ダンジョン創世記0027
眠りから覚めたように動き始めたドラゴンなのだが…先程までは神像とでも言える置物が設置されているような感じで、明らかに生物とは思えなかったのだが…今は生き物としての息吹が感じられる状態となっていた。
殺られる!?っと思ってしまったが、潜入し見付かったスパイ・ダーを害する気配が見えない。
一体、どういうことなのだろうか?
『ふうむ…害意は見受けられぬか?ダンジョンから送り出された存在にしては実に珍しく興味深い代物よのぅ』
そのように告げたドラゴンは、シゲシゲとスパイ・ダーを観察している模様。
ドラゴンに見られているスパイ・ダーは射竦められたが如く身動きできない状態ではあるが、その探知能力をフル稼働させて辺りを探査し続けている。
流石と言えば良いのだろうか?
生憎なことにスパイ・ダー自体には音声などを発する機能などは存在しない。
情報を伝達するのは転移機能に類する力で中継ポイントへ思念を送る方式を取っており、対応可能な固体か物質が必要となる。
此方へは中継ポイントとして設置された物質経由にて情報が転送されており、それを最終的にバイオコンピュータが受け取る形とっている訳だ。
つまり現在のスパイ・ダーには、ドラゴンとの意思表示を行う手段が…
「主様、スパイ・ダー経由にて、あのドラゴンとコンタクトなされては如何でしょうか?」
ふぁっ!?
ドラゴンとのコンタクトをスパイ・ダー経由にて行うのは不可能だと思っていた矢先にペシュエより受けた提案なのだが…どゆことぉっ!?
「いや、そのなぁペシュエ…スパイ・ダーって外部へ意思を伝える手段って持っているのか?
発声器官なんか持っていなかった筈だけど…」
不思議に思い尋ねると、ペシュエが「あっ!」って顔で俺を見た後に告げてきた。
「これは失礼致しました!
スパイ・ダーには魔力派に思念を乗せて対象となる者へ意思を伝達する念話の一種を行えるのです。
ですので、その力を用いてドラゴンとの意思疎通を試みては如何かと愚考いたしました」っと、恐縮したように。
なるほど…ドラゴンも念話のような感じで思念をスパイ・ダーへ送っている状態となっている。
このことはスパイ・ダーより齎された情報から判明しているんだけどな。
まぁ…あの口で人と同じ言葉を発するのは厳しいだろうしなぁ…
そんなことを考えていると…
『ふむ、言葉を解さぬか…』っとドラゴンが言葉を漏らした…
なので、咄嗟にスパイ・ダーを介してドラゴンへと。
『あ、済みません!少し宜しいでしょうか!』って告げてしまっていた。
『ぬぅっ!?』
突然、意思疎通不可能と判断したスパイ・ダーより発せられた思念に驚き声を漏らしたドラゴンが、興味深げにスパイ・ダーを見詰める。
『高度な思考など不可能と思えるが…何ヤツ?』っと、戸惑ったように問い質されてしまったよ。
『こ、これは…失礼しました』って思わず威圧に負けてドモリつつも返し続ける。
『私、この地へダンジョンを開放してしまいましたドラクルと申します。
突然に許可なく神殿へと立ち入りましたことを謝罪いたします、平にご容赦の程を。
また直接ではなく、この者を介して御挨拶差し上げる段、何とぞ御許し願いますでしようか?』
相手は明らかに格上だと思われるからなぁ、謙って対応すべきだろうさ。
『ふぅむ…此処にはおらぬと?』
懐疑的な目でスパイ・ダーを見つつ尋ねてきたよ。
『ええ、別の場所より、この者を通して言上さしあげております。
何せ私は制約にて止められておる身なれば、御神体が御座す場へと赴くことができませぬ故に』
『ほほぅ…もしや…、そなた、ダンジョンマスターかえ?』
っ!悟られたかっ!何故?…い、いや、此処は誤魔化すのは拙いか…下手に勘繰られるのは悪手だと思われるな。
『左様で御座います。
ですが!ですが…私に敵対する意思は御座いませぬ!
この地へとダンジョンを開放いたしましたのも、私の意図ではないのです!
ですので!平に、なにとぞぉ、平にぃぃぃっ!』
い、いや…醜い程に狼狽えましたよ、ええ、そりゃぁねぇ…だってさぁ、ダンジョンマスターって伝えた途端に発せられたドラゴンからの威圧って…ガクブル。
『むぅぅぅっ…敵対する意思なしと?
今迄に現れたダンジョンっと言う物から出でた輩は問答無用にて襲い掛かって来たものだが、はて?』
疑問に思ったためか威圧を収めてくれたよ、ホッ。
俺はダンジョンマスターとして召喚されてからの経緯をドラゴン…いや、神龍様へと伝えることに。
黙って俺の説明を聞かれていた神龍様だったのだが…
『むぅっ…ダンジョンとは、そのような存在であったか…
生きるために糧を得るは自然の摂理ではあるが、それを逆手にとっての所行を強いるとは…如何なる者の企みであろうや?』
いや、それは俺も知りたいところだけれども…全く手掛かりが、ねぇいっ…
『そのような理由にて呼ばれ、我らに敵対せぬのならば良かろう』
『御信用して頂けるので?』
なにせ証拠などは何もない訳で、謀っていないとの保証もないのだから…
『ふっ、戯け。
我を何だと思っておるのだ?
これでも神の端くれよ、謀られる程に落ちぶられてはおらぬはっ!』
そう告げられ、面白そうに笑われてしまったよ、参ったね、こりぁ。




