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3/5

それ。思ってたのと違う

俺の住んでいる町はまあまあの田舎である。


町の鬼門に当たる北東部にはうちの神社があり、周辺は森で囲まれている。


民家のほとんどない田畑の中を、俺は2時間ぐらい探して回った。

が、ハチはどこにもいなかった。


時計を見るともう10時が近い。


小雨が降りしきる夜。

足元は地面から跳ねる泥でかなり汚れ、テンションが下がる。


まあ、ぜったい大怪我をすると決まったわけではないし、帰るか……。


そう思い、方向転換した時だった。


ッファーーーア!!


微かだか、どこかからネコの叫び声が聞こえた。


いた!けど。


「どっちだ……」


かなり遠い。

方角すら曖昧だが、俺は小走りにそちらに向かった。


どこだ。


田舎道の心もとない街灯だけでは、ネコがどこにいるかなんて分からない。


「ハチーー!」


ハチが自分の名前を『ハチ』と認識しているかどうかは怪しい。


しかし他に方法もないので、俺は大声でその名を叫んだ。


こういう時、田舎はいい。


周辺に民家はほとんどない。


しかも今は降りしきる雨で、すぐにかき消される。


くそっ。どこだ?


フギャオオーー!!!


すぐ近くから叫び声が聞こえた。


素早く周りに目をやると、そこには道祖神(最近知った)の小さな祠の屋根の上。


背中の毛を逆立て、3倍ぐらいに膨れ上がった尻尾を立てた後ろ姿。


「ハチ!!」


「シャァアアー!!」


ハチは闇に向かって叫んでいる。


……ん?

俺は周囲に異様な気配を感じた。


「え!?」


それまで気づかなかったが、周辺にはハチ以外にもネコが何頭もいて、皆同じ方向に向かって毛を逆立てている。


ハチが飛んだ。

闇に向かって。


「ケンカやめろーー!!」


俺は思わず叫んだ。


が、そこでふと気づいた。


……。


猫同士のケンカじゃなくね?


祠の向こう側からフギャーー!!と叫ぶ声が聞こえ、ハチが飛ばされてきた。


「ハチ!! 大丈夫かーー!」


ニャー!


ニャニャーー!!


周りの猫たちも興奮して叫んでいる。


が、威嚇するばかりで飛び込むネコはいない。


俺は駆け寄ってハチを抱き上げようとした。


が、すぐにスタッと立ち上がり、ハチは再び祠の影に飛び込んでいった。


「お、おい!」


オロロロロ……ロ……ン……


え?


これ何の音? 声?


ガアアア……!!!


「な、なんだ!!?」


街灯が激しく明滅し、消えた。


「うわっ!……停電!」


周辺は田んぼ。

唯一の光源を失い、俺の視界はゼロになる。


俺はすぐにスマホのライトで祠の方を照らした。


雨が少し激しくなってきている。


ニャーーニャー!!

ニャーニャー

にゃーー!!


周りの猫たちの声がひときわ大きくなった。


オロロルルアアアァァ……!


また聞こえた!なんだこの低く響く音!


シャァァアアアーー!!


ハチの声が聞こえた瞬間。


バチッ!!


祠の向こうで何かが光り……


ド……ッ


ハチが飛ばされてきた。


「ハチ!!??」


今度は俺の叫び声に、一切反応せず横たわっている。


光の中で照らされているハチの身体に、大粒の雨が降り注いでいる。


ウォォォオオォオ


またあの音が、ひと際大きく響いてきた!


その瞬間。


ニャー!!

ニャニャニャ!!

ニャーー!!


周りにいたネコたちが一斉に散らばり、逃げ始めた。


俺はハチに駆け寄り、その体を抱き上げた。


「うお、重……!」


力の抜けているネコの身体は、さながら軟体動物のごとし。


俺は傘を投げ出し、スマホをポケットに突っ込む。


そして両手でハチの身体をガシッと抱え込む。


「逃げるぞー!!!」


向こう側に見えている街灯に向かい、後ろを振り返ることもなく走り出した。


やばいやばいやばい。


暗くてまったく見えないけど、これはヤバい。


また大怪我してんじゃないか!?


とりあえず家まで走る!!


俺は10キロ近くもある巨大ネコを抱えながら必死で神社に向かって駆けた。


「くそ……。さっきのあれはなんだ!」


最近野犬が出たという話は聞いたことがない。


野生動物か?

イノシシやイタチとかはたまに凶暴なのがいるしな……!


手がしびれてきた。


まったく力の入っていないハチの身体を落とさないように集中する。


少し足元がおぼつかなくなってきた、その時。


ビュンッ


「ん!?」


闇の中で何かとすれ違った気がした。


一瞬だけ振り向いてみたが、そこには闇の中に降り注ぐ雨粒以外、なにも確認できなかった。


カッ


その瞬間、周囲が光った。


「うわっ」


ドン!!

……ゴロゴロゴロ


「雷か……脅かさないでくれ」


遥か後ろの方に落ちた雷で、うちの神社の参道にある鳥居が浮かび上がる。


「婆ちゃーーん!!」


俺は階段を駆け上がった。

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