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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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スパチャは計画的に


 三日目。

 配信開始から十秒で全員集合した。


【古代龍バハムート】が入室しました

【魔王ゼルディア】が入室しました

【精霊王シルフィード】が入室しました

【戦神アレス】が入室しました

【死神ネクロス】が入室しました

【賢神ソフィア】が入室しました


「……全員、速くなってる」


【精霊王シルフィード】:通知来た瞬間に開いた!

【魔王ゼルディア】:暇だからな

【古代龍バハムート】:たまたまだ

【戦神アレス】:同じく

【死神ネクロス】:嘘つくな全員

【賢神ソフィア】:…否定はしない


「正直なのは賢神さんと死神さんだけですね」

 今日のダンジョンは地下二階の奥、まだ自分が踏み込んだことのないエリアだ。

 マップには「未探索」と表示されている。

「さて。新エリアです。何が出るかわからないので慎重に行きます」


【戦神アレス】:突っ込め

【精霊王シルフィード】:慎重にね!

【魔王ゼルディア】:索敵しながら進め

【古代龍バハムート】:左通路は罠がある


「え、もう罠の情報あるんですか」


【古代龍バハムート】:ダンジョンの構造は見ればわかる


「見ればって……見えてるんですか、私のカメラ越しに」


【古代龍バハムート】:ああ

【賢神ソフィア】:石の質と湿度で大体わかる

【魔王ゼルディア】:慣れだ


(このロープレ勢、設定の解像度が高すぎる)

 レンは左通路を避け、右から進んだ。

 壁をよく見ると、確かに左の床に不自然な継ぎ目があった。

「……本当に罠だ」


【精霊王シルフィード】:バハムートさんすごい!

【古代龍バハムート】:当然だ

【戦神アレス】:罠など踏み抜けばいい

【死神ネクロス】:それだと仕事が増えるからヤメテ

【戦神アレス】:黙れ


「戦神さんと死神さんの相性最悪ですね」

 右通路を進んだ先、広めの部屋に出た。

 中央に、大きめのリザードマンが一体。

「……あ」

 Dランク相当のモンスターだ。

 レンのランクより一つ上。

「えっと、これ私の手に負えるかな……」


【古代龍バハムート】:逃げろ

【戦神アレス】:戦え

【魔王ゼルディア】:状況次第だ

【精霊王シルフィード】:どっちどっち!?

【賢神ソフィア】:まてあのリザードマン、右足をわずかに引きずっている。負傷個体だ


「負傷してる?」

 よく見ると、確かに右足の動きがぎこちない。

「……行けるかも」


【古代龍バハムート】:足元を崩せ

【賢神ソフィア】:右側から回り込めば重心が乱れる

【戦神アレス】:正面から叩き潰せ!

【精霊王シルフィード】:アレスさんはもう発言禁止! 【戦神アレス】:なぜだ


「精霊王さんのアレスさんへの当たりが強くなってきてますね」

 レンは深呼吸して、右側から回り込んだ。

 リザードマンが反応して振り向く。

 その瞬間、右足に重心がかかり――

 ぐらついた。

「今だ!」

 一気に踏み込んで、剣を叩き込む。

 リザードマンが床に倒れ、光の粒子になって消えた。

 沈黙。


【古代龍バハムート】:やったな

【魔王ゼルディア】:負傷してたとはいえDランク討伐か

【精霊王シルフィード】:すごいすごいすごい!!! 【賢神ソフィア】:想定より速かったな

【死神ネクロス】:今日は仕事なしだな

【戦神アレス】:まあ、合格だ


「やった……! Dランク初討伐だ!」

 レンは思わず声が上がった。

 震える手でドロップアイテムを拾う。

「やばい、ちょっと手が震えてる」


【精霊王シルフィード】:感動した!推せる!

【古代龍バハムート】:その程度で情けない

【古代龍バハムート】:…だが悪くない


「バハムートさんのフォローが毎回ギリギリなんですよね」

 そのとき、画面の端に見慣れないアイコンが光った。

 スーパーチャットだ。

「え?」

 金額を見て、レンは固まった。


【雷神トール】¥10,000,000 「よく戦った。雷の加護を与える」


「…………」

 しばらく、配信が静止した。

「いっ、いっせん、まん……?」


【精霊王シルフィード】:トールさんだ!!

【魔王ゼルディア】:気前がいいな

【古代龍バハムート】:いや、やりすぎだろう

【賢神ソフィア】:同意する


「あの、これ本物ですか……?」

 画面を何度も確認する。

 間違いなく一千万円と表示されている。

「え、え、ありがとうございます……? でも、なんで急に」

 その瞬間。

 レンの体に、ぴりっとした感覚が走った。

 指先から肩にかけて、細かい電流のようなものが流れる感触。


「っ……何これ」

 思わず剣を握り直すと、なんとなく手に馴染む感触が変わっていた。

 なんというか、力が通りやすい。


【賢神ソフィア】:雷の適性が開いた。初期スキルを取得したようだ

【魔王ゼルディア】:まさか本当にやったのか、トール

【精霊王シルフィード】:え、え、どういうこと!?

【古代龍バハムート】:スパチャで加護を渡すな。やりすぎだ


「あの……スキル、増えてる」

 ステータス画面を開くと、新しい項目が追加されていた。

 【雷魔法:初級Ⅰ】

「なんで……?」


【死神ネクロス】:縁というやつだな

【精霊王シルフィード】:いいなあ!わたしも何かあげたい!

【古代龍バハムート】:順番というものがあるだろう

【精霊王シルフィード】:えー


「あの、何が起きているか全然わからないんですが」


【魔王ゼルディア】:気にするな

【賢神ソフィア】:追々わかる

【戦神アレス】:強くなれば全て解決する


「解決しないと思います」

 配信終了。

 本日の最終視聴者数:8人(雷神トールが加わっていた)。

 チャンネル登録者数:3人(本当に変動しない)。

 スパチャ収益:¥10,000,000。


「……確定申告、どうしよう」

 レンは一人、真剣に悩んでいた。

 税理士に相談するべきか。

 

 それとも事務所に入るべきか。そもそもこのお金は使っていいのか。

 配信の内容より現実的な悩みが、頭を占領していた。


 そのころ異世界では。

 雷神トールが腕を組んで、どこか満足そうにしていた。

「いい反応だった」

「一千万は多すぎる」とバハムートが言う。

「細かいことを言うな。あの人間、伸びる。早めに加護(ツバ)をつけておいて損はない」

 賢神ソフィアが静かに眉を上げた。


「トール。あなた本気で気に入ったのか」

「……まあな」


 短い沈黙の後、精霊王シルフィードが手を挙げた。

「じゃあ次は私がスパチャする!」

「待て」とバハムートが制した。

「順番がある」

「えーなんで」

「競い合うな。あの人間が混乱する」


 魔王ゼルディアが苦笑いした。

「既に混乱していたが」


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