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第一王子のロイヤルサバイブ 乙女ゲーは情報過多  作者: まるいのあっと


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 ◎閑話休題 梟の野望は東の辺境から⑤

お読みいただきありがとうございます

イイねが増えてヨロコビの踊りを密かに踊っております。

ヤットサー!ヨイヤサー?

国王陛下にも裸踊りでカポエラを…

踊らせたら公序良俗に反するのでしょうか?

てか、踊っている他の方々に失礼ですね。

すみません…お楽しみ頂ければ幸いです


 ◎悪魔の証明(あくまのしょうめい)


 ピョーンってなんだよ、ピョーンって!


 野朗の野太い、子供の甲高い悲鳴を感知した警備隊、腕に覚えのある侍女、侍従らが渦中の四男坊の部屋に一斉に駆けつけ、特殊性癖を持つ腐侍女はベッドで揉み合う医師と、四男坊ちゃんを凝視。

 警備隊は見事なアッパーを護衛騎士に決めたホーク坊ちゃんに驚愕し、賞賛の眼差しを送った。

 と、同時に「昇●拳? 」と誰かが呟いたのを聞き逃さなかった私。

 

 いるな? 転生者のモブが……。

 

 流石に私が叩きつけられた壁に蜘蛛の巣状のヒビ入っていません、身体強化で受け身取ったからね。

 

 顎イタイけど…。

 

 坊ちゃんは子供らしい癇癪を起さない代わりに自分より強い奴に殴りかかるような暴力衝動があるらしい…なんで?!

 自分より弱い奴に対しては衝動を抑え込むらしいが。

 抑え込むと知恵熱出すから発散させる為の生贄がいると。

 恐い! 

 はい、生贄です(笑)

 護衛騎士です、剣で向かってこられたら不味いですがステゴロならまだ負けません。

 10歳のお子様に殴られる位なら痛くも痒くも……ちょい顎イタイ。

  

 辺境伯家の子供って…。

 

 はい、ちょっとフーフーしてますが坊ちゃんの暴力衝動も収まりました。

 安全な坊ちゃんです 噛みつきませんよ。

 と、頭なでたら噛みつかれそうになった。

 人間に戻って! 猛獣じゃないですよね坊ちゃん!

 

 そしてこちら、リアル子供においたを許さない腐侍女はかくしから秒で暗器を装備する。


 標的:ベッドの上で坊ちゃんに覆い被さる医者。


 腐侍女すげー、確かにその医師、くたびれた中年親父の風体でバック転決めたり、秒でデイーオイレ坊ちゃん制圧できるのは只者じゃない。

 

 面白いじゃねえか、やっちまえ。

 顎ヒリヒリ。


 暗器を構え、にじりよる侍女にビビる先生。

 

 「俺は何もやってない! 」

 犯人の常套句ですな。


 そんな一触即発の場面にカツンカツンと足音が近づいてくる。


 カツン カツン…。


 いち早く気付いた警備隊、ざっとその場で敬礼、侍女、侍従が全員同じタイミングで中央を開け45度の角度で頭を下げる。

 

 開け放たれた扉の向こうに現れたのは。

 東域辺境伯・ミネルバ辺境伯家当主 堂々登場。

 

 後ろに側近の眼鏡のイケメン、イケメガを添えて。


 側近君、分厚いファイルを幾つも抱えているが…なに?。

 

 アッシュグレイがメインで黒、銀のメッシュが入った肩までの長さの髪、赤茶の赤多めの瞳、背の高い痩せた感じの片眼鏡の成人男性。


 このヒト、長男、四男が戻って来た時ポーションの樽かかげて雄叫び上げて走ってた、長男に似た学者肌な雰囲気を漂わせているけど脳筋(言動から多分)、恐ろしい顔で殲滅戦だの掃討だの叫んでたヒトだよな?

 

 王家、公爵家、辺境伯家 階級序列トップから3番目、その辺境伯家の当主たる威厳は王族に匹敵する。

   ウラオモテ、アリスギテコワイ領主様。

 

 「これは何の騒ぎかな? 」

 にっこりホーク坊ちゃんと私の方を向いて問いかけてきます。

 領主様、眼が笑ってません。

 というか私が見られてますよね、威圧込めて…ガクブル。

 皆でガクブル、顔を上げられません。

 

 「今、複数名の悲鳴がこの部屋から聞こえたようだけど…」

 ぐるりと室内を見回す領主様、医師にホールドされてぐったりした四男が一言。

 

 「牛丼特盛汁少な目紅ショウガ山盛り生卵付き、ビールキンキンで……」

 

 「は? 」

 領主様、他 眼が点。

 

 召喚呪文?

 なんの? …と、追い付かなかった思考を前世脳が解読した。

 そしてヒザから崩れ落ちる私。

 

 何処ぞのリーマンか! ディーオイレ坊ちゃん!

 

 医師が幽霊でも見ているような眼でディーオイレ坊ちゃんのホールドをはずす。


 「寝ろや坊主」

 先生、圧乗せてません?。

 「頼むから大人しく寝てくれ」

 布団の上で某昆虫のようにわさわさする坊ちゃんの手足を布団に入れ、ぽんぽんと布団を軽く叩いて寝かせてくれた。


 因みにこれ、ベッドというかこの世界ではお高い羽根布団です。

 ダブルというかトリプル位の大きさがある。

 豪勢です辺境伯家。

 

 「坊ちゃん、今は薬物抜くための治療中なので暫くは重湯(おもゆ)か粥だぞ」

 哀れんでか、律儀に答える医師(せんせい)

 

 「たまごかけごはん……」

 「重湯が終わったら次、卵粥にしよう」

 「もうひと声」

 「柔らかく煮込んだシチューかポトフつけるか? 」

 「…角煮で手を打とう」

 「どうしてそんな脂っこそうなものを…」

 ため息をつく医師。

 

 いや、なんで話が通じている? 

 それ、私の生きていた前世の食べ物……。

 

 「牛丼特盛……」

 警備隊の中からじゅるりとよだれをすする音と共に呟いた奴がいた。

 おい! 昇●拳とか呟いた奴だな?

 声、覚えたぞ!

 

 ポンポンされてお眠になったディーオイレ坊ちゃん。

 「次、起きたらヨロぴょーん」と呟き、目を閉じる。

 

 ぴょーんってなんだよ! ヨロぴょーんって!

 

 「……誰か説明を…」

 混乱しきった領主様が四男坊を呆然と見ている。

 

 「ディーオイレ坊ちゃん、薬物のせいで錯乱(さくらん)してます」

 にべもない先生の一言。

 「今、点滴で薬物を抜いてますが起きたらおかしな行動します」

 確定、ひどい!

 「ベッドに縛り付けて動けないようにすることを推奨します」

 先生…。

 

 薬で錯乱のほうが誤魔化せるけど…いや、流石にそれはない。

 坊ちゃん、転生者じゃないのだろうと愚考します?

 なんせぴよーん発言だよ、ぴょーん で、牛丼特盛…。

 

 もう、坊ちゃん大人しく寝ていてください。

 今は〈生きてるだけで丸儲け〉状態なんですから。

 

 ふと思い出す〈命、大事だよ〉アンパン齧りながら窓の外を見ている同僚…の記憶。

 暑い夏の日、何もない部屋で野郎二人でアンパン齧っているとか何の罰ゲームだ。

 そして何故、今前世の同僚の顔がちらつくんだろう。

 顔なんかよく覚えていないのに…。

 

 思い出しかけた前世だが、先生の発言で今世に引き戻される。

 

 「今のは領都の下町の食堂で出ているメニューです」

 詳しいな先生!

 そしてあるのか! 牛丼!!

 食べたい! (よだれ)をハンカチでふきふきする私に胡乱(うろん)な眼を向けるホーク坊ちゃん。

 牛丼ですよ! 牛丼!! あんぱんと牛乳も魅力的ですが……。

 

 「キンキンに冷えたビール…? 」

 ホーク坊ちゃんが呟く。


 「エールと似ていますが発酵の違う酒です」

 今度は私が説明する

 「低温発酵させるのでエールより雑味が少なくさっぱりしていて冷たくすると美味しいです」

 キンキンに冷えたビール ごくり。

 「エールはそれより高い温度で発酵させる風味豊かな飲み物です アルコール度数はビールと変わらないですが、管理しきれてないものが多く出回っているので酸っぱかったりするものもありますね」

 何故かビールより拘って管理する人間が少ない なので平気で酸っぱいエールが売られていたりするから怖い。


 そしてそれを取り締まる為、領都の騎士団はエールとビールの違いくらいは教育されてるのです。

 ふうんと、良く分からないという顔をするホーク坊ちゃん、あと10年待ってください。

 というか、酒飲めない筈のディーオイレ坊ちゃん ビールの味を知っているのは不味いです!

 

 息子とビールの話にため息をつく領主。

 「息子の為にすまんな、皆 仕事に戻って大丈夫なようだ」

 「息子を心配してくれてありがとう」

 一礼して集まった使用人達がその場を離れて行くが、腐侍女と医者はまだ対立、坊ちゃんに無体なことしたら次はないぞと威嚇して帰っていく。

 その先生、美人の奥さんいますよ…。

 

 最後に点滴を付け直して助手と医者が退出しようとしたとき、領主様が先生を止めた。

 「ディーオイレの経過報告を聞きたいが、先生の時間はいいだろうか? 」

 立ち上がりかけた先生、首を縦にふると、どっこいしょと座りなおす。

 

 どっこいしょって何処のおっさん…というか異世界(ここ)でも〈どっこいしょ〉なんだ。

 

 「患者の話なら時間ありますよ」

 助手が一礼して空になった点滴をワゴンに乗せて退出する。

 各自、椅子をあちこちから持ち寄り、ベッドの脇で半円形に座る。

 中央に先ほど見舞いに持ってきたバスケットの乗ったサイドテーブルを置く。

 

 側近がちょっとバスケットを避けて分厚いファイルの束を置いた。

 

 「長くなるようなら飲み物を用意しますか? 」

 護衛騎士とはいえ、坊ちゃんたちの相手をするのにお茶くらいは入れられる。

 「いえ、私で良ければ用意します」

 側近が立ち上がり隣室に行く。

 ホーク坊ちゃんの部屋と作りが同じならこの部屋と隣の部屋の途中に給湯室がある。

 朝のお茶や顔を洗う御湯を用意する為の部屋だ。

 

 「日持ちのしないものは処分しましょう、まだ薬物療法の食事制限中でしょうから」

 私はバスケットの中からごそごそ日持ちのしなそうなパイやフィナンシェなどを側近くんが出してくれた皿に取り出す。

 食事制限は考えてなかった すまんな坊ちゃん、俺らの胃の中に責任持って処分するよ。

 ハグハグ。

 

 領主様が懐からそっと小さい三角錐のようなものを出し、バスケットの影に置く。

 音声を外に漏らさないようにする魔道具。

 この場合、四男坊君に聞かせたく無い話か。


 幾つかの皿に菓子をとり、側近が入れてくれたお茶はそれぞれに渡る。

 私と側近の二人は領主様の後ろとホーク坊ちゃんの後ろにさりげなく移動。

 定位置にほっとします。

 

 「君らも話が長くなるので椅子に座ってお茶にしなさい」

 ほっとしたのもつかの間、領主命令です!

 

 側近と俺はこっちのほうが落ち着くのにと、渋々自分の分の椅子とお茶を用意した。

 すまんのう側近君、私の分までお茶用意してもらって、変わりに領主様のお隣に椅子用意したよ ある意味定位置だよね、側近の 悪意はないよ(笑)。

 ちらりと私の方を見てため息をつく側近君、がんばりたまえ。

 

 「私から先にお聞きしてもよろしいですか? 」

 各自、静かにお茶を一口飲んだ頃合いを見計らって先生から口火を切った。

 

 「四男ディーオイレ君は何か加護持ちですか? 」

 

 ホーク坊ちゃんがソーサーの上にカップをガチャリと置いてしまった。

 びっくりしたのか眼が見開かれている。

 食器で音を立てるのはマナー違反だが誰も咎めない。

 

 領主様はさほどの驚きもなくお茶を嗜んでいる。

 私はお茶を口に含みながら傍らのベッドで眠るディーオイレ坊ちゃんを見た。

 

 「神の愛し子、女神の寵愛を受ける者」

 それぞれ、手を出したり危害を加えると国が亡ぶ。

 「聖女、聖者」

 理不尽な行為に及ぶと天罰が下る。

 説明は要らないと思う。

 絵本で、教会で、学校の低学年で教わる必須の一般教養なので。

 

 「人柱と尊称持ちは聞いたことあるだろうか」

 他のメンバーは首を横に振る。

 文献は少なく、教わらない呼称。

 私は学生時代よく教会の図書館に通っていて、そこの文献で読んだことがある。

 前世で聞いた昔ばなしで荒れた川に橋を渡すために生きた人間を沈めて柱にするとか、雨ごいで生贄の命を捧げる…それと同じような話だと思っていた。

 

 「()()とは神の権能を密に人界に広めるための置きモノ」

 「()()()()とは、世界を動かすための爆弾」

 

 「人柱は本人が気づいていないが役目が果たせないようなことになると国が荒れる。」

 この世界の人柱とは神の力の媒体として生きて存在することに意味がある。

 「尊称持ちは、世界を動かす基点で(いのち)を使う為に存在する。」


 神に選ばれた、世界の為の部品であり使い捨ての燃料(いのち)


 先生は魔法ではない、通常ありえない力、能力を有する者達の伝説を挙げ、それが尊称持ちが命を燃やして世界を変えて来た証拠と話す。

 先生、教会付属の病院の医師だけあって良く知ってるし説得力ある。

 ジャンルは違うが人の命に関わるからか?

 そんな先生の白衣の肩には教会の医師の紋章が入っている。

 前世で言うところの〈ヒポクラテスの誓い〉のような意味があると前に聞いた事がある。

 

 「報告書にも書きましたが坊ちゃんに打たれた薬物が通常では考えられない種類と量なんですよ、生きているのが不思議とかそんなもんじゃない」

 「通常、魔獣だって生きてませんよ、この量、この種類の薬を打たれて」

 

 私は話を聞きながらずっと眠るディーオイレ坊ちゃんを見ていた。

 

 さっきの〈ぴょーん〉が幻覚だったのではないかと思う位に静かな寝顔だった。

 黙って寝ている時は美少年なんだよな 無駄に、起きてるときはそこいらの悪ガキだけどな。

 

 「4男の身体能力、魔法力がおかしいのは私も聞いている」

 領主様は飲み切ったお茶のカップをサイドテーブルの空いた場所に置いて立ち上がった。

 「色、変わっちゃったねぇ、ディーオイレ」

 ベッドに近づくと寝ているディーオイレ坊ちゃんの頭を撫でて呟いた。

 色、変わったことは変わったが父親である領主様と同じ色のバランスになっているので親子であるということに違和感はない。

 「この子の徒手空拳(としゅくうけん)の戦い方が独特だったので前世で覚えた戦い方じゃないかと一度調べてみたことがある」

 

 すみません、私が見た感じでは合気道と柔道の合わせ技ではないかと愚考します。

 私、前世での趣味は総合格闘技です。

 秘密ですが。


 「完全に思い出すタイプの転生者と、思い出すわけではないが何かの拍子に記憶が漏れ出して本人も気づかぬうちに行動に出るというタイプがいる」


 いや、牛丼とかビールとか言ってるし。

 

 「記憶持ちの()()()()()()じゃないかと言われた」

 

 学生時代、自分が転生者だということに馴染めずよく教会に行った。

 救いを求めたわけではないが、話を聞くことに救われたこともある。

 

 世界に嫌気がさしたこともある。

 

 領主様は愛おし気に子供の頭を撫でている。

 親が子供を愛おしいと思う感情は異世界も前世も変わらない。

 

 ポーションの(たる)を掲げて飛んでくるような子煩悩な領主様だ、誘拐事件は(こた)えたのだろう。

 

 「この子は多分尊称持ちだ、世界を動かして死ぬ爆弾、それまではどんなことがあっても死なない」

 

 「だから何度殺されても生きているんだ」

 

 部屋の空気が固まった。

 

◾︎転生護衛騎士控室の会話◾︎

(護衛騎士、次男担当 護2、

 長男担当 護1、

 三男担当 護3… 

 四男担当新人 護4)


護4:牛丼、カツ丼、親子丼!

ダカダカ前屈みでステップを踏む護4

何やってんだ?

護2:丼物ばかりだな、野菜とれ! ブロッコリー食え!

護1:筋肉には鶏胸肉とブロッコリー!

全員:脳筋!

護2:チート欲しいなぁ、こう…料理上手くなるチート

護1:真面目だな(笑)

護4:召喚すれば良くね? こう…豚丼ネギ乗せ汁だく生卵を添えて!

〈召喚呪文を唱えながら前世のジョ●ョ立ちの様な怪しいポーズを取る護4。〉

護2:お前は●屋しか食べ物屋知らんのか?

全:いや、今世●屋ないから!

ポン! 間抜けな破裂音と共に…出た! 牛丼が!!

全:……牛丼だと……?。

並盛り、トッピングなしの普通の牛丼だと?

スキル! 牛丼召喚!

怪しいポーズで叫ぶ護4

マジかよ…。

おあとが宜しいようで……?


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