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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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地下三階、初潜入

 翌日。

 協会から正式に「隠し通路の探索許可」が下りた。

 発見者として記録もされた。

 報酬は三万円だった。

「三万円……」


【精霊王シルフィード】:えっ、少なくない!?

【魔王ゼルディア】:隠し通路の発見報酬としては相場だろう

【賢神ソフィア】:低ランク帯のダンジョンはそんなものだ

【古代龍バハムート】:先日のスパチャの三百分の一だな


「バハムートさん、比べないでください」


【古代龍バハムート】:事実を言った

【戦神アレス】:三万でも稼ぎは稼ぎだ。誇れ

【死神ネクロス】:珍しくまともなことを言うね

【戦神アレス】:‥うるさい。


「今日は地下三階に初めて行きます。未知のエリアなので、慎重に」


【精霊王シルフィード】:気をつけてね!!

【古代龍バハムート】:当然だ

【雷神トール】:昨日教えた雷魔法、今日こそ使え


「練習します」



 隠し通路を抜けると、地下三階への階段があった。

 昨日と同じ場所だが、今日は照明用の魔石を多めに持ってきた。

 階段を一段一段確認しながら降りる。

「足元、湿ってますね。地下水が近いのかな」


【賢神ソフィア】:地下三階は水脈が通っているダンジョンが多い。スライム系が増える可能性がある

【古代龍バハムート】:火は使うな。湿気で魔力が散る

【雷神トール】:逆に雷は水気があると通りやすい

【雷神トール】:今日こそ使え


「トールさん、すごく使わせたいんですね」


【雷神トール】:当然だ。せっかく与えたのに

【精霊王シルフィード】:トールさん親心みたい!

【雷神トール】:違う

【魔王ゼルディア】:そう見える

【雷神トール】:違うと言っている


 階段を降りきると、広い空間に出た。

 地下二階より天井が高い。壁の色も少し違う。

「おお……広い」

 レンはゆっくりと周囲を確認した。

 通路が三方向に分かれている。魔物の気配は今のところない。

「どっちから行きますか」


【古代龍バハムート】:中央だ。左は湿気が強い、右は何か気配がある

【戦神アレス】:右に気配があるなら右だ、行け!

【精霊王シルフィード】:中央!

【魔王ゼルディア】:中央が無難だろう

【死神ネクロス】:右は私が少し忙しくなりそうな気配だ


「死神さんに忙しくなりそうって言われたら右には行けないですよ」


【死神ネクロス】:正しい判断だ

【戦神アレス】:はっ、腑抜けが

【死神ネクロス】:生きてこそだろう

【戦神アレス】:……それもそうだな


「戦神さんが珍しく納得してる」

 レンは中央通路を進んだ。

 五分ほど歩いたところで、前方に魔物が見えた。

 大型のウォータースライムが二体、通路をふさぐように浮いている。

「うわ、でかい」

 地下二階のスライムの三倍はある。核も見えにくい。

「これ、どうやって倒せばいいんですか」


【賢神ソフィア】:水属性のスライムは物理攻撃を通しにくい。属性攻撃が有効だ

【雷神トール】:レン


「はい」


【雷神トール】:今だ


「え」


【雷神トール】:右手に意識を集中しろ。昨日から体に馴染んでいるはずだ


 レンは立ち止まって、右手を見た。

 言われてみれば、昨日から指先にときどきぴりっとした感覚がある。

 意識を集中する。

 じわっと、何かが手の中に集まる感触。

「……あ」

 指先に、小さな青白い光が灯った。


【精霊王シルフィード】:出た!!!

【古代龍バハムート】:ほう

【魔王ゼルディア】:発現させるか

【雷神トール】:そのまま前に向けて押し出せ


 レンはスライムに向かって、手を伸ばした。

 押し出す、というよりは、流す、という感覚で。

 ばちっ、と音がして、細い雷が走った。

 ウォータースライムに直撃した瞬間、内側から弾けるように消滅した。

 もう一体が怯んだところで、すかさず剣で核を砕く。

 二体、撃破。

 沈黙。

「……できた」


【雷神トール】:よし

【精霊王シルフィード】:やったーー!!かっこよかった!!

【古代龍バハムート】:上出来だ

【賢神ソフィア】:習得が早い。筋がいい

【魔王ゼルディア】:面白いな

【戦神アレス】:それでいい

【死神ネクロス】:今日も仕事なしだ、良かった


「トールさん、ありがとうございます。なんか、うまくいきました」


【雷神トール】:当然だ。私の加護だからな

【精霊王シルフィード】:やっぱり親心じゃないですか

【雷神トール】:だから違う


「でも嬉しそうですよね、トールさん」


【雷神トール】:…………

【魔王ゼルディア】:図星だな

【雷神トール】:黙れ


 その頃、分析室。

 ユイは仕事をしながら配信を流していた。

 さっきの雷魔法の場面で、思わず手が止まった。

「……雷魔法、発現させた?」

 巻き戻して確認する。

 コメントで指示を受けてから発現まで、十秒もかかっていない。

 ユイはデータベースを開いた。

 雷魔法の初期習得者の平均発現時間を検索する。

 結果:平均四十三日。

「……」

 ユイはメモに書き込んだ。

【雷魔法・初期発現:習得当日。平均値との乖離:約四十二日】

 偶然かもしれない。

 でも偶然にしては、ちょっと数字が離れすぎている。

 ユイは配信画面に目を戻した。

 レンが通路の奥へ進んでいく。慎重に、でも迷わずに。

(この子、本当に何者なんだろう)

 昨日と同じことを思った。



 地下三階の探索を終えてダンジョンを出ると、空は夕暮れになっていた。

 本日の成果。

 未探索エリア踏破、ウォータースライム系を七体討伐、雷魔法初使用、ドロップアイテム四つ。

「今日は充実してた」


【精霊王シルフィード】:充実してたね!

【古代龍バハムート】:まあな

【魔王ゼルディア】:悪くない一日だ


「みなさんのおかげです。いつもありがとうございます」


【古代龍バハムート】:……気にするな

【精霊王シルフィード】:また来るね!!

【雷神トール】:精進しろ

【賢神ソフィア】:また教える

【戦神アレス】:次は正面突破もできるようになれ

【死神ネクロス】:今日も仕事がなくて何よりだ

【魔王ゼルディア】:また明日


「また明日。ありがとうございました」

 配信終了。

 本日の視聴者数:11人。

 チャンネル登録者数:5人(初めて増えた)。

レンはログを確認して、小さく笑った。

「登録者、増えた」

 二人だけど、確実に増えた。

(ちゃんと続けよう)

 そう思いながら、帰路についた。


 異世界のどこか。

 雷神トールは一人、今日の配信ログを見返していた。

 雷魔法が発現した瞬間のところで、何度か止めた。

「……すぐに出すか」

 それが出来るのは普通の人間ではない。

 それは分かっていた。

 でも今日、確信に変わった。

 トールは静かに呟いた。


「次は何を与えようか」


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― 新着の感想 ―
面白いのにみんな見ないのか…このまま神様達だけの配信とかがいいですね
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