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第一王子のロイヤルサバイブ 乙女ゲーは情報過多  作者: まるいのあっと


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◎閑話休題 梟の野望は東の辺境から③

お読み頂きありがとうございます

今回も流血の大惨事、続きます

そういうのムリ! という方は読み飛ばして大丈夫です 本編中で概要は語られるでしょう。

 読んでも大丈夫! と、思った方は自己責任でお楽しみ下さい。

いや、楽しい話ではないのですが…。

 ◎捜査(そうさ)

 

 捜索でディーオイレ坊ちゃんの護衛騎士が発見された。

 

 遺体で。

 

 こいつは身元がしっかりした地元出身の若い騎士…四男のディーオイレ坊ちゃんの護衛騎士。

 デイーオイレ坊ちゃんと相性が良かったのと若手で一番格闘技の腕があった事での護衛騎士への抜擢だった。

 小柄な騎士で四男が悪だくみするとき付き合わせることが多かった…お調子者だが隊のムードメーカーだった。

 

 致命傷は首から斜めに切られ、そのまま胸を突かれている傷、短剣などの小回りの効く獲物。

 …魔獣の牙や爪で襲われたと誤魔化せると思ったのか。

 掌と腕にも防御創、刃物から身を守ろうとしてできる傷。

 身を庇うだろう位置に掌の傷を合わせると鋭利な刃物の体の傷と合う。

 若い騎士と対峙した傷にしては入る位置が低い。

 子供を庇うため、間に入って切られた傷との言。

 淡々と古参の騎士が検死して解説していくのを見ているホーク坊ちゃん。

 私はうめき声が漏れないよう、口に手を当てた。

 前世で幾らでも見たのに今世で受けるインパクトは強く…きつかった。

 

 ホーク坊ちゃんは俯いたままずっと殺された護衛騎士の検死を確認している。

 表情がない。

 

 ディーオイレ坊ちゃんは彼になついていた。

 

 それもあるが東域辺境伯家の子供と騎士が攻撃されたと、いうこと。

 敵対行動を取られたというなら舐められてるわけにはいかない。

 

 跡目争いか貴族間の揉め事の報復なのだろうか…。

 単純に誘拐か強盗なのか…。

 

 騎士の本懐 騎士学校で叩き込まれる矜持と責任。

 がんばったな。

 居合わせた騎士、兵士が倒れた護衛騎士に深く敬礼する。

 〈貴方の仕事に敬意を表す〉と。

  遺体は布が掛けられ丁寧に回収された。

 

 残り行方不明者は長兄、四男、護衛騎士一人、侍女一人。

 午後から夜半にかけての大捜索網に関わらず見つからない…と焦っていたら…。

 

 「ただいまー! 」

 

 なんだとー!

 

 夜半かなり遅くなって兄弟は戻って来た。

 兄弟のみ。

 何をのんきな声で! と振り返って勢い、腰の剣の柄に手をかけてしまった。

 

 普通に家に帰ってきたという体で気軽にただいまを言うディーオイレ坊ちゃんは…パンツ一枚の兄を獲物の如く担いできた。

 

 はい?

 

 情景が、思考がおいつかない。

 なんでディーオイレの坊ちゃん、全裸なんだよ。

 どういうこと!

 パンツ履こうよ?

 

 鹿とか熊狩って持ってきたという感じで明るい声で話すディーオイレ坊ちゃんは、ぼたぼたと頭から血を流しながらいつものように嗤った。

 

 …全身血塗れで。

 

 その姿をうっかり近くで見てしまった新人の侍女2人がその場で卒倒し、やはり新人のフットマンが一人腰を抜かした。

 

 お前らもナニヤッテンダヨ ! 

 

 私とホーク坊ちゃんとベテラン執事が青い顔でかけより、獲物担ぎされた長男を抱き上げ、息の有無、傷があるかを確認、残りの侍女がタオルを持ってディーオイレ坊ちゃんに駆け寄ると悲鳴を上げた。

 ウチの百戦錬磨の侍女が悲鳴を上げるなんて! 返り血ばかりと思っていたが首から頭にかけてバックり切られていた。

 普通なら動けない傷だろう!

 「兄上をたのむ」

 ディーオイレの坊ちゃんは大人たちに囲まれながらホーク坊ちゃんに()()に話しかけてる。

 「兄上はたぶん()で眠っているだけです」

 執事がそのまま手配し医務室に待機させていた医者の元に運ぶ。

 

 少しほっとする、が 問題はディーオイレの坊ちゃんだ!

 

 ディーオイレの坊ちゃんは平気な顔でタオルを受け取って風呂上りに濡れた身体を拭くようにしていたが、たちまちタオルが鮮血に染まる。

 医務室へ運びたいがデイーオイレ坊ちゃんの異様な行動に誰もが立ち竦む。

 

 「あれ? 」

 不思議そうに呟く。

 

 拭いても拭いても血が流れてくる。


 当たり前だ、全身傷だらけだろう!

 

 周りの大人たちは平気そうなディーオイレの坊ちゃんと流れる血の多さと、異様な言動に動揺して正確な判断が出来ずにいる。

 

 「ポーションを! 用意してた最上級の奴! 回復師も! 」

 ハッと、立ち直った私は叫んだ。

 鮮血塗れのタオルをにぎりしめ、へへへと嗤うディーオイレ坊ちゃん。

 眼が笑っていない、視点が合ってない? 瞳孔が開いてないか? 

 おかしい。


 前世でこういう人間を見たことあったな。

 私は老衰で人生全うして転生したが、前世では警察官だった。

 

 ヤバイ薬でハイになって暴れている人間を確保したり薬で暴れる犯人の逮捕に何度か立ち会ったことがあるが、暴れる犯人はこんな感じだったと思い当たる。

 痛みや倫理観が薬でおかしくなって正常な判断が出来なくなっているんだ。

 

 てか、子供に何の薬盛ってんだよ!


 「毒消しと解毒薬も持ってこい! 何か薬を使われたんだ」

 「薬物の鑑定が出来る薬師も呼べ! 」


 ディーオイレの坊ちゃんが血塗れのタオルを落とした。

 己の手をあれ? と、不思議そうに首を傾けてみている。

 ホーク坊ちゃんもよくやる癖だ。

 

 平常時の子供がやるから可愛いんだよ。

 

 タオルを拾おうとして下を向くと頭から血が滴り落としたタオルに血だまりを作る。

 そのまま地面に突っ込む様に倒れるデイーオイレ坊ちゃんを慌てて抱える。

 小さな子供の身体は力なくだらりとさがり、坊ちゃんの手が地面に落ちた。

 

 背中や脇腹に無数の虫刺されのような跡があった。


 子供になにやってんだよ!

 

 「ディーオイレ! 」

 ホーク坊ちゃんの声に一時停止していた思考が再稼働する。

 

 冗談にならない。

 ぐったりと抵抗しない子供を抱きしめる。

 「生きて いれば まるもう け…だ か ら……」

 ちいさな…囁きのような声がした。

 「心配すんなって」

 何言って…?

 

 ハッとする。


 前世で子供を庇って滅多刺しにされて死んだ同僚の声が聞こえたような気がした。


 警官隊の突入時間は予定通りだった。

 最速だったと自負している。

 だけど…。

 だか、あと三分早ければ……。

 

 「よん、しっかりしろ!」

 抱えている私ごと抱えたホーク坊ちゃんは弟の耳もとで叫んだ。

 私はこの非常時に何ぼうっとしてた?


 〈生きていればまるもうけだよ〉

 

 若くして死んだ前世の同僚がビール片手に笑いながら言った台詞。

 

 「■■■…?」

 

 しかし、その答えはなかった。

 

 東の辺境伯当主が雄叫びを上げながら樽で上級回復薬を持って走ってくる。

 マジか?

 タチの悪い幻覚か?

 頭上に樽かかげてるよ…。

 樽入りポーションって何?

 帰りは明日の夜のはずでは?

 王宮に呼び出されていたのでは?

 王宮に出仕する時の煌びやかな衣装で汗だくで走っている。

 

 洗濯…大変だろうなあ。

 

 余り鍛えている印象のない学者肌の領主だが、何処にポーションの樽掲げる腕力が…。

 老齢の執事は執事で同い年位の老齢の司祭を姫抱っこでかかえて走ってくる。

 超高速で。

 乙女のようにおののく司祭…。

  

 ギャグかよ!

 

 全力で走って来たらしい教会付属の医院の制服を着た医師はそんな連中を追い越し、走りながら侍女にバスタオルや毛布を持ってこさせた。

 その上にディーオイレの坊ちゃんをうつ伏せに寝かせて持参の聖水で血のりを洗って傷を確かめている。

 連携凄い。

 オマケに聖水…小さな樽で背負ってきてる。

 前世でいうところの消毒液か生理食塩水扱いなのか?

 ホースのような長い管に水道栓のような栓が…。

 不謹慎ながら野球場でビールを売るお姉さんを幻視してしまった。

 

 当のディーオイレの坊ちゃんは。

 右腕が折れている。

 

 左の腹のあたりに刺し傷。

 

 太もものヤバイ血管の近くに傷。

 

 背中に無数の虫刺されのような傷。

 注射針があるのか? この異世界に!

 

 「ここ、血管が切られていたらもっと危なかった」

 医師は傷を洗いながらポーションをかけて止血しながら手当していく。


 ポーションでは傷が塞がらない。

 

 いちばん酷い傷は左頭の後ろ、斜めに殴られた傷。

 と、その下に首から肩にまで届く刀傷。

 

 部屋に戻る間も惜しんで夏の夜、外に松明の他、沢山の魔道灯を付けて傷の対処にあたる。

 「注射針の傷か? なんの薬打たれたか鑑定しないと」

 あるんだ、注射針。

 「普通の子供だったら死んでる、よくがんばったな坊主」

 ひとりごとのようにつぶやきながら頭の傷から順に治療していく。

 

 いやそれ、頑張って生き残れる傷じゃないです。

 

 あらかたの傷を洗い、出血の多い部位は布で押さえて血止め、骨はずれて外から見てもおかしい形になっていたのも正常なカタチに力づくで戻す。

 「意識がなくてよかったよ」

 力づく…力づくでバキッとやったよこの医師(せんせい)

 抑えろって言われて押さえていた俺、トラウマになりそうだ。

 言ってくれよ、事前に!

 

 次は回復魔法。

 司祭の上級回復魔法は東の辺境随一と言われているらしいが医師の治療より雑だった。

 

 「上級回復」

 

 ボソッと呟き両手をかざすと空中に細い光の棒状のものが現れ、そのまま輪郭が太くなりデイーオイレ坊ちゃんを包む。

 漏斗状の光がディーオイレ坊ちゃんの中から光の泡を吸い出すよう天空に向かって上昇していく。

 

 おい、魂吸い出したりしてないだろうな。

 

 そんな不思議な光景はフィっとじいさんのため息で消える。

 

 「とりあえず生きていくのに必要なエネルギー(聖なる力)は与えた。」

 「次、解毒魔法」

 「解呪魔法」

 次々と回復系の魔法をかけていく。

 最後にじいさん、今度は深々と息を吸うとその場に座り込んだ。

 「しばらく寝込むだろうが、身体の状態と魂の状態が合えば元に戻るだろう」

 「?」

 不思議な言い方だけど司祭クラスになるとこういう言い回しなのだろうか?

 治療した傷が赤い跡を残して塞がっている。

 それでも用心に傷が開かないよう包帯を巻くが流石腕の骨折は動かないよう当て板と包帯でぐるぐる巻きにした。

 頭も頭蓋骨をくっつける勢いでぐるぐる巻きにされている。

 

 領主様、長男と四男が行方不明ということで万難を排して教会に白銀貨を積み上げて連れて来たようだ。

 

 いつの間にか領主様と側近、侍従と領主様の護衛騎士が私達の回りを難しい顔で囲んでいた。

 最後に長兄の護衛騎士と侍女の奪還。

 四男の護衛騎士を殺した、四男に傷を負わせた奴らを掃討する。

 「首謀者を探し出して背景を聞き出したら掃討戦だ」

 領主様は文系で優男風なのに、こういう時は戦闘民族と化す。

 血筋なのか? 東域辺境伯家は全員戦闘民族なのか?

 

 うおおぉお…。

 空気がビリビリする程殺気だってます。

  

 領主様が帰還し、指揮系統が領主に戻ったので私はディーオイレの坊ちゃんを抱き起して病室に運ぼうとした…。

 坊ちゃん、気持ちよさそうに涎たらして寝ている…。

 

 大物ですか、坊ちゃん……。

 

 起きたら仲のよかった護衛騎士が亡くなったことを伝えなければならないのか。

 トモダチみたいにバカやってたよな二人で。

 

 辺境伯家の兄弟は護衛騎士達といい関係を作っていた。

 医務室に連れて行った長兄は大丈夫だろうか。

 彼の護衛騎士はまだ見つかっていない。

 

 ホーク坊ちゃんはじっとディーオイレの坊ちゃんが治療してそのままになっていたタオルや水桶を見ていた。

 ホーク坊ちゃんに声をかけようとしたら、医師が私の背をつついてディーオイレの坊ちゃんをよこせと手招きしたのでそっと渡す。

 教会の医師だが、領主の飲み友達のようなので信用できる。


 私はホーク坊ちゃんの護衛騎士なのでホーク坊ちゃんの側にいますよ。 


 私がそっと斜め後ろの定位置に付くと、ホーク坊ちゃんは血の付いた毛布を見る目線のまま呟いた。

 

 「犯人、見つけ出したら殲滅だ」

 

 眼が怖い、威圧が半端ない!

 坊ちゃんも東の辺境の戦闘民族!

 「犯人よ、首洗って待ってろよ。」

 と。


野朗共! カチコミだせ! と、護衛騎士の中の人が雄叫びを上げております

…乙女ゲーム だったのに!


四:おれのかんがえたさいきょうの作戦!

二:またお前かよ

一:よんは突拍子のない事考えるよな(笑)

四:敵の厨房にシュールスト●●ングの缶詰と缶切りを置く!

二:なんだ? それ

四:世界一臭い缶詰! 砦で開けると臭いで砦が使えなくなる!

一:それは異世界知識て作った缶詰ですね?

四:親父が国境視察の野営の酒盛りで開けたら、匂いで一個師団戦闘不能になったって(笑)

一、二:笑い事じゃねーだろ!!!

 誘拐事件、続きます。


お後が宜しいようで…。

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