表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二宮くんの探しもの  作者: 牧田沙有狸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/18

ずっと探していたもの

<金次郎>

 どういうわけか、佳夏が来た。

 ボクのところに来た。

 石像のボクのところに。

「お父さんが区役所で働いててね、この辺に二宮金次郎の石像があるって言ってたの。再開発とか、道路を整備するとか、二宮が前に言ってたこととつながることがいっぱいあってね。・・・・・・なんて話しても、分かるのかな?」

 ちゃんと、聞いてるよ。

 そうだったんだ。会いに来てくれてありがとう。

 信じてくれてたんだ。

「想像してたより、小さいね。もっと小学生の子供の等身大で、わたしと同じくらいかと思った。でも会えた。よかった」

 それから、佳夏は何度か会いに来て、たわいもない話をして帰った。

 考えてみれば、ボクは佳夏のことをあまり知らなかった。

 ボクの話ばかりして佳夏のことを聞くことはなかったんだ。

 何が好きか何が苦手か、友達のこと、家族のこと、将来のこと。

 佳夏は石像のボクに話してくれた。

ボクは佳夏の話を聞くだけ。石像だから喋れない。会話はできない。

でも、対話をしている気持ちはある。

あの頃と一緒だ。

本当によく似ている。

もういい気がしてきた。

あの子に会えなくてもいい。

こうして、あの頃と同じような時間を過ごしてるだけで幸せだ。

これ以上のことは望めない。

この場所を離れても、悲しくない。

ありがとう佳夏。

今度、二宮として会うとき、言おう。

君に会えたから、もう充分だって。






<佳夏>

 学芸会は無事終わった。

 あとは、六年生だけの遠足とかで、全学年が参加する行事はもうない。

 ああ。もうすぐ卒業なんだな、って気がした。

 少しずつ、大人になっていくんだね。


夜、美織から電話がかかってきた。

わたしは子機を持って、自分の部屋に行った。

「佳夏、あのね、学校では言えないから電話したんだけど、絶対内緒にしてて」

「なに?」

「平山に告白された」

「えええええええ」

 文化祭で告白とか、そういうやつですか。やるな平山。

「平山も受験組でしょ。塾も一緒で前からいろいろ話してて、まあ気が合うかなって」

「好きなの?」

「うん」

「へえええ」

「お互い合格したら、ちゃんと付き合おうってことになった」

 深沢は振られたか。やっぱり同じ塾は強いな。

「そっか。おめでとうと言えばいいの? こういうの?」

「ありがとう。それでね、佳夏にお願いがあるんだ」

「何?」

「今度の日曜日、二人で神社に合格祈願しにいこうって話になって。全国統一テストも終わった後の週末だし、一区切りできるからって」

「ああ、デートですね」

「付き合ってないから、ほんと、神社に一緒に行くだけ」

「分かってるよ」

「ママには佳夏が一緒に行ってくれるって話になってて」

「え、もう言ってあるの」

「佳夏もほら、二宮とどこか行きなよ。私と一緒に行ったことにしていいから」

 え?

 美織がそんなこと言うと思わなかった。

 ふわふわしてる女の子。衣梨菜の恋愛話にも興味示さなくて、まだ恋なんか分かんないよねって言ってた美織。

 妄想というステップをふまずにリアルな恋愛を始めてる。

 女子同士でアリバイ作って親に内緒でデート。

 また、美織が遠くに行ってしまったような気がした。

「ほんと。ありがとう。じゃあ、誘ってみる。時間とかハッキリ分かったら合わせよう」

 よく分からない対抗心が芽生えた。

 今までの美織だったら、本当に平山が好きだったとしても、受験があるからと即答しなそう。わたしが二宮の話をしたから、デートまで約束してるんじゃないかと思えてしまう。美織が「わたしだって男の子と出かけたりします」と、わざわざ報告してるように聞こえた。だから、また二宮に会える保証はなかったけど、どうにかできる自信もないけど、美織と同じような事してやりたくなった。

衣梨菜じゃないけど、美織ばっかりズルいみたいな気持ちがあった。


 子機を戻しにリビングに戻った。

「何、発狂してたの?」

 お母さんに聞こえるほど大きな声で驚いてたか、わたし。

「別に、ああ、今度の日曜日に美織と出かけていい? 受験前に遊べるのこれが最後かもって言ってたから」

「どうぞ。いってらっしゃい」

 美織と出かけることに関しては、なんの詮索もされない。

 二宮と会えなくても、この日は出かけないとなあ。

「そうだ佳夏、ナミばあちゃんが面白いもの送って来たよ」

 お母さんが、白黒の古い写真を見せてきた。

「何、これ」

「子供の頃のナミばあちゃん」

わたしそっくりなモンペ姿の子が写っていた。背景は小学校の校庭。

似すぎてて、わたしの写真をわざと古い写真風に加工したみたい。

「そっくり」

「でしょ。だから、佳夏にあげるって。ナミばあちゃんの宝物」

「いいの? 宝物なのに」

「形見にしてほしいんじゃん」

「形見?」

「最近、調子よくないんだって」

「そうなの」

「まあ、涼しくなって、だいぶ落ち着いたみたいだけど。この間電話で佳夏のこと話して、二宮金次郎に興味持ってるって言ったら、送ってくれたのよ」

「二宮金次郎?」

 わたしは写真をもう一度見た。隅っこの方に、それらしいき像が写っていた。

 白黒でよく分からないけど、二宮だ。

二宮の二宮金次郎像だ。

「ナミばあちゃん、小学校にいた二宮金次郎像が初恋の人なんだって。かわいいよね。ずっと大事に持ってたんだってよ」

「金次郎像が初恋の人?」

「いいんじゃん。お母さんの友達に、初恋の人は天草四郎の蝋人形って人いるから」

「それはあまり参考にならないけど。けど、すごい・・・・・・」

すごいことが起きている。

写真を持つ手が思わずふるえる。

お母さんにバレないようにソファに座った。

 二宮の探してる、あの子がナミばあちゃん。

 そしてナミばあちゃんの初恋の人が、二宮!

 うわあああああ。

 もうまた叫びたい気分。

 年齢的に「あの子」はひいおばあちゃん世代だとは思った。それでわたしに似てるって、単純に考えたらナミばあちゃんだったり! って思ったことあったけど。

けど、二宮の話信じてなかったから、きちんと考えもしなかった。

でも、ナミばあちゃん側からそんな話聞くと信じたくなってきた。

もしかして、ナミばあちゃんが、二宮を呼んだのかな?

最期にもう一度会いたいって。

だから、わたしと二宮が出会えたのかも。

だって、こんな偶然って。

わたしに課せられた使命みたい。

 ドキドキしてきた。

 雷に打たれたみたいに、わたしの中に電気が走った。


 これだ。


 なんだか、よく分からないけど、見つけた気がする。

 ずっと探してたもの。

 わたしにできること。

 わたしにしかできないこと。

 よく分からない新しい感情に、よく分からないままでもいいから、何かをはじめられるのは人間だけだ。石像の気持ちが分かるなんて言えるのは、機械より人間だ。

ロボットに負けない。

自分の夢を見つけるために、

まず、二宮の願いを叶える。

「お母さん、日曜日、ナミばあちゃんの所にも行ってきていい? 美織が行きたいって行ってる神社、同じ路線にあった気がするから」

「いいよ。じゃあ、連絡しておくよ」



わたしは次の日、二宮の時計を持って石像の所へ行った。

「二宮、あの子を見つけたの。一緒に会いに行こう。次の日曜日、二人が出会ったショッピングモールで待ってる。エスカレーター、動く階段の近くのベンチで待ってるから。時間は、ちょっと別件でいろいろあるから、12時集合ね」

わたしは、石像によじ登って、本を持ってる方の手首に時計をはめた。

もちろん、1秒たりとも遅れないように時間を合わせて。

「日曜日まで雨は降らなそうだし、ツバメに取られないようにね」

伝わらなかったら、諦める。

伝わったら、信じ抜く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ