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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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新たな加護

 視界が明滅している。

 全身の筋肉は悲鳴を上げ、脳細胞は焼け焦げるような熱を発していた。

「……はぁっ、はぁっ……!」


 レンは地面に這いつくばりながら、荒い息を吐き出した。隣ではサクラが、Aランク領域特有の高濃度魔力瘴気に当てられ、血を吐いて倒れ伏している。

 エキシビションで九条颯真と戦うため、そして「無名の王」のテロを阻止するため。


 その絶対的な目標があるにもかかわらず、今の自分たちの実力では、SランクのアリサどころかAランクの魔物たちにすら押し潰されそうになっていた。

(……考えろ。思考を止めるな。サクラさんの魔力と同調しつつ、敵の動きを読んで、三属性の魔法を編み上げるんだ……っ!)


 レンは必死に脳を回そうとする。だが、情報量が多すぎる。

 普通の高校生に過ぎないレンの脳の「処理能力スペック」では、Sランク同士の戦闘に匹敵する演算をこなすことなど到底不可能だった。


「どうしたの? もう終わり?」

 アリサの冷酷な声が頭上から降ってくる。彼女の木刀が、無慈悲に振り上げられた。

「サクラさんのサポートも限界ね。今の君はただの的よ」

 木刀が振り下ろされる。


 回避しなければ。

 そう頭では分かっているのに、処理落ちを起こした肉体はピクリとも動かない。

 ――万事休す。

 レンがそう覚悟して目を閉じた、その瞬間だった。

『ピロリンッ!』

 場違いなほど軽快な電子音が、二人の耳に、いや、脳内に直接響き渡った。

 同時に、宙を浮遊する配信用ダンカメから、黄金と深紅の強烈な光が放たれる。

【賢神ソフィアが¥1,000,000 をスーパーチャットしました!】

【賢神ソフィア】:少年よ。器は満ちた。その焼け焦げそうな脳髄に、私の『叡智』の欠片を授けよう。

【戦神アレスが¥2,000,000をスーパーチャットしました!】

【戦神アレス】:小娘! 瘴気ごときに魂を削られるな! お前のその折れぬ心意気、我が闘気で守り抜いてやろう!

 それは、ただの投げ銭ではない。


 異世界の神々が、直接彼らの「魂」に干渉し、システムを書き換える現象――『加護スキルの授与』。

《システム通知:対象『神代レン』が、加護スキル『未来予測』および『並列思考』を獲得しました》

《システム通知:対象『佐藤サクラ』が、加護スキル『不屈の魂(状態異常無効)』を獲得しました》

「……え?」


 最初に異変に気づいたのは、サクラだった。

 先ほどまで肺を焼き、神経を麻痺させていたAランク領域の高濃度瘴気が、ふっと消え去ったのだ。

 いや、瘴気はそこにある。

 だが、彼女の肉体を透明な『闘気のオーラ』が包み込み、あらゆる状態異常を完全に弾き返していた。

「息が……できる。痛くない……!」

 サクラは弾かれたように立ち上がる。

疲労は残っているが、魔力回路を阻害していた毒が抜け、透き通るような魔力が全身を満たしていくのが分かった。


「レンさん!」

 サクラが振り返ると、レンの様子も劇的に変化していた。

 苦悶に歪んでいた表情から険しさが消え、その瞳には、まるで静かな湖面のような異常なほどの『凪』が訪れていた。

(……なんだ、これ)


 レンの世界は、完全に変貌していた。

 熱暴走を起こしかけていた脳が、一瞬にして冷却されたような感覚。

 思考が、いくつもの『部屋』に分割されていくのが分かる。

 一つは、肉体の制御。

 一つは、三属性魔法の術式構築。

 一つは、サクラとの魔力同調シンクロの維持。

 そして一つは、周囲の状況分析。

 これが『並列思考』。

 膨大な情報を、複数の脳で同時に処理しているかのように、一切の遅延なく完璧にこなすことができる。

 さらに、レンの視界には奇妙な「光の線」が無数に浮かび上がっていた。


 アリサの筋肉の僅かな収縮、重心の移動、魔力の流れ。

 周囲で様子を窺っているAランク魔物『シャドウ・フェンリル』と『ブラッド・トレント』の殺気。

 それらすべての情報から導き出された『0.5秒後』『1秒後』の未来の軌道が、光の線となって網膜に直接投影されている。


 膨大な知識量と情報処理によって導き出される絶対的な解。これが『未来予測』。


「……見える」

 レンは小さく呟くと、振り下ろされたアリサの木刀に向かって、最小限の動きで自分の剣を合わせた。

 ――カァンッ!!


 澄んだ音が響き、アリサの攻撃が完全に弾き返された。

「なっ……!?」

 S級探索者であるアリサの瞳に、明確な驚愕が浮かぶ。


 力任せに弾いたのではない。アリサの剣速、角度、威力を完全に読み切り、最も力が相殺される『点』を正確に突いたのだ。


「サクラさん。……同調シンクロ、もう一度お願いします」

 レンが振り返らずに言うと、サクラは力強く頷いた。

「はいっ! ……レンさん、行きます!」

 再び、二人の魔力回路が強引に接続される。


 だが、先ほどまでの激痛はない。

 サクラの『不屈の魂』が同調による精神負荷を軽減し、レンの『並列思考』がサクラからの膨大な支援情報を完璧に整理して受け入れているからだ。

「グルルルゥゥッ!」

 二人の隙を突き、三体のシャドウ・フェンリルが死角から同時に飛びかかってきた。


『レンさん! 右後方から三体!』

 サクラのナビゲートが脳内に響く。だが、レンの『未来予測』はすでにその軌道を完全に捉えていた。

「分かってる。……サクラさん、光魔法で対象の視界を奪って」

『了解! 《ライト・フラッシュ》!』

 サクラの放った強烈な光がフェンリルたちの目を焼き、その動きを一瞬だけ硬直させる。


 そのコンマ数秒の隙。

 未来予測の光の線が、魔物の『急所』への最短ルートを指し示した。

「……《雷火のライトニング・フレイム》」

 レンは剣に雷と炎の二重属性を付与し、風のように駆け抜けた。

 ズパァァンッ!!

 一閃。ただの一振りの剣撃が、三体のAランク魔物の首を同時に、そして正確に跳ね飛ばした。


 先ほどまで傷一つつけられなかった強敵が、あっけなく光の粒子となって消滅していく。

【精霊王シルフィード】:おおおおおおお!!!!!

【雷神トール】:ハッハッハッ! 見たか! 我が雷を完璧に制御しおったわ!

【古代龍バハムート】:……賢神と戦神の加護か。なるほど、理にかなっている。これであの少年は『知恵』を手に入れた。

 凄まじい速度で流れるコメント欄。


 アリサは木刀をだらりと下げ、信じられないものを見るような目でレンを見つめた。

 先ほどまでの、力任せで危なっかしいEランク探索者の動きではない。

 S級の自分ですら一瞬見惚れるほどの、無駄を極限まで削ぎ落とした『洗練された暴力』。

「……なるほど。これが、あなたたちが神々に選ばれた理由」

 アリサの口角が、ゆっくりと吊り上がる。


「いいわ。合格よ。……それじゃあ、今の動きを『息をするように』できるようになるまで、残り十日間、みっちり身体に叩き込んであげる!!」

 絶望の底から、新たな力を手に入れた二人。


 Aランク領域の過酷な修行は、ここからが本当の地獄スタートだった。

サクラ(ちょっと、私の加護少なく無い!?)


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― 新着の感想 ―
サクラが少ないというよりレンが多すぎる気がする加護 まだ増えそうな予感もするし…
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