◎不夜城 夜明け 開校! ノイエクラッセ王城内 小学校か!⑤
お読み頂きありがとうございます
今回、火災と流血と悲惨な過去回想があります
マイルドな表現を心掛けてみましたが苦手な方向けに事前ネタバラシします。
大丈夫、スルーしても何処かでシツコイ説明はいりますから!
◎近代兵器の功罪②
「どうする?」
「会議用テーブルで壁を塞ぐか? 」
テーブルは騎士たちにより二つに分け、端に寄せ小部屋の入口の盾としていた。
気休めでしかないが。
「サイズが小さい、隙間から火薬を投げ込まれたらまずい、向こうで爆破しても爆風がこちらまでくる」
「サイズ…」
ツヴァイ殿下が何か考えこんでいる。
老齢の賢者を思わせる集中力とその気配。
なんだろう? 何か既視感が…。
ピコーン!
高校生探偵?
「強化魔法ってモノに使える? 」
ツヴァイ殿下、ピコーンが下りた(笑)
「モノ? 」
「テーブルクロスを硬化させて壁を塞ぐ」
「それは硬化魔法になるな、武器に沿わせて硬化する魔法」
誰かと、見回すとバリエが手を挙げた。
「俺がやりましょう、でもテーブルクロスで爆発を防ぐほどは硬化できませんよ」
バリエは槍を使うが槍の柄は剣より弱いから硬化させて威力を上げることがあると聞いたことがある。
「自立しているなら俺の〈盾〉を覆えば爆風位は防げる」
「盾? 」
ツヴァイ殿下が不思議なモノを見るように俺を見ている。
「肉盾? 」
自分で発言しといて凄く嫌そうだ。
「いえ、俺のスキル 俺が触っているモノから5㎝位を覆って炎、氷、物理攻撃を防ぎます」
肉壁といえば肉壁だな。
衝撃は防げるのに縦揺れと寒さは防げない。
ちょっと不便。
「スキル? 」
本当は尊称、護国の盾。
「スキルです」
にこりと嘘くさい笑みでけむに巻く。
銀の魔眼を布で隠したツヴァイ殿下にも尊称があるのだろうか。
今は…。
「ツヴァイ殿下にもコレ、渡しておきます」
俺はツヴァイ殿下の手を取ってゲームの置石のような白い模様の入った石を小さな手の平に乗せる。
ツヴァイ殿下の手には子供らしくない剣ダコや空手のタコのような堅い部分があった。
鍛えている手だ。
石を乗せた手を軽くにぎらせる。
「軽く魔力を流すと一回だけさっき言った俺のスキルと同じことが出来ますよ」
握らせた手を上から俺の手で握る。
「アイン殿下にも渡していますが殿下は使いたがらないので、もしもの時はこれでアイン殿下を守ってください」
「いいの? 」
じっと俺の重ねた手を見ている、が首をかしげるツヴァイ殿下、アイン殿下が手を伸ばしてツヴァイ殿下が石を受け取るのを止めようとするが途中でバリエ達に手を止められた。
「俺のスキルを固めたモノですからいくらでも作れますよ」
石を握った手と俺を交互に見比べて困惑気味。
多分、ツヴァイ殿下 俺のスキル鑑定したな?
石でスキルを使うと俺がスキルを使えなくなるがそれはその時。
「俺はアイン殿下の護衛騎士です」
一兄と二兄が微妙な顔をしている。
二人にも渡そうとしたが拒否られた(笑)
なんでかな?
ジッと俺をみてわかったと言うように無言で頷くツヴァイ殿下。
絵画の裏からごりごり音がする。
ダイナマイトモドキを埋め込んでいる音か?
部屋に緊張が走る。
テーブルクロスを抱えたバリエが壁の絵画の前に出て振り上げるようにクロスを広げた。
「硬化!」
パキリとクロスが壁全体を覆うように広がり板状になるが、流石に攻撃を防ぐには弱いようだ。
俺も追従してクロスに手を置いて盾のスキルを使う。
ヴァン、と綺麗にハニカム構造の格子が現れる。
壁の一部にも光の格子が現れ、板状の布がピタリと壁に張り付く。
が、何故かアイン殿下も俺の腰の辺りからクロスに手を添えようとしている?
「私も爆風を反転させる魔法なら役に立つかもしれない」
ぎゃーーー! いつもなら絶対言わない台詞を叫んでしまった!
「誰か俺からアイン殿下を放してください! 」
料理している時に子供にまとわりつかれて危なくて動けなくなるお母さんだよコレ。
一兄がアイン殿下をぬいぐるみのように後ろから羽交い絞めで抱きかかえて端に寄る。
殿下、今この部屋で一番守られなければならないのは継承権第一位の殿下なんですよ!
と、ばぐん! と布の向こうの壁が崩れる。
同時に ギン、とハニカム構造の光の模様が布と壁を覆うように浮き上がる。
壁一面に六角形のハチの巣のような光の模様が浮き上がるのは綺麗だな、と。
思う間もなく、衝撃を緩和するように3回光った。
壁が壊れた後も何かの衝撃が盾を襲っている。
来たな! 通さないけどな(笑)
こちら側には熱も爆風も通さないので向こう側で何があったかはわからない。
強化した布に身体を押し付けていると、僅かに振動や衝撃が伝わる。
盾をどう使うかは未だ試行錯誤中でどう作用したら最適かが見えてない…ので壁に貼り付けている身体の面積を多くする。
…壁も俺の5㎝の領域に入ってたんだ。
残った壁にも一面ハニカム構造の光の模様がランダムに光る。
あれ? もしかして壁に強化魔法かけて俺の盾使えばよかった?
てか、部屋の壁一つ覆えるのか 尊称、護国の盾!
終わったことを後から色々考えても仕方ない。
が、何処迄覆える護国の盾?
振り切って顔を上げると一兄に抱えられたアイン殿下の顔色が悪い。
布ごしに壁の向こうを見ている?
どうなっているんだろう、向こう側は…。
「…向こう側、爆発が誘発されて火事になっている」
アイン殿下が口を手で押さえている。
吐きそうになっている?
「兄貴! マジックバッグと目隠し! 」
バルトがすかさず予備のマジックバックをアイン殿下の顔前に差し出す。
何見たんです! 殿下。
そんなに燃えるものがあったのか…6人?
火勢と熱気は盾で押さえられるが煙が僅かに侵入し始めていてる。
うすく煙、だと! 密閉しないと空気を求めて火が…!
二兄が思い出したように俺の元に小走りながら叫ぶ。
「お前の魔道銃を貸せ」
「了解! 」
魔道銃は俺の個人指定の出来るマジックバックにツッコんである。
背中を壁に付けたままマジックバックに手を入れて取り出し、まだこちらに走り寄る途中の二兄につかんだ魔道銃を投げた。
ちゃんと受け取れたか確認はしない。
そのまま手、背中、腰を壁に付け俯く。
盾で部屋一つ密封できないか?
考えろ! 俺。
バリエは壁に張り付くように手を押し付けながら俺を見ている。
汗が顔を伝わって流れている。
盾を隙間を超えて伸ばしていく。
大丈夫、5センチ迄範囲を伸ばせるなら建物の隙間位楽勝……な訳ないわ!
大丈夫、やれば出来る子! 俺は!
無理矢理ポジティブ 俺スゴデキ護衛!
息が上がる、全く動いていないのに?
盾を壁に這わせて拡大させていると、盾を這わせる前に状態を索敵出来る様になった、ラッキー!
索敵で城の間取り図が出来る。
其処まではいらない、頭痛が酷くなる。
部屋だけ、燃えている隠し部屋だけ盾で覆う。
そう、脳みそ吐き出してそうに頭痛い。
倒れたい! だか俺かバリエがここを離れたら布の強化が出来なくなってバックドラフトになるからな、確実に。
頼む、「バリエ、動くなよ」
こくこくと青い顔で頷くバリエは硬化魔法をかけ続けている。
俺の盾より魔力を放出しなきゃならないから辛そうだ。
本当にすまない。バックドラフトなんか来たら俺ら全員消し炭…。
バックドラフトって……。
これは前世知識だ、映画で見たのか? 何かの現場検証の画像が頭をよぎる。
…現場検証?
焼け跡、見知った部屋の残骸 おもちゃのような装飾の…鍵。
姉ちゃんがオタコレクション用に借りた部屋の鍵。
姉と父は焼け死んだ。
母と兄は家にいなかったので助かった。
誰かが話しかけて来る。
足元、ゴツイブーツの横に、姉が死ぬ直前までプレイしていたという。
〈乙女ゲーム ノイエクラッセの薔薇姫〉
のパッケージが焼け残って落ちていた。
拾おうとしたところで視界にノイズが走る
焼け残っている。
鍵はパッケージのなかに……。
何か鉄臭い水が鼻の奥から流れ出る。
…鼻水?
バックドラフトは炎が酸素を求めて爆発するんだったっけ?
なら火を消すには酸素が無くなるまで機密性を高めて部屋一つ、空間を閉じればいいのか。
頭の中で隠し部屋の空間自体を盾で閉じる、空間を閉鎖することに集中しすぎて、一兄が俺の魔道銃で扉を破壊して子供達を脱出させていることに気が付かなかった。
そして誰かが入れ替わりに入って来たことも。
頭の中に俺を中心に王城の地図がある。
火事になっている部屋を中心に盾を這わせ、部屋全体を密封状態に…火が消えた。
…こんなことも出来るのか俺の尊称。
嗤いが漏れた。
感覚を全て、隠し部屋を密封する事に集中したので己に何が起きているかもよくわからなかった。
ずぐりと心臓が傷む。
ごぼりと嗤った口の端から鉄の味のするものが流れた。
夕べ飲み過ぎたかな? 吐き気がする。
バリエが隣で何か音をがなっている。
すまん、音が分解されていて何がなんだか…。
悪いな、酸欠で火は消えたが室内が高温のまま。
バリエの硬化は限界そうだが俺の盾だけで硬化した布は自立出来るか?
誰かが俺を抱える熱の気配がした。
人の体温。
殿下ではないな……デカイしゴツイ。
「極寒冷境界」
渋いオッさんの声がした。
俺を抱えたおっさんが呟く。
この世界、女性少ない訳ではないに俺の周りは圧倒的に野朗が多い。
ちくしょー!
炎熱地獄の隠し部屋が今度は一瞬で氷結する。
誰か知らんがスゲーな。
バッグドラフトは回避された。
盾に全振りしていた感覚を少しずつ戻す。
少しずつ、少しずつ……音の意味が分かる、感覚が戻ってくる。
うっすら目を開けたら足元に赤いモノが散っていた。
ん?
横でバリエが転がっている。
騎士達が囲んで黄色い薬を飲ませようとしているのをバリエがなけなしの体力で拒否している。
東の辺境伯領謹製 魔力回復薬。
あれ、スキルに効くのかな。
馬乗りで暴れないよう押さえ込んで無理矢理飲ませないと……。
バリエ、飲んでやれよ(笑)
ぐったりしながら嗤う俺は何だか分からないうちに受け渡しされている。
俺はぬいぐるみかよ。
しかし抵抗する体力がもうない。
と、床にひっくり返されて馬乗りされてる?
既視感。
やばいと、カッと眼を開けた!
俺の真上、俺を押さえつけて馬乗りになる二兄のシルエット…
い…二兄?
「おーかーさーれーるぅ!」
か細い声で抵抗してみる。
乙女か俺! 思わずセルフツッコミ。
言われてブチっとキレたらしい二兄は、俺を乱暴に押さえつけた上、顎を掴んで口を開けさせた。
もう片手の指の間に器用に黄色、赤、青の細長い瓶を持って。
その瓶?!
待って! それ、待ってェ!!
東の辺境伯領謹製 魔力回復薬。
体力回復薬、傷回復薬、魔力回復薬。
三本セットで偽エリクサー。
別名、セミファイナル
口に咥えてきゅぽんと瓶のふたを開けて黄色から順番に俺の口に……。
うごーー!
兄貴! 口のなかでチャンポンに混じってる!
うごうご!!
口を押さえつけられたら息が出来ない!
ごーー!!!
抵抗させて! 押さえつけないで!
ゴヴァ!
鼻から吹きだしそうになったセミファイナルを両手で口と鼻を押さえつけられて飲み込んだ!
乱暴!
地面にめり込む程に押さえつけられて飲み込まされたらそりゃ暴れるわ!
俺は絶叫した。
断末魔の雄叫びを上げたのは前世で死んだ時もなかった。
魂が覚えている最初で最後(これで最後希望!)の絶叫だった。
…でも、生きてる俺 (笑)。
ミネルバ卿に悲しいお知らせです
フラフラしてる時、抱きしめてくれたのは
オッさんです。
馬乗りになって薬飲ませてくれたのも
オッさんです。
医務室に姫抱っこで運んでくれたのも
…オッさんでした。
ステーキ肉: ……抱きしめてほっこりする彼女欲しい!
お後が宜しいようで…




