第二の人生
季節は本格的に冬へと移っていった。ショッピングモールはクリスマスイルミネーションに彩られ、夜空にはオリオン座が光っていた。去年買ったぶかぶかのコートがぴったりになっていて、知らない間にも自分は成長しているんだなと実感した。
心も体もどんどん、変わっていく。
自分に何ができるか、結局は分からないままだけど、時間は止まらずに進んでる。
二宮とのおそろいの時計も動き続けている。
エスカレーターを見るたびに、いつも、クツが運ばれてくることを期待してしまう。
二宮に会えなくなって、
さみしくないけど、つまらない。
そう、わたしの毎年の夏休みみたいに、たいくつなだけ。
そういうもんだと思えば、それなりに過ごせる。
そう思えばいいじゃん。
石像の二宮には会える。
ニューヨークにいる王子様の二宮は、本当はわたしのことなんか知らないのだから。記念に写真撮っておけばよかったって思ったけど、撮らなくてよかった。
心も体もどんどん、変わっていく。
いつか、ただの思い出になるから。
大丈夫。
こんな気持ちは石像には決して話せない。
クリスマスや年末になる前にやった方がいいって事で、まだ一ヶ月くらいしかたってないけど、ナミばあちゃんの四十九日っていう儀式をした。
ナミばあちゃんの骨をお墓に入れた。
ナミばあちゃんのお墓ができた。
<金次郎>
「これはすばらしい第二の人生だね」
久しぶりに管理人が現れた。
ボクは、ナミさんの墓石になった。
管理人は墓地を見渡して興味深そうにしている。
「何の用だい?」
「メリークリスマス。ちょっと早いけど君にプレゼントだ。いい知らせと悪い知らせを持ってきた。どっちから聞きたい?」
管理人は右手をボクの目の前に出す。今度はいいニュースから聞けと。
「じゃあ、いいニュース」
「了解。君と魂の契約をしたニューヨークの少年ね、意識を取り戻したよ。もう今は元気に走り回っているそうだ」
「え、だって、クリスマスが限界かもって」
「なんかね、元気になっちゃったみたい。君のおかげでいろんな細胞が刺激されたんじゃないの?」
「それは良かった」
「なかなかいい契約だったよ」
「そうだね」
「君の方も満足そうでなにより。まさか会いたい人に会えるとはね」
「ああ。最後は本当にありがとう。一時間、おまけしてくれて」
「え? おまけ? 何もしてないけど、そもそも私にそんなことできる権限はございません」
「またまた」
「いや、マジで。人間になった君の行動をいちいち見てるわけでもないし」
「え、じゃ、なんで」
「さあ。あ、でも」
「でも?」
「君があの子に会えた日は、サマータイムが終わる日だったね」
「サマータイム?」
「ニューヨークでは、夏時間ってやつを導入しててね。太陽が出てる時間を有効活用する制度さ」
「へえ」
「夏時間が終わったニューヨークはまあ、一時間、時間が戻るんだ。十一月の第一日曜日だったかな。日本とニューヨークの時差が十三時間から十四時間に変わる瞬間となる日だ。一時間増える」
「一時間増える・・・・・・つまり5時だと思ったら4時だったってことか」
「そうなるね」
「だからか」
すごい奇跡だ。
全てがボクに味方してくれたみたいだ。
「嬉しそうだね」
「ああ、すごく」
「ふーん。あ、そうだ。それで悪いニュースの方ね。ニューヨークの少年がね、佳夏を狙っているよ。あ、もちろん、女の子として好意を持って近づきたいって意味ね」
「なんで」
「繰り返し名前を呼び、想い続けて身体が記憶しちゃったみたいだね」
管理人はにやりと笑って手を振って消えた。
「悪いニュースか」
羨ましいような、嬉しいような、ちょっと悔しい不思議な気持ちだ。
ここに、ナミさんが眠っている。ここにいれば、ナミさんの遺骨を守れる。
墓参りに来た佳夏の成長をずっと見続けられる。
最高に幸せな場所に来られた。
ありがとう
佳夏。




