ダンジョン創世記0056
魔導スーツを纏った女の子、華奢な少女であるファルちゃんは、どう見ても文学少女風にて運動ができるように見えない。
そんなファルは本人の理解が完全に及ぶ前に武装させられ決闘の舞台へと上げられてしまった訳で…当然絶賛混乱中である。
「はわわわわっ!何がどうなってるでっすのぉぉっ!?
なんで私は、こんな可愛くないの着て此処へ立ってるんでぇっすかぁ?
分んないでぇっすぅぅぅぅっ!!」
うん、そうだろーねぇ…俺だって何で君が決闘なんてする羽目になるのか理解に苦しんでるんだからなぁ。
決闘場となっている広場の様子を統制室内のメインモニターで見ているんだがな、なんだか痛々しい…
御自分の御力にて確認も行えるだろうに『面倒じゃ』の1言で此処へ陣取っている神龍様もメインモニターを介して現場を見守っている状態だな。
此方側はファル1人に対して里側は馬鹿4人衆と上役の親族より7人が追加で参加し11人っとなっている。
1対11っと言う人数差もだが、11人の武装した鍛練を経た成人男性が武装したとは言え運動が不得手に見える少女と対峙しているのだ。
明らかに虐め以外に見えない状態だろう。
これを正当な決闘っとして里側の罪を問う所行などと曰われている現状に憤りを感じているのは俺だけではあるまい。
決闘の立会いにて訪れているドラゴンも不愉快そうにしている。
だが任された仕事は仕事として行うようで…
『では、これより決闘を執り行うこととする。
里側より選抜された11名とダンジョン使節団より選抜された1名以外の介入は許さぬ。
介入があった時点で、介入を行った者を我が断罪するものとする。
その際は介入者の命は問答無用で失うこととする。
これに対しての異は受け付けぬので覚悟するように』
ドラゴンが告げると、里長を含む数人が冷や汗を流している。
コヤツら…まさか本気で介入する気だったのか?
不利になったら割り込んでファルに攻撃でもするか?っと影で笑いながら告げてはいた。
冗談かと思っていたのだが…まさか、なぁ…
そんな里長達をドラゴンがチラッっと見た後で告げる。
『では、始めよ』っと。
いや、戦えっと言われても、戦い方など全く知らないファルが戦える筈もない訳で…
彼女から相手に対して向かって行くと言う選択肢はなかったりする。
だが馬鹿4人衆を含む里の代表者達も警戒してファルへの突撃は行わない。
何せ先程、侮っていたティアにこっ酷くやられたばかりだからなぁ。
そんな連中の内で馬鹿4人衆に動きがな。
何やらマジックアイテムのような物を取り出しているな、それを2人1組となって起動させようとしているみたいだ。
って、本気でそれを使用するつもりなのか?
何を使用しようとしているのかはスパイ・ダーにより此方には筒抜けとなっている。
ヤツらが使用しようとしているのは契約精霊が封じられているマジックアイテムだな。
里が存在する地に生息していた魔物を里長達の祖先が退治する時に使用したマジックアイテムなんだ。
これは精霊魔術に精通し人格的にも優れていた彼らの祖先が大精霊との契約にてマジックアイテムへと封じた代物なんだよ。
起動するには多大な魔力が必要であり、未熟な4人では1人での起動は不可能だったみたいだな。
2人掛りにて漸くマジックアイテムを起動させたは良いが、既に魔力が尽きて身動きもできない体たらくと来た。
いやいや決闘中に魔力切れで動けなくなるとは…何を考えてんだ、コイツら?
しかも召喚に成功して(してやったりっ!)っうドヤ顔なんだが…そのクラスの精霊はダンジョンにゴロゴロ居付いているんだがなぁ…ふぅ。
馬鹿4人衆により呼び出されたのは火精霊イフリートと風精霊ジンの2精霊だった。
確かに上位精霊であり脅威ではあるのだが…
『ううむぅ…久し振りに呼び出されたのだが…これは、どのような状況なのだ?
分るかカイエムよ?』
火精霊イフリートが風精霊ジンへと尋ねている。
『イッファームよ…長き封印の間に契約者は逝き子孫が我らを呼び出したとみえる。
辺りの風精霊によると、ちと困った事態のようだ』
『ほぉう、我ら火精霊は火がなくば顕現できぬ故に眷属が近くにおらぬ。
御主ならば眷属より情報を得られるのであろ?
この状況は何事なのだ?』
『うむ、眷属達によるとキャツらは神龍様下知による使者に仇なし、恩情にて行った決闘に敗れし者。
その結果へと異を唱え、再度決闘とさせ相手を非力な少女と無理矢理に決めたそうな。
詭弁を弄し神龍様を謀っておるつもりらしいが、ダンジョンのマスターが神龍様を諌めねば里は壊滅しておろうよ』
『なんだ、その事態は?
しかし、そのような召喚者では我らの契約者としての条件を果してはおるまいて。
どうしてくれようぞ?』
呼び出された精霊2体が打ち合わせを精霊語にて行うが、その時間は僅か数秒に過ぎない。
人には関知できないレベルの会話だが、俺達は容易くダンジョン機能にて理解できるがな。
そんな精霊達がファルへと攻撃を行わないのを不審に思い馬鹿が告げる。
「おい、何故小娘を攻撃せぬ!
お前達はコレに封じられた道具だろうがっ!直ちに小娘を攻撃しろっ!これは命令だっ!」っと、魔力切れで行き絶え々にもむ関わらず怒鳴り散らすが…相手は大精霊なんだがなぁ、矢張り馬鹿なのか?
それを聞いたイフリートのイッファームの眉がピクリと上がる。
『道具、そうか…道具か?そして我らへ命ずると?』
『ふむ、度し難いな、矢張り、これは…』
『うむ、そうなるであろうな』
イッファームとジンのカイエムが互いを見て頷くと宣言する。
『『呼び出し者は契約に値せず、古の盟約により我らの契約という衡は絶たれた!
故に我らを縛る者なし!』』っとな。
「馬鹿なぁっ!貴様らは我ら里と契約せし精霊の筈、何を勝手に契約を破棄しとるのだぁっ!」っと里長が唾を飛ばし喚くが…
『そう、契約により[契約に値せぬ者が呼び出し時には契約破棄]に従い破棄したまで』
『当然の帰結であろうよ、寧ろ祖先に恥じるが良かろうて』
っと2精霊は取り合わないが…なんでファルの方へと向かうかなぁ?
『して少女よ、そなた…中々の才能を有しておるようじゃ。
我と契約せぬか?』っとイッファームが。
『左様々、我らと契約する資格は十分に有しておろうな。
我とも契約願おう』っと、カイエムが。
「はわわわわわっ、私ぃっただの事務員でぇっすぅ~
精霊様と契約させて頂くなんてぇ大それたことぉなんてぇ無理ぃでぇっすぅぅぅぅっ!」
ファルが混乱して目を回さんばかりってな。なんぞ、この展開w
立会いのドラゴンも苦笑して告げる。
『これこれ、そこの2精霊よ、今は正式たる決闘場である。
加勢は禁じられておる故に、現在の契約は禁じることとなろうぞ。
戦わぬならば、決闘場より立ち退かれよ』
そう告げられ、渋々と退場して行くのだった。




