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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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地下三階、初潜入

「えー、配信始まってますでしょうか。Eランク・無職の神代レンです」

 翌日。

 いつも通りダンジョン配信を開始すると、ものの十秒で常連たちが揃った。


【古代龍バハムート】が入室しました

【魔王ゼルディア】が入室しました

【精霊王シルフィード】が入室しました

【戦神アレス】が入室しました

【死神ネクロス】が入室しました

【賢神ソフィア】が入室しました

【雷神トール】が入室しました 


「皆さん、今日も早いですね。トールさん、昨日は一千万もありがとうございました。税務署の無料相談、予約取れました」

【雷神トール】:……なぜそこで税務署が出てくる。


【精霊王シルフィード】:レンくん真面目だねえ!

【魔王ゼルディア】:相変わらず小市民だな。

 そこまでは、いつも通りの日常だった。

 だが、今日は少しだけ違った。


【dungeon_watch】が入室しました

【探索者志望くん】が入室しました

【渋谷民】が入室しました

「あ、新規さんだ。いらっしゃいませ」

 視聴者数「10」。初めて二桁に乗った。


【探索者志望くん】:渋谷第三って低層ですよね。Eランク帯?

【渋谷民】:てか、コメント欄のロープレ勢なにこれ。有名な人たち?

【dungeon_watch】:登録者3人なのに同接10人ってバグ?

【古代龍バハムート】:有名ではない。

【精霊王シルフィード】:いやいや有名だよ!

【古代龍バハムート】:余計なことを言うな。


【渋谷民】:え、本人たちがレスしてきたw

【探索者志望くん】:なんで毎回いるんですかこの人たち

【魔王ゼルディア】:暇だからだ。

【渋谷民】:正直すぎるw

「えーと、いつもお世話になってる常連さんたちです。今日は地下三階の未探索エリアに行ってみます」


【dungeon_watch】:無職のEランクで地下三階!? 死ぬぞ!

 新規リスナーたちが驚く中、レンは慎重に歩みを進めた。



 地下三階。空気がひやりと重くなる。

 ちなみに、渋谷第三の地下3層の推奨ランクはCランク相当である。

 通路の奥で、魔石のライトを絞ったレンが足を止めた。


「……何か、いますね」

【賢神ソフィア】:前方二十メートル。大型だ。

【戦神アレス】:来たな。いい獲物だ。

【探索者志望くん】:え、え、何がいるの?

【dungeon_watch】:ソフィアさん、見えてないのになんで分かるの?設定ガチすぎん?


 暗闇から現れたのは、体長二メートルを超える四足歩行の魔物。

 Dランク上位個体『アイアンウルフ』だった。

 鋼鉄のような毛並みを持つ、俊敏な殺戮者だ。

【dungeon_watch】:嘘だろ、Dランク上位じゃん!

【探索者志望くん】:逃げて! Eランクじゃ絶対無理!!

【死神ネクロス】:さて、今日は私の出番があるかな?


「……逃げ道、確認しました。でも、やれそうな気がします」

 レンの言葉に、新規リスナーたちがざわつく。

【雷神トール】:昨日与えた力、試してみろ。

【古代龍バハムート】:焦るな。気配を読め。


 アイアンウルフが低く唸り、地を蹴った。

 凄まじい速度。ステータス補正ゼロのEランクでは、目で追うことすら不可能な一撃。

 だが――レンは焦らなかった。

(動き出す瞬間、魔力が足元に集まる。軌道が……視える)


 レンは一歩だけ横へ滑るようにステップを踏んだ。

 アイアンウルフの凶爪が、レンの鼻先数ミリを空振る。

【探索者志望くん】:は!? 今の躱した!?

「今だ」

 すれ違いざま、レンは右手に意識を集中した。


 昨日、雷神トールから与えられた力。

 バチッ! と青白いスパークが弾け、レンの手のひらから極太の雷撃が放たれた。

 ドガァァァンッ!!

 至近距離からの雷魔法がアイアンウルフの横腹を直撃する。

 悲鳴を上げる暇もなく、Dランク上位の巨体が吹き飛び、光の粒子となって消滅した。


 討伐時間、わずか五秒。

【精霊王シルフィード】:やったーー!! かっこいい!!

【雷神トール】:ふっ、流石だ。

【古代龍バハムート】:……悪くない。

【死神ネクロス】:今日も仕事はなしだ。帰るか。


 神々がいつものように褒め称える中、新規リスナーたちは完全に硬直していた。

【dungeon_watch】:え、は?

【渋谷民】:『無職』で雷魔法……!?

【探索者志望くん】:しかもノーモーション!? 詠唱どこいった!?

【dungeon_watch】:てかDランク上位をワンパンとか、バグってねえかこの配信!?


「ふう、トールさんのおかげで助かりました」

 レンは全く事も無げに剣を収めた。

【dungeon_watch】:お前ら、これ絶対ヤバいぞ。録画したか!?

【渋谷民】:即チャンネル登録したわ。

【探索者志望くん】:俺も。

 画面の隅で、登録者数が跳ね上がった。

『3』から『15』へ。


「あ、登録者増えてる。ありがとうございます」

 レンは少し照れくさそうに笑いながら、本日の配信を終えた。



 探索者協会・分析室。

 天城ユイは、アイアンウルフ討伐の映像をコマ送りで見て、頭を抱えていた。

「雷魔法の発動まで、コンマ数秒……? あり得ないわ」

 魔法というものは、マナを練り上げ、形にするプロセスが必要だ。昨日魔法を覚えたばかりの人間が、息をするように一瞬で発動できるものではない。


 さらに言えば、『無職ノービス』というジョブクラスで魔法を使っていること自体が、協会の常識を根底から破壊している。

「ステータスは最低のE。でも、魔力制御と身体操作はAランクのトッププロ並み……」

 ユイは震える手で、資料にタイピングした。

【神代レン。魔法適性および戦闘技術において、既存のランクシステムでは測定不能】



 その夜。

 レンの知らないところで、事態は急加速していた。

 SNSのダンジョン動画共有サイト。

 一人のリスナーが投稿した切り抜き動画が、異常な勢いで拡散され始めていた。


『登録者3人のEランク無職配信者、謎のロープレ勢のアドバイスでDランク上位をワンパン瞬殺するんだがwww』

 コメント欄には、数え切れないほどの反応が書き込まれていた。

「主の動きヤバすぎだろ」

「てかコメ欄の『古代龍』とか的確すぎて草」

「死神ネクロスさんの『今日も仕事なし』で腹筋崩壊した」

 再生回数は、一晩で十万回を突破。


 そして、その動画は、一人の『最強』の目にも留まることになる。

――S級探索者、世界ランキング9位。

 霧島きりしまアリサ。


 彼女はスマホの画面を見つめながら、興味深そうに目を細めていた。

「……面白い動きをする子ね。それに、このコメント欄の人たち……ただのロープレ勢じゃないわ」


 最弱の無職配信者の名が、いよいよ人間界の表舞台へと轟き始めようとしていた。

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― 新着の感想 ―
面白いのにみんな見ないのか…このまま神様達だけの配信とかがいいですね
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