ダンジョン創世記0049
拠点から出た使節団の一行が森の中を移動して行く。
その移動して行く姿を伺う者が居たら異様な光景に驚き恐れ慄くやもしれない。
いや、それは使節団一行自体の身姿と言うことではないのだ。
実は馬車などを伴うこととなったため、それが通る道を造らねばならなくなってしまったことが原因だ。
流石に木々の蔽い茂る森の中を馬車が通るスペースなどなく、木の根が這い足場が悪い。
いや木の根がなくとも瓦礫や倒木などの障害物もあるし地面自体が自体が凸凹して平らではないのだ。
一応はサスペンションやダンパーなどの衝撃吸収機構以外にも魔導具を用いた衝撃除去機能も搭載された馬車ではある。
それでも整備されていない森の中を通過するようには造られてはいない。
そんな森の中を問題なく馬車を伴い進んで行く一行が異様に見えない筈もないではないか。
そしてもし一行に伴って移動していれば、その異様な光景が更に極まることになるだろう。
なにせ木々が自然に左右へと別れ木の根が除かれて行く。
地は平らに変化し瓦礫や倒木などが消え去って行くのである。
確かに一行には精霊魔術を行使可能なエルフ達が同行してはいるが、術を行使したにしては道が整備されるスピードが早過ぎる。
それにだ、一行が移動する道程全てを整備しつつ同時に使節団を導くなどは不可能と言って良いだろう。
実力的にもだが、だいたい精神力的に持たずに倒れる術者が続出してしまうであろう。
つまり術にて行うには無理なのだ。
いや、時間を掛ければ不可能ではないが、一行の移動と共に行うなどは超常現象と言われても言い逃れはできないであろう。
まぁ…ある意味、超常現象なのだが…
そうカルデラ地帯はダンジョンの一部である0層なのだ。
つまりはダンジョン機能により道を整えながら一行は進んでいるということなのである。
それは絡繰を知っている者達には納得できる光景かも知れないが、知らぬ者達にとっては驚きの道程と言って良いだろう。
なにせヒョイひょいと木々が左右に別れるように移動するが、それは森全体が割れるように地面ごと別れているのだ。
なので木々が強引に移動して木々の間が詰まるなどと言った現象は発生しない。
木々の1本1本がトレントという生きた木の魔樹と化し己の力で移動したならば、移動しない木々との間が狭まることとなったであろう。
さすれば下生えに対する影響もだが、空間が圧迫されたことによる光合成の阻害なども発生したやもしれない。
だが地面自体が移動したことで環境自体に変化は起こってはいないと言えよう。
まぁ、森周辺の土地が多少狭まったりはしているが、馬車が1台擦れ違う程度の幅が左右にそれぞれ発生した程度なので整備されてもいない土地なので気付かれることもないだろうさ。
そして使節団が通った道には幻の木々が生えて行き道を蔽い隠して行くのだ。
そう、使節団が進む先にて森が当然っと言ったように左右へと退き、通過した途端に木々が道を隠すように蔽い茂って行くという光景が展開されつつ一行が森を進んでいるっと言う訳だ。
ダンジョンの者でない者達ならば、例え絡繰を知っている者であってもダンジョンの力に恐れ慄くことだろう。
そして普通にカルデラ地帯へと住まう者達はカルデラ地帯がダンジョンへと取り込まれ0層と化していることをしらないのだ。
さすれば使節団が進む光景に出くわせば仰天することは必須と言えよう。
それを防ぐためにも使節団が進む先々に人避けの結界を施しているのが現状だ。
無論、全てダンジョンの機能を駆使しつつ行っている作業であり、使節団は整えられた道程に沿って進むだけなのだがな。
実際、護衛部隊は飾りだったりする。
なにせダンジョン内なのだから統制室にてダンジョン制御として道程を整え危険を排除している。
魔物や魔獣に獣などは一行の下へと赴こうとはしない。
全て統制室にて一行周辺より立ち去るように制御しているので当然であろう。
これはクリチャーとして命じている訳ではない。
当然取り込む形で統合した0層には元から生息していた生き物も多く、そのような生き物はダンジョンの制御下にないのだ。
だが魔導具などで生物を誘導したりは行える、ならば魔導具ていどで行えることがダンジョン機能で行えぬ筈がなかろう。
なのでダンジョン機能にて住まう者達を誘導して使節団より遠ざけているという訳だ。
これは使節団の者達には告げていない。
そんなことをすれば出番っと言って張り切って出て行ったティアあたりが拗ねるだろうからなぁ。
だが無為に戦闘行為を行わせる訳には行かないのだよ。
アヤツらが戦えば自然環境に対する影響がデカ過ぎるのでな。
下手したら森が1つ消滅してしまい兼ねないのだから無闇に戦わせるのは避けるべきだろう。
だが里に辿り着いた時に護衛部隊を伴っていれば舐められることはあるまい。
軍事的示威行為的な行動とも言えるが、それには理由があるのだ。
元々此処へ現れたダンジョンと言うのはレベルを上げる前に見付かり討伐され続けていた歴史がある。
つまりダンジョンはコアを得るための獲物であり弱い存在という認識が彼らには刷り込まれていると言って良いだろう。
つまりは端から俺達を侮っていると言う訳だな。
虎の威を借る狐ではなく、神龍様の威を借るダンジョンっと言った認識にしか過ぎないのだよ。
っと言ってダンジョンの現状を素直に告げるのも躊躇われる。
何故ならば、今度は逆にダンジョンの力を知り恐れ慄き敵意を向けられる可能性があるからだ。
だから此方の力を適度に晒しつつ相手に譲歩を求めて行くしかあるまい。
一応は声で、此方から提示できる交易品などは軽く告げてはある。
その内容は里々の上層部のみが知る情報である筈であったが、何時の間にか里人の知ることとなっているようである。
って、此方から情報操作して人々に情報を流したのだがな。
ま、人の口に戸は立てられぬと言われるように、情報統制などは容易く行えぬのは世の常だからダンジョンの仕業とは気付かれてはいない。
なのでダンジョンが影で暗躍できる程の力を得ているとは露にも思ってはおらず、如何にダンジョンよりせしめることができるか…そのようにしか考えていないのが現状だ。
まぁ、それを含めて全てが此方に筒抜けなのだがな。
そのような現状で武装もせずに交渉を行う者達のみを送り込めば威圧して来るのは必須と言えるだろう。
だから護衛部隊を付けたのだが…ティア辺りは純粋に護衛と思っており、戦果を上げれると張り切っているからなぁ、はぁぁぁっ。




