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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第四章 再開するおばさん編
103/361

あるある102 「ロマンに無関心でいがち」

運命の神さまは右の道を選んだようだ。

小剣は右の道を指し示すように倒れている。

俺は小剣を拾い上げると鞘に納めてからゴウ達に指示を出す。


「まずは右の道から調べるぞ」

「おい、そんな決め方で本当に大丈夫なのかよ。もし、罠でも仕掛けてあったらどうするつもりだ?」

「その時はその時だ。この道が間違いだったことがわかる」


虱潰しではないがダンジョン攻略にはこの方法が一番いい。

明確な地図はないのだし、はじめから正解を選んで進めないからな。

たとえハズレを選んだとしても、それがハズレとわかっただけでも大きな成果だ。

それに今はルミウス三世の『空間認識』の特殊能力がある。

一度、通った道ははっきりとわかるからシンポス地下神殿の全貌が明らかになるのだ。

ルミウス三世はさっそく地下一階の構造を描き出して紙に記していた。


「まずは正解を導き出すことよりもシンポス地下神殿の全貌を明らかにすることの方が大事だ」

「まあ、俺達だけじゃ何もわからないしな。期待しているからな、ルミウス三世」


ゴウが期待を込めてルミウス三世の肩を叩くとルミウス三世は嬉しそうに笑みを浮かべた。

ようやく自分の特殊能力を発揮できる時が来たのだから余計に嬉しいのだろう。

ただマークニットは少しつまらなそうな顔を浮かべて羨ましそうにルミウス三世を見ていた。


「よし、それじゃあ前に進むぞ。遅れずについて来いよ」


再びゴウを先頭に俺、エレン、セリーヌ、ルミウス三世、マークニットと続く。

右の道は緩やかに左に曲がるように通路が伸びている。

住居区画とは違い扉は見当たらす通路が伸びているだけだった。

ただ通路の幅は5メートルほどあり小さい馬車なら十分に通り抜けられそうな道だった。


「ここは何もないんだな」

「この道はハズレなんでしょうか?」

「ハズレかハズレでないかは先に行けばわかるさ」


ひとり不安げな顔をしながら心配するマークニットを嗜めるように告げる。

まあ、モンスターも罠もないことが一番の救いだけどな。

ゴウは歩みを止めることなく奥へ奥へと進んで行く。

すると重厚な両開きの扉の前まで辿り着いた。


「ここで行き止まりのようだな」

「その扉の向こうに何があるかが問題だな」


両開きの扉は鉄で出来ており厚さが5㎝ほどある。

重さにして100㎏ぐらいはあるだろうか。

力を込めて押してみてもピクリとも動かない。


「ここは私の出番だな。カイト、下がっていろ」


そう言ってエレンは扉の前に立ちはだかると両手を扉に押しあてる。

そして全身全霊の力を込めて両開きの扉を押しはじめた。

鬼のような形相をしながらエレンの顔が真っ赤に染まっていく。

しかし、両開きの扉はピクリとも動かなかった。


「だーぁ。ダメだ、全然動かない」


力を出し切ったエレンは、糸の切れたマリオネットのようにその場にへたり込む。

その様子を見て今度はゴウが腕まくりをしながら前に出た。


「女には無理だ。俺に任せておけ」


ゴウもエレンと同じように両開きの扉に手を押しあてる。

そして深く深呼吸をすると全身の力を振り絞って両開きの扉を押す。

すると、両開きの扉が震え出して1㎝ほど動いた。

しかし、ゴウも力尽きてその場に倒れ込む。


「ダメだ。こんなに重たい扉ははじめてだ」

「お二人の力を持ってしても開かないなんて私達ではどうすることも出来ませんね」

「だな。これだけ重厚な扉を用意しているのだから、きっと中にはお宝があるはずなんだけど」


万策尽きるとはこういうことを言うのだろう。

エレンもゴウもこの中では一番の力持ちだ。

その二人の力を持ってしても開かないなんてどれだけ重い扉なんだ。

この中へ入るのは諦めて他の道を進んだ方がいいだろう。


「よし。ここは諦めよう」

「待ってください、カイトさん。もしかしたらこの扉、開くかもしれませんよ」


両開きの扉の前で何やら調べていたマークニットが俺を呼び止める。


「開くってどういう事だ?」

「この扉は押して開けるんじゃなくて扉を引いて開ける仕組みになっているんですよ。見てください、この部分」


マークニットが指した方を見ると両開きの扉の下にレールが走っているのが見て取れた。

頭を地面に押しつけながら両開きの扉の下を覗くと車輪が着いているのが見える。

車輪は等間隔に着いていて両開きの扉を支えていた。

この世界にある扉はほとんどが押して開くもので引いて開く扉は珍しい。

引く扉を使っているのは倉庫がほとんどで街中では見られない。


「引いて開ける扉なら押して開かないのも無理はないな」

「私達の力が弱かったってことじゃないな」


エレンもゴウも負け惜しみを言いながら両引きの扉を睨みつけた。


「お前達の言い訳はいい。それよりこの扉を開けるぞ」


引いて開ける扉とわかったところで重さは100㎏もあるのだ。

みんなの力を合わせないとビクともしないだろう。

エレンとゴウを中心に両開きの扉の片方に捕まる。

そして息を合わせて力を込めた。

すると、鉄が擦れるような鈍い音を立てながら両引きの片側の扉が動く。

30㎝ぐらい開けてから体制を整えてさらに扉を押し開けた。


「ぶはーっ。なんて重い扉なんだ」

「錆び付いているから余計に重くなっているのですわ」

「でも、何とか開いたな」


その場に倒れ込みながらお互いの顔を見合わせてから部屋の中へ視線を向ける。

灯かりが届いていないので全貌はわからないが、大きな空間が広がっていることはわかった。

それは自分達の声が響き渡っていたからだ。

ゴウはおもむろに立ち上がるとランプを持って部屋の中を照らした。

灯かりは3メートル四方にしか届かず部屋の全貌はわからない。

だが、目の前に何かの物陰が薄っすらと映った。


「何かあるぞ!」


ゴウがそのもの影の方へ駆けて行って灯かりを照らすと1平方メートルぐらいの木箱が置いてあった。

木箱はひとつではなく積み重なるようにいくつも置かれている。

すっかりと埃がまみれになっていて、その箱の中に何が入っているのかはわからない。

ゴウはランプを木箱の上に乗せると息を吹きかけて木箱の埃を払った。


「こいつは小麦の箱だな。木箱の表面に刻印がされている」

「こっちは大豆の箱だ」


俺はゴウの隣にあった木箱を調べて大きなため息とともにぼやいた。

すこし期待していただけにスカを食らったことで肩透かしにあったような気分になった。

ひとり違っていたのはエレンだった。

弄るように端から木箱を調べて行き中身を確かめていた。


「おい、エレン。いくら探してもお宝はないぞ。ここはどうやら食糧庫のようだからな」

「だから、探しているんだ。ここが食糧庫なら酒もあるだろう」


そっちか。

エレンにとってはブルー・アイよりも酒の方がお宝らしい。

安上りでいいけれど、その飲兵衛根性には官服する。

ハイエナが死肉を貪るような勢いで酒を探しているからだ。

酒ならいつも飲んでいるから十分だろうと思うのだが、まだ口にしたことのない酒を欲するのはあたり前の欲求なのだろう。

俺も見たことのないお宝は手が伸びるほど欲しいくらいだから。


「ダメだ。どこにも酒の箱がない。これだけ食料があるのに酒がないってのはどう言うことだ」

「だから、言ったろう。サーメット教は飲酒は厳禁だから酒なんて保存していないよ」

「とことんしょうもない奴らなんだな、サーメット教は。酒のありがたさがわからないなんて」


エレンはどっかりと腰を下ろして呆れたように呟いた。

まあ、サーメット教が禁酒を推奨していなかったらエレンのように酒に溺れる者も現れただろう。

酒は飲み過ぎれば人を堕落させるものになるだけにサーメット教も飲酒を禁じたのだ。

カイト軍団にも禁酒を取り入れてみようかな。

そうすればエレンのお酒依存も解消できるはずだ。


「とりあえずここは何の部屋なのかはわかったんだ。次へ進むぞ」


俺達は来た道を戻り、三叉路までやって来た。

順当に選ぶとすれば次は左の道だ。

何となくだが真ん中の道は先が続いているような気がするから後回しにするのがいい。

まずはこの階の全貌を明らかにすることが一番だ。


思っていたと通り左の道の先も食料保存庫だった。

造りは右の道の食料保存庫と同じで両引きの鉄の扉だった。

後でわかったことだが右の道と左の道は左右対称になっていたそうだ。

ルミウス三世が描いた構造図からわかったことだ。


「最後はこの真ん中の道だけだな。恐らくだがこの道の先に次の扉があるはずだ」

「それはいいが、何でモンスターがいないんだ?」

「あれだけ厳重な扉だったんだ。モンスターなんて入り込めないだろう」

「酒はないし、モンスターもいないんじゃ何の楽しみもないじゃないか」

「何もないってことが一番なんだ。何もないことをありがたいと思え」


全うなことを言ってもエレンに理解できる訳ない。

今もポカンとしながら訳も分からずに馬鹿面を浮かべている。

そんなエレンを尻目に俺はゴウと一緒に先へ進んで行った。

予想通りすぐに地下三階へ通じる扉の前までやって来た。

ここは地下一階と違って階を隔てる扉がある。

それは地下三階は他の階と違う場所であることを表している。

わざわざ扉で仕切りを設けるくらいだから大切な場所なのかもしれない。


「ここからが本番だぞ」


そう言ってゴウが扉を押し開けと地下三階へ通じる階段が姿を現した。

俺達は迷うことなく階段を降りて地下三階へ向かう。

50段ぐらいの階段を降りて行くと目の前に巨大な扉が立ちはだかった。

扉はこれまでの扉と違って豪華な装飾が施されいる。

中央にサーメット教の紋章が描かれていて金箔が貼られてあった。

大きさは幅5メートル高さ8メートルほどある両開きの巨大な扉。

材質は鉄製で重さは200キログラムほどあるだろうか、厚さも5センチぐらいだ。

明らかに、この先が特別な場所だと言うことがわかる。


「ようやく本命に行き着いたか」

「この先に何があるのかが問題だな」


俺達は扉の前に並ぶと両手をあてて力いっぱい押してみる。

すると、扉は鈍い音を立てながらゆっくりと開いた。

ここの扉の蝶番は錆び付いていたが扉の下に滑車が着いていて簡単に開けるようになっている。

それでも開けたのは20センチほどで、それ以上は重くて開かなかった。


「これだけ開けば十分だ。中に入るぞ」


20センチほど空いた隙間を通り抜けて部屋の中に入る。

細身のマークニットやルミウス三世、俺、ゴウはすんなり通れたが胸のデカいエレンとセリーヌは引っかかっていた。


「お前達、少し太ったんじゃないか?」

「太ったなんて言わないでください。それじゃあまるできれいじゃないって言っているみたいじゃないですか」

「私達の胸は成長したんだよ。触ってみるか?」


それ以上、胸が大きくなったらバランス的に見栄えが悪くなる。

胸は大きい方がいいが大き過ぎてもだめなのだ。

要はバランス。

体とのバランスで美が決まるのだ。

そんなことを頭の中で考えているとゴウ達が鼻の下を伸ばしながらエレン達を見ていた。


「まあ、いい眺めだこと」

「ほんとですね。酒場のお姉さま方もいいですけれどエレンさん達も生々しくていいですね」

「カイトが羨ましいよ。毎日、こんな景色を見られるのだから」

「お前らな――」


開いた口が塞がらないと言うことはこう言うことを言うのか。

おばさんをまとめることがどんなに大変なことか知らないだろう。

自分勝手だし、我が儘だし、酒ばかり飲んでいるし。

いいところなんて一つもないのだぞ。

無駄にエロスばっかり振り撒いて男達を惑わせる。

後始末をさせられる俺の身にもなってみろってんだ。


「ふーぅ。ようやく抜けられたぜ」

「もっとダイエットしようかしら」


無駄な努力は止めておけ。

痩せたところで美人になることはないのだから。

どうせ酒を飲んでリバウンドするのがオチだ。


「それよりもこの部屋は広いな。天井が見えないぞ」


ゴウがランプを掲げて天井を照らしてみるが暗闇で覆われていて見えない。

大声を上げて叫んでみると木霊のように声が反響して返って来た。

見えないのは天上ばかりでない。

部屋の壁も見えないほど大きな空間であることがわかる。

空気は少し湿っぽく肌に触る感覚は凛としていて冷たい。

何かがいる気配は全くなく俺達の話し声しか耳に届かなかった。


「とりあえず奥へ進んでみよう」


ゴウがランプを高く掲げながらなるべく遠くまで照らすようにする。

俺達はランプの灯かりに漏れないようにゴウの所へ寄り集まって団子状になる。

傍から見たらお化け屋敷に入って行く団体客のような状態だ。

モンスターがいないとは言え、どんな罠が仕掛けられているかわからないから、なるべく近くにいた方がいいだろう。

すると、先頭を歩いていたゴウが急に足を止めて屈みこんだ。


「どうした、ゴウ?」

「これを見てみろ。レッドカーペットが敷かれてある」

「カーペットぐらいどこにでもあるだろう。そんなしょうもないことをいちいち報告するな」


ゴウもついに頭がおかしくなったかと思いきやカーペットを触りながら真面目な顔で言った。


「違う。この刺繍をよく見ろ。こいつはセレスティア王国のジパール教が好んでよく用いる模様のひとつだ」

「どう言うことだ?」

「これは俺の考えだが、かつてサーメット教とジパール教の間には交流があったと予想できる」

「しかし、それじゃあ話が通らないぞ。ハウベル教が異国の商人達と交流を持ったのが最初だったんじゃないか?それより前にサーメット教がジパール教と交流を持っていたとでも言うのか?」


自分なりの考えを伝えて来るゴウだったが、自分でもよくわかっていないようだ。

頻りに小首を傾げながら困惑顔で俺を見つめる。

聞いてる俺も頭の中がこんがらがり、訳がわからなくなってしまった。

こういう時は一旦忘れて最初から考え直すのがいい。


ハーベイ王国に伝わっている伝承ではハーベイ王国には2つの宗教があった。

ひとつは東側に住んでいるサーメット教、もうひとつは西側に住んでいるハウベル教だ。

少数派のハウベル教は沿岸部に辿り着いた異国の商人達と交流を持つことで発展して行った。

それに恐れをなしたサーメット教がハウベル教を弾圧するため宗教戦争を起しとのこと。

ここまではいい。


問題はサーメット教がジパール教と繋がりがあったと言うことだ。

ジパール教と言えば多神教で階級制度をとっている珍しい宗教だ。

頂点に立つのが大司教で、その下に12人の司教が並ぶ。

さらにその下は身分の高い貴族などの信者達が位置する。

最下層は一般の信者で貴族以外の庶民達が支える形になっている。


一方でサーメット教は一神教で階級制度などはない。

サーメット神が中心にいて、信者達が周りに位置する。

食事の制限やお酒を禁止している部分を見ればジパール教よりも厳しい。

ただしサーメット教を信じるものならば誰でも信者になれる自由さがある。


もし1000年以上前からジパール教とサーメット教が交流を持っていたとすれば、ジパール教の影響を受けたと考えられる。

サーメット教が奴隷を囲っていたのはジパール教の階級制度を習ったからだと予想が立つ。

もしかしたらハウベル教を弾圧したのも奴隷を確保することが目的だったのかもしれない。

いずれにせよ歴史を大きく変えるような大発見をしたことは間違いないだろう。


「ゴウ。もしかしたら俺達は大発見をしたのかもしれない」

「ああ。この事実を明らかにすればハーベイ王国に伝わる歴史が覆るだろう」


俺とゴウが大発見に胸を躍らせていると水を差すようにエレンがツッコミを入れて来た。


「そんなしょうもないことどうだっていいだろう。それよりもブルー・アイだ。この部屋に隠しダンジョンの入口があるのだろう?なら、さっさと探そうぜ」

「お前にはこの大発見の価値がわからないのか。歴史が覆るんだぞ」

「歴史を覆すよりも私は酒を飲む方がいい。さっさとブルー・アイを見つけていっぱいやるぞ」

「ロマンのないやつだ」


エレンにとって歴史の価値よりも酒の価値の方が大きいようだ。

まあ、おばさんに歴史を理解しろってことの方が無理なのかもしれない。

そもそもおばさんってのは難しいことに苦手意識を持っている。

論理的に書かれている古文書や歴史書を見れば枕にして居眠りをするのがオチ。

難しい文字の羅列を見るだけで眠気が襲って来るタイプの人と同じなのだ。


「ゴウ。他に何かないか探してみよう」

「そうだな。もしかしたらもっと他にジパール教に関するものがあるかもしれない。ルミウス三世、マークニット、手を貸してくれ」

「僕達が歴史の第一発見者になるんですね。ワクワクします」

「俺達も有名人だ」

「そう言うことだ。お前達、隅々まで探せよ!」


期待に心を躍らせているルミウス三世とマークニットの肩に手を回してゴウが気合を入れる。

そんな俺達を尻目に冷ややかな視線を送って来るセリーヌは呆れたようすで大きなため息を吐く。

そして力なく長椅子に腰を下ろすとトイプーを膝の上に乗せて時間を潰す。

その隣ではエレンがだらしのない格好で長椅子にもたれかかっていた。

どうやらおばさんにはロマンの良さがわからないようだ。

ロマンは男の人生における醍醐味だ。

物語にドラマがあるようにロマンも人生の中にある。

かたやハーレムを望んだり、かたやお宝を望んだり、かたや最強を望む。

追い求めるものは実に様々だ。

だけど、そこには共通にしてロマンがあるのだ。

これ以上、ロマンについて語らないがロマンは男にとって人生そのものなのだ。


「これがサーメット神か。意外と普通だな」

「派手さがないのがサーメット神の特徴だ。ただこの像は真鍮製だぞ」


ゴウはランプを高く掲げて照らし出されたサーメット神に息を飲む。

祭壇の上部に張り付けられるように飾られてあったのはサーメット神の像。

1メートルほどの大きさがあり、今は埃を被っていて鈍く光を散乱させている。

この部屋を見渡すような位置に備え付けられてあり手で触れることはできない。

長いローブのようなものを纏い、頭に冠を身に着け両手を広げるようなポーズをとっている。

傍から見るとごく普通でどこかの僧侶と間違いそうになるが、これでも立派な神だ。

真鍮製であることを考慮すれば貴重なものであることは間違いない。


「これが盗賊に盗まれなかったことは奇跡だな」

「あれだけの仕掛けをしていたんだ。盗賊すらここへは辿り着かなかったのだろう」


ひとり腕を組みながら関心したように頷くゴウは壁を見上げながら吐息を漏らす。

ちょうど視線の先にはシンポス地下神殿の入口がある辺りだ。

シンポス地下神殿の入口を見つけられたのは俺の予想があたったから。

ただ、それは偶然と言っても他ならないだろう。

水の力で地下神殿の入口が開くなんて普通は考えもしないことなのだから。


「リーダー!こっちに階段があります!」


部屋の右隅にある扉の前でルミウス三世は手招きをしながらゴウを呼ぶ。

ゴウはランプを手に取りルミウス三世がいる右端の扉の間へまで駆け寄る。

ランプで照らし出された木製の片開きの扉は表面にサーメット教の紋章が彫刻されているもの。

簡易的な扉として利用されていたらしく蝶番が錆び付いていたが簡単に開くことが出来た。

扉の向こうにはルミウス三世が言ったように地下へ通じる階段が伸びている。

ランプを翳しても先は見えないほど深い。


「この下に何があると思う?」

「信者の住まい、食糧庫、祭壇と来たんだ。次は宝物庫あたりじゃないか」

「カイトさんが言うように大切なものほど手の届かない所に隠しますしね。その可能性が高いと思います」

「よし、先へ進むぞ」


ゴウの質問に俺が予想を語るとルミウス三世は同意して来る。

それを受けて俺達の中に一気に期待が高まる。

もし、この先に宝物庫があるとするならばジパール教に繋がるお宝が隠されているはずだ。

マークニットの調べていた反対側の扉はフェイクで扉の先はただの壁だった。

俺達は合流して階段を降りて行く。

その前にエレン達にも声をかけた。


「おい、お前らはどうする?」

「私は遠慮させてもらう」

「私も疲れてしまいましたわ。カイトさん達だけで行ってください」


エレンもセリーヌも長椅子に持たれたまま片手を上げて答える。

暗さが相まって表情に陰りが映り非常に疲れた様子に見えた。

まあ、この地下神殿にはモンスターがいないようだから別行動でも問題ないだろう。

それにやる気のない奴を連れて行ってもいまいち気分が乗らないからな。


俺とゴウ、ルミウス三世、マークニットの4人はさっそく階段を降りて地下4階へ向かう。

この階段も特段変わった様子もなく壁には燭台ようの窪みが等間隔にあるだけ。

道幅も3メートルほどあり高さも5メートルほどだ。

宝物を運んだであろうから、これくらいの大きさは必要だったのだろう。


地下4階の踊り場まで辿り着くと奥へ通じる通路を進み、とりわけ大きな両開きの扉の前までやって来た。

これまでの扉とは明らかに違っていて全体が金箔に包まれていて黄金色に輝いている。

両開きの扉は鉄製で重さは100キログラム程度あるだろうか、ちょっとやそっとのことじゃ動かせない。

扉の中心に彫刻されているサーメット教の紋章の周りに呪文のような古代文字が記されている。

しかし、それは魔法の封印がされている訳ではなく、あくまで飾りのようだった。


「この先にお宝があるんだな」

「ああ、これだけ御大層な扉を用意しているんだ。期待してもいいだろう」

「なんだかワクワクして来ました」

「俺も」


俺達は両開きの扉を見上げながら湧き上がる期待に胸を膨らませる。

この扉の先にあるお宝はまだ日の目を見ていない隠された財宝なのだ。

ジパール教とサーメット教を繋ぐお宝があるはず。

俺達が歴史の第一発見者となる訳だが、そんなことを考えると余計にワクワクが治まらない。

今も胸の鼓動が聞えるくらいドキドキと高まっている。

それはゴウ達も同じだったようで胸を撫でながら口元を緩ませていた。


「それじゃあ扉をあけるぞ」


ゴウの呼びかけで俺達は両開きの扉の前に並び両手を押しあてる。

そして、タイミングを合わせながら力を振り絞って両開きの扉を押し開く。

すると、両開きの扉は鉄をこすり合わせるような鈍い音を立てながら静かに開いた。


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