◎閑話休題 梟の野望は東の辺境から ①
お読み頂きありがとうございます
本編では国王の国葬が始まります
心落ちつけて裸踊り待機の国王陛下の為に東の辺境の話をブッ込んで見たいと思います。
同じ10歳のホーク坊ちゃん〈騎士団統括局副長〉の子供時代とその護衛騎士の語りをお楽しみ下さい
◎チートっとチートっと。
「化け物」
子供を威圧しようとしているのか、上から見下げる視点で、その老人たちは言い放った。
すれ違いざまの、いきなりでびっくり。
いや、それ10歳の子供にかける言葉じゃないですよ。
坊ちゃん、10歳と言えない体格してますケド。
さっき騎士団団長ぶっちぎって延してましたケド。
闘技場の薄暗く冷たい石造りの廊下という風景に合わない華美な衣装、お貴族様でございとの主張甚だしい老人達の威圧、に負けてない、このコワモテのお子様、何処のお子様かわかってますよね? わかってらっしゃらないかもと思いましたが言いがかりつけてくるのは分かっていると理解します。
だから言わせて貰います。
身分は貴方方より高い方の子息様ですよ?
坊ちゃんは、めっちゃ老人方を無視。
いい年した老害が何してくれてんだよ、と 私はあきれる。
こいつら、これでも辺境伯の遠縁の伯爵家の元当主。
対する坊ちゃんはその本家、東域辺境伯2男、ホーク ゲイガン ミネルバ 10歳
東域辺境伯は王家に次ぐ高位貴族の御三家の家。
威圧バリバリの赤多めの茶色の瞳、黒にメッシュで灰色と赤が混じった髪。
10歳というより13歳位の美少年…みてくれはそう評していいと思うが…威圧がぁ! 威圧が怖い戦闘民族だよ? この子。
まあ…平民が着るような薄手で半そでのシャツにズボンに最低限の革の胸当てに手甲しかつけてないけど、剣だって闘技場の備品の安い鉄剣なのに…私はこの子供に戦って勝てる気がしない。
私は東域辺境伯家のホーク坊ちゃんの護衛騎士なのに…。
てか、護衛騎士要らないですよね。
無視されていることに苛立った老害達、懲りずに追い越そうとする子供に足をかけようとした。
させるかよ。
坊ちゃんの前、老害との間に入ろうとした私を腕で制すると坊ちゃん、さらりと老人の足の甲を剣の鞘で払う。
コロっとコロげる老人。
本当にコロっといったよ(笑)
それを冷めた眼で見下げるホーク坊ちゃん。
「邪魔」
口角片方だけ上げて嗤うって、何処の組織の若頭ですか!
代々辺境伯家は子沢山の場合が多い。
辺境伯家の嫡男以外で内政を補佐する兄弟達に当主が手持ちの男爵位や子爵位を譲ったりして分家が増えていく。
そんな増えた分家の老害。
それが末席とはいえ辺境伯家に係る家という矜持と血筋を振りかざし、己にある正当な権利のように地位や名誉を主張して口出ししてくる……ホント要らんお世話だ。
辺境伯家は高位貴族なのに辺境の野蛮な家だと侮って余計な事を云う奴らは多い。
何もわからん有象無象共が。
その有象無象の中には王都に近い飛び地を領地を持つというだけの勘違い分家もいる。
そういう奴らはわざと〈火のない所に煙は立たない〉とか嘯いて火の子を巻いていく。
これもそんな火の子のひとつだと考えていた。
「老害が」
こいつらも飛び地と爵位を分けて貰い独立した口のくせに、なんでこんな何もしないで権利だけを貪りたい老害たちにいいように言われなくてはならないのか。
坊ちゃん、ムカついたのか悪辣な顔で最大限の威圧を老人たちに放った。
とたん、糸の切れた操り人形のように わらわらと腰を地面につく老人達、顔色が紙のように白くなっている。
「腰抜かしてチびる位なら初めから言うなよ」
腰抜かした言い訳が立つ位に汚い言葉を吐き捨てる。
坊ちゃん、やりすぎ やりすぎですよ!
しかし、ここはキメ台詞を言う所だろうか? ざまぁ! と。
領都の南の端の港に近い広い土地の上に立つ闘技場。
パンと娯楽……ということではなく、単純に東の辺境の人間の脳筋な部分の血抜きをしようと作られた闘技場。
脳筋な男共は勝負や喧嘩や勝ち負けの賭け事が大好きときた。
どうしようもない 大人!
この闘技場は簡単に決闘だの喧嘩だので、酒場や飲食店の店舗や建造物を壊しまくる領民の血抜きのために建てられた公共の決闘場のようなもの。
使用料を払えば決闘、喧嘩のし放題、その上闘技場内の医療施設は料金が安く、決闘と関係のない一般市民のけが人も治療にやってくる。
まあ、ここではけが人しか手当しないので病気の人間は別の場所にある治療院に言って欲しい。
そこも領民ならお安く視てくれるから。
いつも決闘だの喧嘩だのにぎやかな闘技場は観光資源にも役立ち、闘技場に面する広場の屋台村は地元民、観光客でにぎわう美食な屋台飯で観光スポットとなっている。
賭け事も胴元が利益の1割を上納して正式な許可が下りてればOKというイージーモード。
今日は東域辺境と西の騎士団の手合わせ試合があるせいで祭りのようににぎわっている。
だからか、負けたら笑ってやろうと言う目論見がハズレて因縁つけてきたか。
一般人の入らない、関係者ばかりが通行する石造りの建物の狭く薄暗い廊下の半ば、私と坊ちゃんは試合が終わったばかりの歓声を背景に、大股に出口に向かった。
腰抜かしたじじい共を置いて。
まあ10歳の子供では脅すしてもこんな程度だろう。
今日、最終日の対戦は西方騎士団、団長35歳と東域辺境伯2男、ホーク ゲイガン ミネルバ 10歳との闘いだったが、坊ちゃんが圧勝し掛けた金の配分は5.5倍に膨れ上がっていた。
…誰だよ…10歳と35歳の戦いなんて組んだ阿呆は!
そして西方騎士団の団長も面白がって対戦受けるなよなー!
結構な手練れで色男だったが…。
可愛いお子様と試合して勝って嬉しいかぁ?
てか、坊ちゃん 勝ったけど。
私は一応反対したぞ?
大人の騎士同士の演習だとういうのに坊ちゃんを指名してきた騎士団長に阿保か! と叫んだら同席していた同僚の東域辺境伯家の騎士団長はあきれた声で俺に言った。
「仕方ないですよ、父上である当主様が会合があるたびに息子自慢してましたから」
半嗤いで。
私はコイツが坊ちゃんにかなりの額を賭けていたのを知っている。
西方騎士団団長は凄く嬉しそうにしている。
…お望みならココロ折る位やってやるから覚悟しろ! 坊ちゃんが(笑)
そして。
勝ちました(笑)坊ちゃん、圧勝です。
西方騎士団団長は負けてボコられたと言うのに凄い爽やかな笑顔で坊ちゃんを褒めている。
…口説いている?
負けたのに…私には団長に幻の犬耳と犬尻尾がぱたぱた嬉しそうに揺れているのが気になる。
脳筋によくある〈強さに惚れた〉って奴かな?
今期の東域辺境伯家の子供達は稀に見る大豊作だと、辺境伯に近い好意を持つ大人達は喜んでいる…が。
坊ちゃんらは野菜じゃありませんよ?
智の惣領、武の次男、豊作をもたらす緑の手の三男と誉めそやすが、実際他の兄弟も鬼才、多才な才能を持っている子供達だ。
特に4男と5男も特筆すべき才能をもっている。
四男は徒手空拳の名手に引けを取らない戦い方をする…7歳にして。
五男は魔法知識に関してはチートの域に達しているという…6歳にして。
まあ、余り披露する場がない上、本人たちも悪戯にしか使っていないようなのでほとんど目立たない、悪ガキの域で止まっているが。
4男の護衛騎士は……振り回され過ぎて哀れなり。
だってそんな物騒なもの披露する所なんてない子供見たらから護衛騎士なんていいオモチャだよ。
オモチャ代わりに戦闘訓練の相手にされ、毎回ボコボコにされている。
兵舎の医務室には奴専用のポーション棚がある。
嗚呼、護衛騎士とは……。
…鬼才、多才、天才といえば聞こえはいいが変態の集まりだ、と同僚は苦言を私に言ってくる 私じゃなく惣領の護衛騎士に言って! あのヒト隊長だから!
そしてホーク坊ちゃんは天才だの化け物だの言われても毎日鍛えている。
鍛えているから強いんだよ、と皆に言いたい。
…弟たちに何があっても対処できるよう、鍛えるしかできないと、だって俺はあいつらの兄貴だからと呟くホーク坊ちゃん、切ないなあ…お兄ちゃん。
辺境伯家は多産だが子供の死亡率も高い。
代々大人のくだらない矜持と見栄と欲望の犠牲になる子供は少なくない、今回のように嫌味や足かけ等は可愛いものと、家系図は語っている。
だから子供達には一人に一人は専属の護衛騎士が付く。
子供なんだから、無理しないで欲しいと思うのは私達夫婦に子供が居ないからではないぞ? 一応。
そんなぼっちゃんは今日は兄弟と4人で川遊びに行こうと約束していた。
坊ちゃんの数少ない息抜きの楽しみだったのに、3男は市場に変わった野菜の種が売っているとからと一抜けし、坊ちゃんはこちらの闘技場に引っ張られたため、長男と4男と護衛の騎士と侍女の6人で出かけた。
ガッカリする坊ちゃんの背中が煤けている。
ぱんぱん叩いてその煤けた気持ちを払えればいいのに……。
私も焼きたての川魚喰いたかった!
坊ちゃん達との夏の川遊びは護衛騎士達と坊ちゃん方で釣った魚を焚き火で焼いて、騎士達の馬鹿話に笑う子供達と護衛の無礼講。
私は…楽しいんだけど、いつも抗えない虚無で切なくなる……無いものねだりなのは分かっているが言わせてくれ。
川の上に床を作って涼しい場所で食べるそうめん、アユの塩焼きをサカナに冷酒を楽しむ…夏の暑い日…。
ちいーっす、改めてモブです。
ホーク坊ちゃんの護衛騎士です。
名前は秘密です。
東域辺境伯子息の護衛騎士なので(笑)
川床でそうめん食べたい転生者です。
夏のビールに枝豆も最高っすよね。
夏場になると思いだします。
海辺でビールに焼きそば、イカ焼きも最高っす。
じゅるり…。
花火見ながら、やりながらのビール、たこ焼き。
お祭りでのビール…。
夏が来れば思い出す、遥かな前世、遠いビール……。
知ってます? 東域辺境領は何故か他の地域より転生者や転移者が多いのです。
他は100年に1人か2人なのに比べ、この東域は1年に2~3人は転生者、転移者が出る。
おかしいだろ? 東域辺境領!
で、転移者は正体バレたら速攻捕獲、転生者は申請すれば保護が受けられるんですよ。
転生者は職業訓練や勉学の為の補助金。
転移者は半年ほどの生活保護と職業訓練、学問一般教養学習を受ければ他は自由。
職業選択も結婚も移動も自由。
何か裏があるのでは? と思いますか?
裏、あります。
転生、転移者のチート持ちを囲い込んで知識流出の制限、はっちゃけ黒歴史やりそうな奴の捕獲、矯正などなど こちらの世界に不都合になる情報の制限といったところです。
因みに私は隠れ転生者。
大丈夫、東域辺境領 怖くないよ 恐くない。
てか、捕獲された転移者、転生者ってぶっちゃけ保護期間が終わってもこの領地から出ない。
この領都で生活満喫してる方々が多い。
保護終了後の転居率5%と聞いた時は笑った。
わからんでもない。
上下水道普及率90%、前世の食べ物網羅していて卵かけご飯が食べられる。
ハンバーガーもあるしビールもキンキンに冷えている。
そんなん、この世界此処でしか味わえない。
王都に領主様の使いで行ったことあるがお高いホテルのトイレが壺だった時の絶望。
しょっぱいか激甘の両極の食事!
侍従長からお使いのお駄賃に東の辺境アンテナショップのお食事券貰って卵かけご飯食べた時の感動は忘れない!
魔法が使えて 仕事があって 異世界生活満喫できる条件がそろってる。
私も多少剣の腕があるが、もし王城騎士にしてやろうと言われても行かない。
異世界にしては快適すぎるだろ、ここの生活!
キャッツハー!
…王都で食べた卵かけご飯を思いだしてじゅるりと涎をたらしそうになった私をじっと見ていたホーク坊ちゃんが口をひらく。
「…気持ち悪いな お前? 大丈夫か」
「坊ちゃん……」
謎の戦闘民族集団、ミネルバ辺境伯家の、東の辺境の秘密が今、明らかに!
川床料理を懐かしむ新たなる転生者が!
●西人か? 昭●か、●成かもしや令●の生まれか!
カポエラを踊る謎の●西人の秘密は次回明かされる……のか?
次回はカポエラ踊りをサービス、サービスぅ(笑)




