☆私たちの家族1
コミックス5巻発売(紙版2026.2.26・電子版2026.2.22)に伴い、番外編を投稿します(毎日更新·全2話)!完結巻です!
「ねぇ、ヨハン」
「なんだい、僕のかわいい奥さん」
子供を産んでからも、彼はこうやっていつもいつも甘い台詞を言う。
「ずっと、今まで言えずにいたことがあるの」
「ええ!? まだあったの。それは気付かなかったな。今までの僕は、君にとって言うに足る存在ではなかったのか」
「……まだ内容も言ってないんだけど」
今日はヴィルヘルム公爵家、つまり私の実家に来ている。
裏庭の一画で、四歳の娘のレイラと二歳の息子のヘンリーが、ボールを蹴って遊んでいる。
といっても、レイラはなぜかお気に入りになってしまったカムラとボールを蹴り合い、ヘンリーはまだ小さいので、ボールを蹴りながらどこまでも遠くへ行ってしまうのを使用人が追いかけてくれている。
なんて楽な育児なのかしら……。
私が追いかけなくてもなんとかなるなんて、前の世界ではあり得ない。
「レイラ、かわいいじゃない?」
「ああ、もちろんだ。ヘンリーもかわいいけど、レイラも君に似て最高にかわいい」
「もしもね、レイラに好きな人ができたとして――」
「ええ!? それは……想像するのが辛いな」
「どんな話をしたら自分のことを好きになってくれるのかなと毎日悩んで、好きで好きで仕方のない気持ちを抱えながら日々を過ごしていたとして」
「……凄まじい嫉妬に駆られてきたんだけど」
「それで、相手に見向きもしてもらえなかったら、どう思う?」
「……毒殺したいな」
カムラっぽい。
主従だからか、発想が似ているわよね。
きっと今のヨハンになら分かってもらえる。娘ができた、今のヨハンになら。
「私が前の世界から来るまでのライラは、あなたに対してそうだったのよ」
「――――――――!」
考えもしなかったって顔ね。
前の世界で私が過ごした四十年のお陰で愛し合えるんだと、昔言ってくれた。それは私には必要な言葉で……でも、九歳までのライラにとっては残酷な言葉でもあった。
私の中に眠るライラが、小さく悲鳴をあげた。やっぱり……私では駄目だったんだと。
「そうか。僕はずっと、あの日までのライラを否定してきたのか……」
眉を寄せてレイラを見る彼の目には、かつての私もまたよぎっているのだろうか。
「好きな人に好きになってもらえない。それはよくあることで仕方のないこと。あなたには、なんの非もないわ。でも、この胸の中の小さなライラが、たまに訴えてきていたのよ。私では駄目だったのねって。だから知っておいてほしくて。あの頃の私も、あなたが大好きだったんだって」
「ああ……」
羨ましくなるくらいに生き生きとした様子の弟の友達の真似をして、手すりを滑り台のようにして落ちた。
あの時、あの少女は女神様に祈った。
――私を、違う誰かに変えてください。ヨハネス様に好きになってもらえる、誰かに。
その気持ちを……この世界は汲んだのかしら。
「レイラを妊娠した時にね、実は何度も呼びかけていたの。女の子だったのなら、私になる前のライラちゃん出てきなさいって」
「え……ええ?」
「きっとパパとしてなら、あなたを愛してくれるわって」
「そ……うだったのか」
ヨハンの目が、少し赤くなる。
私も話していて少し目が潤んできた。
「あの子を産んでから、胸が痛まなくなったの。私だって好きだったんだって……たまに訴えてきていた胸の軋みが、なくなった」
「それは……」
「私の精神的な問題なのかもしれないし、違うのかもしれない。でも、全力で愛してあげて。私が乗っ取ってしまったこの身体から、出てこれたのかもしれないわ」
「……そうだな。僕にできるのは子供たちを愛することだけだ。気付かなくてごめん」
「言わなかったんだもの。気付かなくて当然よ」
「君が言わないことまで、僕は気付きたいんだよ」
そう言うとレイラの元へ向かって歩き、ぎゅうっと抱きしめた。
「パパ、レイラに好き好きしたくなっちゃったの?」
「ああ、レイラはかわいいからね。次はパパと遊んでくれ。カムラばっかりパパのお姫様と遊ぶなんて、ずるいよ」
「仕方ないわね。次は、パパと遊んであげるわ」
入れ替わりに、今度はカムラがこちらに来た。











