ダンジョン創世記0055
しかしスパイ・ダーに探らせて得た情報以上に里の状態は酷いのかもしれないな。
此処の里は、この地を塒にしていた魔物を里長達の祖先が退治して切り開いた土地なのだとか。
最初は平等に暮していたそうなのだが、年代を経る毎に初期に此処を切り開いた子孫達が幅を利かせるようにと変わって行ったらしいんだよ。
そして特権階級と化したヤツらは他の民を小作へと落とし税を集めて暮すようになって行く…
このカルデラ地帯には国と言う存在はない。
なので里毎に分かれて暮しているため里単位で暮らしが成り立っており、彼らのような存在の上には誰も居ない状態だな。
所謂、小コミュニティで王侯貴族を気取っているっと言っても過言ではあるまい。
まぁ天狗になって周りが見えてない程に逆上せ上がっているとも言えるか。
特に今の里長は、我侭放題に育って来た餓鬼が大人になったような存在であり、自尊心は高くとも自制心はないという傍迷惑な存在だ。
そんな彼が一旦でも神である神龍様を言い負かした訳だ。
(ふん、神龍っと曰っていても所詮はトカゲじゃな、恐るるに足らぬわっ!)などと思っているのだろう。
行いがぞんざいになって来ているが…知らんぞ、俺は。
里長がダンジョンへと赴いて1層探索より無事に帰還した2人組みへと向かう。
そして…
「貴様らへ栄誉を与えようぞ、決闘へ参加するのじゃ」っと曰った途端!
里長の髪が発光して消え去る。
その際に激痛でも発したのか、頭を抱えて のたうち回る里長。
「ぐわぁぁぁっ!熱いっ!熱いぃぃぃっ!なんじぁぁぁっ!」っと悲鳴を上げているのだが…
『我は助っ人を強要を許さぬと告げたわえ。
頭髪を毛根から焼き払うた故に、二度と髪は生えぬと思えっ!
次に逆ろうた場合は四肢を燃やしてくれようぞ、覚悟するのじゃな!』
激昂した神龍様を宥める俺達の身にもなれってっ!大変なんだぞ、このクソ馬鹿者がぁっ!
即死しなかっただけでも助かったと思うんだなっ!
里長に命じられた2人は、当然決闘には参加しないようだ。
馬鹿を見るように里長を見て鼻で笑っているな。
「ぐぬぬぬぬぬっ、貴様らぁぁぁっ」っと激昂しているが、家族に抑えられて連れられて行く。
結局は里の上役連中の親族より助っ人が数人ほど選出されて加わったようだな。
馬鹿4人衆の斬り捨てられた腕と足も繋げられて装備も更に一新させられて行く。
里から掻き集められた宝具などで武装していると見えるな。
あれって滅ぼされたダンジョンから奪ったダンジョンコアを使用して得た代物みたいで、そこそこの性能を誇るようだぞ。
まぁ、そこそこにしか過ぎないがな。
頭髪を失い真っ赤に腫れ上がった禿頭村長が憤りながらダンジョンからの使節団を見回す。
そして1人を指差し告げた。
「貴様じゃ、貴様を指名するぞぇ」っと、にたりって笑いつつ指名したのは…
「はへっ?私でっすのぉ?でも私、書類仕事しかぁできないでぇっすよぉ?」
いやいや、何でそれを言うかなぁ?だからこそ選ばれたって気付いてないのか?
の~んびりした穏やかさん的な少女である彼女が指定されたのだが、完全にデキレース的な構想で挑んで来た訳か。
外道過ぎないか、このツル禿げ里長野郎めがっ!
「その者は文官ぞっ!決闘などに参加させる訳にはっ!」っとフィレーユが言うが…
「神龍様の下知に逆らうので?」っとな。
いや、何で神龍様を挑発するようなことを吐くかなぁ、このツル禿げがぁっ!諌めるのにも限界があるんだぞっ!分って…ないんだろーなぁ、ふぅ。
「ふぇ?本当にでぇっすのぉ?みぃやぁぁぁっ!無理ぃでぇっすのぅぅぅぅっ!」
パタパタと愛い苦しく慌てる彼女に決闘の仕度を行わせることに。
流石に相手はフル装備で挑んで来ているので、此方が武装するのを…
「待て、何処へ連れて行くのじゃ?決闘を始めるぞい」
マジで言ってんのか?コヤツ?
「当然、そちらが選んだ者に決闘の準備を行わせるのですが?」
「ならん!直ぐに…うおっ!」
馬鹿がっ!
里長の目の前に巨大な火柱が立つ!
『何故、邪魔をした?返答次第ではソナタでも許さぬぞえ、ダンジョンマスターよ?』
いや、ヤツらに聞えるように告げなくも…態となのか?いや、態となんですね、理解しましたよ、はぁぁぁっ。
『神聖たる決闘の前で御座います故に、ご容赦願います。
そして里長とやら?
里を巻き込み自滅したいのかね?神を恐れぬ所行が過ぎてはおらぬか?我が神龍様をお諌めせねば既に里は滅んでおろうよ。
次は止めぬ故にな』
里方面がシーンっと静まり返った後で…里長を非難する怒声が轟く。
今迄に里の者から面と向かって非難されたことのない里長がたじろいでいるな。
少しは効いたとみえる。
忌々しそうに此方と里を見て黙る里長は悔しそうだ。
少しは溜飲が下がるっと言うもの。
そして里長に決闘相手として選ばれた少女ファルが魔導スーツを纏い現れる。
一応はヘルメットのバイザーを上げて顔を顕わにしているので本人であることは明白となっているからな、余計な横槍は入らない。
いや、入れさせない。
入れたら…っかさぁ…
『神龍様?』
『んっ?なんぞぇ?』
うん、実に良い笑顔ですねぇ~里長に周囲に火柱が立ってますが…うん、顳顬にも青筋が立っておられますね、はい。
そしてファルが決闘エリアへと誘われ半泣き状態で決闘へと挑むことに。
それを見ている使節団の者達は激発寸前である。
いや、里の面々が上役達を見る目も厳しいのだが、里長は平然としているな。
上役達の中にはヤバイと分ってソワソワしている者達の姿も見受けられる。
彼らの中に正しく生きて来た者達が居るのならば手心を加えることも視野に入れるところだが…う~ん、全員が真っ黒、黒助ってなぁ~
そう言えば…昔に真っ黒、黒助に類似した代物を見たような…
封印されし記憶にて定かではないが、古い民家にてトイレへと続く通路は日中でも薄暗い。
そこへと到れば…うぞぞぞぞぞっ!っと動く黒い影が…うん、手の平大の毛むくじゃらな巨大蜘蛛がぁぁぁっ!
(実話だったりします)
うわっ!嫌な記憶だけが蘇るなぁぁぁっ!
道理で蜘蛛に対する嫌悪感が強い訳だっ!記憶封印をも押し退ける程のトラウマって…ぐっすん。
そんなことを思っている間に決闘の準備が整ったようだな。
しかし、大丈夫か、ファルよ…




