表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/52

切り抜きが出回った日


 配信が終わった夜。

 レンはドロップアイテムの整理をしながら、スマホを見た。

 チャンネルの通知が、なぜかずっと鳴っている。

「……なんだ?」

 登録者数を確認した。

 8人 → 94人

「え‥」

 もう一度見た。

 94人

「え??なんでさ?!」



 原因はすぐにわかった。

 SNSのダンジョン動画配信サービスで、一本の切り抜き動画が出回っていた。


 そのタイトルはこれだ。

『登録者5人のEランク配信者、コメント欄の謎ロールプレイ勢に導かれてDランク上位モンスターを秒殺する動画』

 ちなみに再生数、六万。


「……なんで」

 コメント欄を見た。


「コメント欄のロールプレイ勢の民度が高すぎる」

「古代龍バハムートさん普通に有能で草」

「死神ネクロスさんの『今日も仕事なし』が毎回面白い」


「主がいちいちツッコミ入れるのが良い」

「あと雷魔法どこで覚えたんこの人」

「スパチャ一千万のくだり見て腹抱えて笑った」

「登録してきた」


「ほとんどコメント欄が主役になってる……」

 レンはしばらく画面を眺めて、それからそっとスマホを置いた。



 翌朝。

 配信を開始すると、いつもの常連たちが集まった。

 そして。


【dungeon_watch】が入室しました

【探索者志望くん】が入室しました

【新規さん1】が入室しました

【新規さん2】が入室しました

【新規さん3】が入室しました

【切り抜き見た】が入室しました

【切り抜き見た2】が入室しました

【切り抜き見た3】が入室しました


 視聴者数が、開始三十秒で二十を超えた。

「え、なんか今日多い……」


【切り抜き見た】:切り抜きから来ました

【切り抜き見た2】:同じく

【新規さん1】:死神ネクロスさんいますか

【死神ネクロス】:いる

【新規さん1】:本物だ

【切り抜き見た3】:古代龍バハムートさんに会いたくて来ました

【古代龍バハムート】:……来たのか

【切り抜き見た3】:来ました

【古代龍バハムート】:……そうか

【精霊王シルフィード】:バハムートさんちょっと照れてる!

【古代龍バハムート】:照れていない


「常連さんたちに会いに来てくれた方がいる……なんかすごい状況だ」


【魔王ゼルディア】:我々が目的か

【切り抜き見た2】:半分はそうです

【魔王ゼルディア】:もう半分は?

【切り抜き見た2】:もう半分は配信者さんのツッコミが好きです

【魔王ゼルディア】:なるほど


「ツッコミが好き……」

 レンは少し困った顔をしたが、まあいいかと思った。


「えーと、いらっしゃいませ。今日も地下三階に行きます。地味な探索回になるかもしれないですが」


【切り抜き見た】:地味でも見ます

【切り抜き見た3】:見ます

【新規さん1】:見ます

【精霊王シルフィード】:みんな見るって!!うれしい!!



 地下三階、中層エリア。

 今日は新しい通路の探索だ。

 レンが慎重に進んでいると、壁の一部が光っているのに気づいた。


「あ、なんだろうこれ」

 近づくと、石の隙間から薄い光が漏れている。


【賢神ソフィア】:魔力の溜まり場だ。掘ればマナストーンが採れる可能性がある

【切り抜き見た2】:賢神ソフィアさんの解説いつも的確すぎる

【賢神ソフィア】:当然だ

【切り抜き見た2】:当然って言える人初めて見た

【探索者志望くん】:ソフィアさんの知識量どこで仕入れたんですか

【賢神ソフィア】:一万年の蓄積だ

【探索者志望くん】:一万年……ロールプレイ設定ガチすぎる

【賢神ソフィア】:いやロールプレイではない

【探索者志望くん】:え

【魔王ゼルディア】:気にするな

【探索者志望くん】:気になりますって!


「ソフィアさん、たまにそういうこと言いますよね」


【賢神ソフィア】:……採掘に集中しろ


「はい、すいません」

(話をそらされた‥)


 レンは持ってきた簡易採掘ツールを取り出した。

 丁寧に削っていくと、青白く光る石が出てきた。

「あ、出た。マナストーンだ」


【賢神ソフィア】:三つ採れるはずだ。慎重にやれ

【古代龍バハムート】:力を入れすぎると割れる

【精霊王シルフィード】:丁寧に!丁寧に!

【戦神アレス】:やや内角を狙い、力強く叩け

【精霊王シルフィード】:アレスさんは黙って!

【戦神アレス】:なぜだ

【切り抜き見た】:精霊王さんと戦神さんのやりとりが毎回面白い

【切り抜き見た2】:コメント欄だけでコントになってる


 一つ目、慎重に取り出す。成功。

 二つ目、少しひやっとしたが成功。

 三つ目。

「……よし」

 きれいに採れた。


【精霊王シルフィード】:やったー!!

【賢神ソフィア】:よし

【切り抜き見た3】:この達成感の共有がいいんだよな

【新規さん1】:分かる。一緒に冒険してる感じがする


 レンは三つのマナストーンを袋にしまいながら、コメント欄を見た。

「なんか……すごく増えてますね、今日」

【魔王ゼルディア】:切り抜きが回ったらしい

「見ました。なんでバズったんだろう」


【魔王ゼルディア】:さあな

【古代龍バハムート】:コメント欄のせいだろう

「自分で言う」


【古代龍バハムート】:事実だからな


「まあ、見てくれる人が増えるのは嬉しいです。新しく来てくれた方も、ゆっくりしていってください」


【切り抜き見た】:はい

【切り抜き見た2】:はい

【切り抜き見た3】:はい!

【新規さんたち全員】:はい

【精霊王シルフィード】:みんないい人!!



 配信終了。

 本日の同時視聴者数:最大三十一人。

 チャンネル登録者数:94人 → 247人

「……増えすぎでは?」

 レンは画面を見て、しばらく固まった。

 昨日まで一桁だったのに。

(何が起きているんだ)

 困惑しながらも、悪い気はしなかった。

 スマホに通知が来た。

 協会の田中係長からだった。


『神代くん、チャンネル伸びてるな。何かあったら相談しろ。以上』

「……係長、見てたのか」

 短いメッセージだったが、なんとなく安心した。



 分析室では、ユイが切り抜き動画を見ていた。

 仕事中だったが、木村さんが送ってきたリンクをついクリックしてしまった。

(六万再生……)

 コメント欄を流し見する。

 視聴者たちが口を揃えて言っているのは、戦闘の凄さよりコメント欄の面白さだ。


 でもユイが気になるのは別のところだった。

(アイアンウルフを倒した動き、改めて見ると……)

 スローで確認する。

 回避のタイミング、そしえ雷魔法の発動点と剣を叩き込む角度。

(全部、最適解だ)


 偶然ではない。かといって計算でもない。

 まるで体が勝手に知っているような、そういう動きだ。

 ユイはメモに書き込んだ。

【追記:行動パターンに学習の形跡がない。最初から知っているような精度】

 書いてから、自分でも少し笑った。

「最初から知ってるって、何をさ‥」

 でも消せなかった。



 異世界のどこか。

「切り抜きとやらが広まったらしい」とバハムートが言った。

「人間界の情報伝達は速いな」と賢神ソフィアが答えた。

「登録者が二百人を超えた」と魔王ゼルディアが言う。

「まだ二百か」とバハムートが返す。

「まだ、ね」

 精霊王シルフィードがにやにやしながら言った。

「これからだよ、これから!」


 バハムートは何も言わなかった。

 ただ、その口元が、わずかに緩んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ