あるある104 「しょうもないことで嫉妬しがち」
エレンの放った『回裂斬』はブロンズゴーレムの左腕を捉えて鮮やかに切り落とした。
その事実に一番驚いていたのはゴウだった。
信じられないような顔をしながら唖然と佇んでいる。
自分の『回裂斬』がいとも簡単に真似されるなんてあり得ないからだ。
『回裂斬』はゴウが長い修業を経て習得した必殺技だ。
だから、簡単には習得出来るはずない。
しかし、エレンはいとも簡単に真似てしまった。
しかも自分の上を行くような破壊力を出して。
「あり得ない。これは幻だ。俺は幻覚を見ているんだ」
「信じられないのも無理はないが、エレンの特殊能力の賜物だよ」
「特殊能力?」
「ああ。エレンは一度見た技を瞬時に習得できる『再現』の特殊能力を持っているんだ」
俺の説明にようやく納得したゴウは観念したように大きく項垂れた。
『再現』の特殊能力であるなら真似されたのも仕方がない。
ただ、ゴウの『回裂斬』の上を行っていることは受け入れがたい様子だったが。
「私の勝ちだな」
「負けを認めるよ。お前の勝ちだ」
ゴウは素直に負けを認めてエレンを称賛した。
すると、気をよくしたエレンはゴウの肩を叩きながら畳みかけるような言葉を吐く。
「お前はよくやった。ただ私を越えることは出来なかったがな。まあ、一生かかっても私を越えることはないけどな」
性格の悪い野郎だぜ。
勝ったんだから素直に喜んでおけばいいものを。
これでますますエレンがつけ上がる。
俺としてはゴウに勝ってもらいたかったのだけど残念だ。
「『再現』だなんて反則的な特殊能力ですね」
「そうだな。『再現』の前ではどんな相手も歯が立たないだろうしな」
「エレンさんは、それでコロセウムの決勝戦へ進んだのですわ」
セリーヌの言葉にルミウス三世もマークニットも素直に納得して首を縦に振る。
ゴウでさえコロセウムの決勝に進むことが出来なかったのだからエレンの実力は相当なはず。
それは今の戦いを見てもはっきりとわかることだ。
俺達がエレンとゴウの勝負の結末に一喜一憂しているとブロンズゴーレムの気性はますますと荒くなる。
自分が無視されているように感じたようで辺りを殴りつけながらひとり怒りをむき出しにしていた。
「何だよ、まだやるって言うのか?私に負けたくせに」
「グオォォォォ!」
エレンの挑発にまんまと引っかかってブロンズゴーレムは目を血走らせる。
残っている右腕で自分の胸を叩きながらゴリラのように威嚇をしはじめた。
「おい、エレン。さっさと片づけろ」
「言われるまでもない」
エレンは大剣を肩に担いでブロンズゴーレムの前に立ちはだかる。
そして腰を捻ったり肩を回したり準備運動をすませてから余裕気な態度で大剣を構える。
その動きに合わせるようにブロンズゴーレムも右腕を前に翳す。
周りの空気が凛として張り詰める中、二人は睨みあったままお互いの隙を伺っている。
次で確実にブロンズゴーレムを仕留めるのならば決定打を打ち込まなければならない。
ブロンズゴーレムの弱点を突くことは出来ないから頭部にある魔石を確実に破壊する必要がある。
エレンの放つ『回裂斬』の破壊力があれば問題なく仕留められるはずだ。
「さて、これで終わりにしてやるよ」
再び意識を集中させながらオーラを大剣に集束させて行く、エレン。
大剣が青白い神秘的な光を放ちながら、その剣心にエネルギーを圧縮させる。
先ほどよりも強力な光を放つ大剣はまるで月の石から削り出した聖剣のよう。
エレンが大剣を振るうと青白い軌跡が宙に描かれた。
「これで決める!『回裂斬!』」
エレンは全ての力を大剣に集めて前方に向かって高く飛び上がる。
同時に体を高速回転させながら遠心力をつけ『回裂斬』の破壊力を高めて行く。
先ほどの攻撃とは明らかに違うパワーとスピードでブロンズゴーレムの頭部目がけて『回裂斬』を放った。
すぐさまブロンズゴーレムは右腕を翳して『回裂斬』を受け止めるが、その破壊力に押されて右腕を切り落とされてしまう。
そして勢いの衰えぬままエレンの放った『回裂斬』が頭部に直撃した。
「沈めぇぇぇぇぇ!」
エレンの大剣はブロンズゴーレムの装甲を切り裂き中央にあった魔石を粉々に粉砕する。
すると、ブロンズゴーレムの体に無数の亀裂が入り粉々に砕け散った。
「さすがはエレンだな」
「俺の『回裂斬』のはるか上を行く破壊力だ。これがコロセウムの決勝戦へ進んだエレンの実力と言うのか」
ゴウは脱帽したような表情を浮かべながら膝を折ってその場に崩れ落ちる。
こうまで鮮やかな戦い方を見せられたら納得しない訳にもいかない。
自分でさえブロンズゴーレムの腕に傷をつけることが精一杯だったのに消滅させてしまうのだから。
しかし、勝負に負けたことは悔しかったがそれ以上にワクワクもしていたのも事実。
世の中には自分より強い戦士がたくさんいることに興奮を覚えていたようだ。
「さて、それじゃあ先に進もうか」
「おい、エレン」
「何だ?」
「お前に会えてよかったよ」
意表をつくようなゴウの言葉を理解できないエレンは首を傾げながら訝し気にゴウを睨みつける。
そして落ちていた赤銅石に手を伸ばすとゴウに向かって放り投げた。
「これはお前が持って行け。売れば多少なりとも金になる」
ゴウは大事そうに赤銅石を袋の中に仕舞い込むと肩に担いだ。
そしてランプを掲げると先陣を切って前に進みはじめる。
空洞の中に他のモンスターはいなくて荒れた岩肌がむき出しになっていた。
俺達は岩をよじ登りながら前に進んで空洞の奥までやって来た。
「ここで行き止まりのようだな」
「他に道はありませんか?」
「辺りには何も見えない」
ランプを掲げて辺りを照らしてみるが荒い岩肌の壁があるだけで通路のようなものは見つけられなかった。
俺達はその場に腰を下ろして一息をつく。
ここまで歩きっぱなし出来たから体力が消耗してしまったようだ。
腰元に下げていた革の水筒を取り出して喉を潤す。
疲れていた体に染み込んで癒されるような気がした。
「ルミウス三世、今どのあたりにいるんだ?」
「シンポス地下神殿から西へ100キロメートル来たあたりの地下にいます。この上はサラハル砂漠です」
「そんな遠くまで歩いて来たのですね。洞窟の中を歩いて来たから実感がありませんわ」
ルミウス三世が『空間認識』の特殊能力で描き出した構造図ははっきりとわかりやすくなっていた。
迷路のような右の通路もはっきりと描写されていて引き返しても迷うことはない。
ただ、また来た道を引き返すのは気持ち的に萎えてしまう。
また振り出しに戻ることになるから余計に前へ進むと言う気力が必要になる。
「ここにいても仕方がない。少し休んだら来た道を引き返すぞ」
「結局、カイトの運はハズレだったってことだな」
「それを言うな。こっちの道がハズレだったってわかっただけでもいいだろう」
エレンは気怠そうに壁にもたれかかると俺に聞えるように愚痴をこぼす。
そんなエレンを横目に見ながら言い訳をして俺も壁にもたれかかった。
「せめてここに酒でもあれば気分が上がるんだけどな」
「街に戻ったらたんまりと飲ませてやるよ」
「そんな金、あるのか?」
「ブルー・アイを見つければな」
当初の目的を忘れてはならない。
俺達はブルー・アイを探しにここまで来たのだ。
今のところブルー・アイは見つかっていない。
だとするならば必然的に他の場所にあることになる。
恐らくは先ほどの7つの通路の真ん中の道の先だろう。
後はそこまで引き返して本名の道を進むだけだ。
「それじゃあ行くか」
「ちょっと待て、カイト。これを見てくれ」
立ち上がろうとする俺を引き留めてゴウがランプの炎で映し出された影を見つめる。
「何だ、ランプがどうしたんだ?」
「ランプの炎が揺れているんだよ」
「だからどうした?」
「わからないのか?この穴から風が吹いているんだよ」
ゴウがランプの隣にあった小さな穴を指しながら穴を覗き込んでいる。
俺もその穴に手を翳してみると穴の中から吹きつける風を感じた。
「風が吹いてるってことはこの先に出口があるってことだ」
「だが、こんな小さな穴なんて入れないだろう」
「それが問題なんだよ。確かにこの先には出口があるんだけどな」
さすがのゴウもこれではお手上げのようだ。
難しそうな顔を浮かべながら腕を組んで考え込む。
まあ、逆さまになっても答えは出ないだろう。
この穴を通れるのはネズミぐらいなものなのだから。
「いっそうのことこの穴を掘ってみるってのはどうですか?」
「それもアリだな。穴を掘れば広がるかもしれない」
「だけど、道具もなしにどうやって掘るんだ?」
俺達は最低限の道具を持ってこのダンジョンに入り込んで来た。
穴を掘るようなことは想定していないからシャベルなどは持って来ていない。
持って来たのはお宝を入れる袋と僅かな食料と水だけだ。
これだけじゃ全く穴は掘れない。
すると、マークニットが剣を引き抜いて提案して来た。
「武器で掘ったらいいんじゃないですか?リーダーの戦斧では無理ですけれど俺の剣とカイトさんの小剣ならば問題ないはずです」
「それがあったか!」
ゴウは手をポンと叩いて俺の小剣を見つめる。
「おいおい。俺の小剣は穴掘り用の道具じゃないぞ」
「大して使っていないんだからいいだろう」
「なら、お前の大剣を使えばいいじゃないか」
「私のは戦闘用だからダメだ」
俺の提案をきっぱりと否定するエレンは大剣を大事そうに抱えながら後ろに隠す。
確かにエレンが言うようにエレンの大剣は戦闘用だから、しょうもないことに使って刃こぼれでもしたら取り返しがつかなくなる。
かと言ってそれは俺の小剣だって同じことだ。
積極的に戦闘には参加していないけれど、いざと言う時に役立つのだ。
だからしょうもない穴掘りには使えない。
「他の方法を探そう」
すると、みんなの視線が俺の小剣に集中した。
「カイトさん。諦めてください。カイトさんの小剣が一番穴掘りに向いています」
「モンスターが出たら私とゴウでなんとかするから遠慮はするな」
「そうだ。モンスターは俺達に任せておけ」
「カイトさんだけが頼りなんです。お願いします」
「俺も手伝いますから、いっしょに穴掘りをしましょう」
俺の周りを取り囲んで逃げ道を塞ぐ、エレン達。
目をキラキラと、いやギラギラと輝かせながら俺の小剣を見つめる。
その目はまるでカエルを睨みつけている蛇のようだ。
「俺は嫌だからな!」
俺が隙を狙ってゴウの隣から逃げ出そうとするとゴウがタックルするように俺の腰を掴んで止める。
それを受けてエレンが俺の手から小剣をはぎ取ると上に掲げて勝利宣言をした。
「諦めろ、カイト。これは私達のモノだ」
「返せよ。卑怯だぞ」
「お前はカイトを抑えておけ。私が穴を掘る」
そう言ってエレンは小剣を鞘から引き抜くと勢いよく穴に突き刺す。
カキーンと言う金属音が辺りに響きわたると俺の敗北が決した。
「この野郎。傷つけたら承知しないからな!」
「傷ついたらまた新しいのを買ってやるよ。ブルー・アイを売った金でな」
目じりにいっぱい涙を溜めながら悔しがっている俺をよそに、エレンは遠慮なく小剣で穴を広げて行く。
マークニットもそれに加わって自分の剣で穴を掘った。
穴を掘り出してから10分したところでエレンが急に手を止める。
見ると穴の直径は30センチほど広がっていて真っ暗な闇を覗かせていた。
エレンはランプを翳して穴の中を照らし出す。
すると、穴の底からふわっとした風が舞い上がって来てエレンの長い髪を揺らせた。
「狙い通り、この下には出口があるようだぞ」
「やっぱりか」
「ただ、真っ暗で何も見えませんわ」
ランプの灯かりは穴から60センチほどしか光が届いていない。
ただ穴の壁は見えずにいるので思っている以上に穴の直径は広いようだ。
断面図で表すと巨大な穴の上に蓋をしたような状態であることが予想できる。
「よし、穴の直径を広げるんだ。もしかしたら降りれるかもしれない」
「わかったぜ」
エレンは再び俺の大事な小剣で遠慮なくズカズカと穴を広げて行く。
その度に小石にぶつかって鈍い金属音が聞えると俺の神経もタダではいられなくなる。
もしや刃こぼれでもしたのではないと気が気でないのだ。
剣は刃こぼれしてしまったら使い物にならなくなる。
刀鍛冶で鍛え直すと言う修復方法もあるが名人クラスでないと元の切れ味は取り戻せない。
エレンの言う通り新しい武器を買い替えるのが一番だが、あの小剣には愛着があるのだ。
これまでの戦いの中で俺といっしょに戦って来た戦友のような存在だ。
だから、余計に見捨てるなんてことは俺には出来ない。
俺は祈るように小剣が無事に帰って来ることを願っていた。
「結構、穴が広がったぞ」
穴を見ると直径60センチほど広がっており、人が何とか通れるぐらいの穴になっていた。
エレンはランプを穴の中に入れて中を照らし出す。
すると、予想通り穴の入口は蓋状になっていることがわかった。
穴は真っすぐではなくやや傾斜がかっているので崖を降りるように下れそうだ。
「よし、俺が先に降りる」
「お前が先頭で大丈夫なのかよ」
「言い出しっぺは俺だからな。俺が一番に降りるべきだ」
「まあ、いいけどな」
ゴウはさっそく荷物を体に巻き付けて落ちないようにする。
ランプは腰に固定して足元を照らすように工夫することも忘れない。
そうなると他の人達の灯かりがなくて困ると思うのだが、ゴウが手に擦りつけた粉は蛍光を発する特殊な粉なのだ。
暗闇の中で移動する時に利用されるダンジョン探索用の専用の粉でヒカリゴケの特性を利用して開発されたものだ。
ダンジョン探索に出掛ける時はあたり前のように常備して行く。
「それじゃあ俺が先に降りて目印をつけるから、お前達はそれを頼りに降りて来てくれ」
「わかりました、リーダー。気をつけてください」
「任しておけ」
ゴウは右手で親指を立てて見せるとさっそく穴の中に入って行く。
滑り落ちないように慎重に手足を伸ばしながら壁の引っ掛かりを探す。
あいにく岩肌はゴツゴツと荒れていて手足を引っかけやくなっている。
ゴウの掴んだ手の場所は粉が発光していて緑色に光っていた。
「次は誰が降りるんだ?」
「僕とマークニットが続きます。カイトさん達は後からついて来てください」
ルミウス三世はゴウが残して行った目印を頼りに穴の下へ降りて行く。
次いでマークニットが続き俺達の番が来た。
「おい、カイト。いつまでしょ気ているんだ。小剣は無事だったろう」
「無事だったけどな。気が気でなかったんだぞ。俺の気持ちがわかるか?」
「まったくわからん」
傷心に浸っている俺を気にすることもなくしゃあしゃあと言ってのける、エレン。
まるで悪気がなかったかのように、かつ当然と言わんばかりに振る舞っている。
「役に立っただけでもいいじゃないか」と言いたげだ。
「この野郎、覚えてやがれよ」
「はいはい。それより次はカイトだ。さっさと降りろ」
俺は仕方なくマークニットに続いて穴の中へ降りて行く。
先頭を進んでいるゴウのランプの灯かりは遥か下で輝いていた。
その距離で30メートルぐらいあるだろうか。
まだまだ穴は続いているようで先が見えなかった。
「次は私が行く。セリーヌ、しんがりは任せたぞ」
「気をつけてくださいね、エレンさん」
エレンも俺に続いて穴の中へ降りて行く。
続くようにセリーヌもエレンの後を追い駆ける。
すると、エレンが俺の右手を踏みつけた。
「おい、エレン!早いぞ。俺が降りてから来い!」
不意に上を見上げるとエレンの巨大な尻が目の前に現れた。
ビキニアーマーを身に着けているのでパンツはほぼ紐状態。
そんな桃尻が俺を誘うかのようにプリプリと横に揺れ動く。
「ぶーっ!」
俺は思わず噴き出した。
この光景は体に良くない。
おばさんの尻だと言うことはわかっていてもエロ過ぎて興奮を覚える。
エレンの尻は見慣れたつもりでいたけれど、こんなシチュエーションになるのならば話は別だ。
何だか体が熱くなって来たし、呼吸も荒くなって来る。
「おい、カイト!いつまでそこにいるつもりだ。つっかえているんだからさっさと行け!」
「わ、わかってるよ。待ってろ」
すると上の方からセリーヌの疑うような声が聞えて来た。
「カイトさん。もしかしてエレンさんのお尻を見て興奮されているのですか?」
ギクリ。
「そ、そんなことある訳ないだろう。しょうもないことを言うな!」
上ずった声で慌てて否定をする、俺。
セリーヌの鋭いツッコミに返す言葉も見つからない。
セリーヌにはこの光景が見えているのだろうか。
これが女の勘と言うならば怖すぎて震えが起きる。
「何だよ、カイト。私の尻を見て興奮したのか?そんなに見たいなら見たいと素直に言え。いくらでも触らせてやるから」
エレンは誘うように桃尻を揺らせながら俺の顔に近づけて来る。
そして次の瞬間、プリンのような柔らかな感触が肌に触ると俺の顔を覆い尽くした。
「ぶーっ!息ができん。おい、エレン。尻を押しつけるな!」
「おい、カイト。そんなに激しく顔を動かすな。感じてしょうがない」
「何をふざけたことを言っているんだ!誰が好き好んでお前の尻に触るかよ!」
俺が強く否定するたびにエレンは尻をこれでもかと言うぐらいに押しつけて来る。
その柔らかな感触にちょっとだけ逝きそうになったが、ぐっとこらえて押し返す。
「おい、エレン。いい加減にしろ!これじゃあ下に降りられないだろう!」
「誘って来たのはカイトだろう。なら、遠慮するな。好きなだけ触っていいんだぞ」
「カイトさん。やっぱりエレンさんのお尻を見て興奮していたんですね!許せませんわ!」
勘違いしたのかセリーヌはひとり興奮しながら強引に下へ降りようとする。
エレンの手を踏みつけにしてお尻を押しつけながらエレンを乗り越えようと暴れる。
「おい、セリーヌ。尻を押しつけるんじゃねえ。苦しいだろう!」
「はじめにしたのはエレンさんですわ。これくら何ですか!場所を変わってください!」
セリーヌは強引にエレンの背後に滑り込んで下へ降りようともがく。
その度にエレンの尻が俺の顔にめり込み息を止めさせた。
「ぶーっ!いい加減にしろ!このままだと落ちるだろ!上に上がれ!」
「何をおっしゃられているんですか、カイトさん。エレンさんのお尻がそんなに気持ち良いですか?」
「そんな訳あるか!」
だいぶ気持ちいいけれど、それは言わないでおこう。
セリーヌの気を余計に荒立てるだけになるから。
俺は頭をエレンの尻の間にめり込ませて強引に押し上げた。
「アッ!」
するとエレンは色っぽい吐息をこぼしてとろけるような欲しがる目で俺を見つめる。
暗がりでよく見えないが頬は赤く染まっていて体が火照っているはずだ。
どことなしか目が潤んでいて満足気な様子にも見える。
「カイトさん。今何をしたのですか?エレンさんにいやらしいことをしたんじゃないですか?」
「な、何でもないよ」
「そんな訳ありませんよね。エレンさん、感じていましたし!」
暗がりから聞こえて来るセリーヌの語気はだいぶ荒いでいる。
恐らく鬼のような形相をしながらこちらを睨みつけているのだろう。
これ以上、セリーヌを刺激しても悪い方向に進むだけだ。
俺はセリーヌを安心させるような言葉を吐いた。
「セリーヌ。無事にここを出たらデートをしよう。デートはセリーヌもしたかっただろう?それにセリーヌの好きなものも買ってやる。だから落ち着け」
「男性がそうやって言い訳する時はやましいことがあった時だけですわ!もう、許しません!」
そう言い放ってセリーヌは自分の手を離した。
そうなれば必然とエレンの上にのしかかりエレンも耐え切れずに手を離す。
そして下にいた俺の上にセリーヌとエレンの全体重がのしかかった。
「ぐぅ。お、落ちる」
全身全霊の力で自分を支えてみるが抵抗も虚しく。
俺達は団子状になりながら穴の下へ真っ逆さまに落下して行った。
もちろん先へ進んでいたゴウ達も巻き込みながら――。




