから行われるであろう神の裁きを見守るのだった。


「さあ、アンナ。観念しろ。お前の負けだ。”カイト様、許してください”と言ったら許してやるぞ」

「誰がそんなことを言うものですか!」

「いいのか胸をさらけ出して。下にはゴウ達もいるんだぞ」

「それは……」


アンナは恥ずかしそうに顔を赤らめながら胸がずり落ちないようにハウベル神に押しつけ抵抗する。


「そんなことをしても無駄だ。ここをこうすれば」

「ちょっ。ちょっとカイト、くすぐらないでよ。落ちちゃうでしょう」

「さあ、”カイト様、許してください”と言え」

「キャハハハ。い、嫌よ!」


すると、カイト達の周りに暗雲が漂いはじめる。

その暗雲はアンナの光の魔法で造り出された太陽を飲み込み光をシャットアウトさせる。

そして空を裂くような紫色の稲光が走ると雷鳴が洞窟内に轟いた。


「何だ?」

「何?」


俺達は手を止めて辺りを見回して様子を確かめる。

下を覗き込むように見ると塔を取り囲むような巨大な魔法陣が浮かび上がっているのが見えた。

その中央に鬼のような形相をした地獄の使者セリーヌが佇んでいる。

何かの呪文をブツブツと呟きながら目を赤く光らせて俺達を睨みつけた。


「おい、セリーヌ。冗談はよせ。こんなところで魔法を使ったらみんな吹き飛んでしまうぞ!」

「そうよ、セリーヌ。冷静になって自分を取り戻しなさい!頭のいいあなたならわかるはずよ!」

「何がわかると言うのですか。私の前で二人してイチャイチャしちゃって。許せませんわ!」

「イチャイチャなんてしてないでしょう。カイトが勝手にやっていたことなんだから!私は被害者よ!」


アンナの必死の叫びも今のセリーヌには届かないようで沸き上がる怒りを沸々とさせている。

握られている拳に入っている皺は深く、今にも血が滲み出て来そうだ。


「セリーヌ。落ち着けよ。俺達の目的はブルー・アイだろう。すぐに俺が取って持って帰るから、それまで大人しく待っていろ!」

「そうよ。ブルー・アイをあげるから許してちょうだい!」

「アンナもこう言っているんだ。わかるだろう?だから、呪文を唱えるのを止めろ!」


俺達の声が届いたのか、セリーヌが急に下を向いて俺達から視線を逸らした。

俺とアンナはお互いの顔を見合わせてからほっど胸を撫で下ろす。

セリーヌは馬鹿じゃないから理由を話せば理解してくれる奴なんだ。

俺とアンナはブルー・アイを手に入れるために力を合わせていただけ。

イチャついて見えたのはセリーヌの誤解なんだ。


「さあ、アンナ。ブルー・アイを取ってみんなの所へ戻るぞ」

「そうね。ブルー・アイはみんなのものだからね」


俺とアンナが手をとってニコリと笑みを浮かべると静寂をかき消すかのよう最後の詠唱が耳に届いた。


「え?」

「何?」


お互いの顔を見合わせてから下を覗くと鬼のような形相をしたセリーヌが最後の呪文を唱えたところだった。


「亜空より飛来せし流星、一閃の刃となりて、悪しきものを消滅せよ『ホーリーランス!』」


と。


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