◎不夜城 真夜中に会議は踊る⑤ 控えの間での寸劇②
お読みいただきありがとうございます
ノイエクラッセ王位争奪戦、佳境に入り始めました
王宮内でのロイヤルなサバイバル、誰がテッペン取るのか? 行間の余白までお楽しみ頂けると幸いです
◎踊り疲れたお風呂アヒルは
ぬいの海で溺れていた②。
乙女ゲーム 「ノイエクラッセの薔薇姫」
広告に掲載されていたキャッチを思い出す。
〈愛とは戦い奪い取るもの〉
なんじゃそりゃ? 昨今の乙女ゲームってそんな感じなのか?
息苦しい。
この世界がゲームの世界だって?
狩りゲーか無双だったら良かった。
野望はやり尽くされた跡だらけだ。
東の辺境領地内、至る所に野望の跡がある。
領主館の|アヅチ城《Schloss Azuchi》、楽市楽座、温泉まんじゅう…
ナニヤッテンダヨ、先輩方。
マジ、日本の名城が領主館。
見学可。
前世記憶持ち全員考えた? コレ、そう言うコトだよな?
でも、残念ながら今、俺の居る此処は乙女ゲームらしい。
ムカつく尊称、多分乙女ゲーの設定ブッコンでるな。
攻略対象全員子供…バク?
乙女ゲームなんてプレイしたことがない。
攻略掲示板なんて行ったことない。
断罪だのざまぁは噂では聞いたコトはあるが誰もが恋愛未経験年齢。(笑)
大体、恋愛する対象の女子が周りにいない!(絶望)
なので…そう言われても困る。
どうしていいかわからない。
その上、俺はどうも名前も出で来ないキャラらしい。
そうか、悟った。
恋愛フラグも立たない俺は。
モブか?
バグか?
なんだろう…
頭に熱が集まってぼうっとしてきた。
汗が垂れてくる…トビアス君のシャツで拭いてやる。
トビアス君が何か言っている。
誰の声も頭に入って来ない。
理解できない。
誰が背中を撫でている?
また刺されたのか?
此処が何処だかわからない
息が出来ない。
苦しい。
平衡感覚がなくなってぐしゃぐしゃになった。
俺、また死ぬのか?
深淵が口を開けていた。
堕ちてしまえば楽だと…ナニカが誘う。
だか、何かが頬にふれる。
冷たくて小さな感触 きもちいい…。
小さな感触を起点にヴァンと、広がる様に感覚が戻ってくる。
小さくて冷たい感触は頬から額に移動する。
撫でるように…慈しむように…。
全ての感覚が戻った。
眼を開けると アイン殿下が俺を見ていた。
相変わらずの無表情…なのに赤い瞳の中に俺がいた。
殿下も俺も生きている。
嬉しい。
あれ? 何故か殿下が変顔?
どういう状況か不明だが、床に転がっている俺をアイン殿下が座り込んで撫でていた…らしい。
尊い!
「殿下、不敬って罵ってください」
俺を撫でてくれていた小さい手を握って呟いてしまった。
殿下、デフォルトの無表情に戻る。
ドン引き…。
あれ? 皆何してんだ?
俺は控えの間の床で二兄に膝枕をされていた…。
堅い 膝が。
「感動の場面が台無しです」
殿下の後ろのソファに座ったトビアス君が呟いた。
覗き込んでいたのはアイン殿下だけではなかった。
ツヴァイ殿下に一兄、バリエにバルト…。
なにごとぉ!
「よん、袋要る?」
ああ…一兄が丁度頭が入る位の布袋を取り出して振っている。
とてもいい笑顔だ。
「お前、過呼吸になってたんだよ」
いや…袋での対処は違います。
「兄上の代わりに僕が踏んであげます! 」
ツヴァイ殿下も笑顔で俺の腹をげしげし踏んで来る…が、あまり痛くない。
所詮は子供、俺の腹筋は鍛えたシックスパック(笑) 子供に踏まれる位はご褒美です。
げしげし踏んで来るツヴァイ殿下、可愛いから踏ませてあげます、どうぞ存分に!
俺の笑顔にビビるトビアス君、猫侍女にしがみついてもどうしようもないぞ? 小声で変態って言うな。
ツヴァイ殿下もアイン殿下にしがみついて泣き言。
「兄上、僕だけではダメージを与えられません!、この護衛騎士、二人で踏みましょう!」
無表情なアイン殿下、コレは呆れてる顔です。
「…ミネルバ卿のご褒美になるだけだよ」
ヒドい! けどアイン殿下、適格な判断です。
「ミネルバ卿、恋人の前で変態のような言動はいただけない」
アイン殿下が蔑む眼でボソッと何か…俺が理解できない言葉を言った!
さっきの瞳に写った俺に対する慈悲深さは幻?
そして恋人?
んなもんいません。
いたら踏んでくださいなんて言いません。
俺…恥ずかしい話ですけど初恋もまだです。
中途半端な転生者の記憶のせいで生きていくのが精いっぱいです。
さっき転生心友になったトビアス君を見る。
トビアス君も同じだよな?
……思い切り眼を逸らせやがった?
ちっ、ゴーレムとはいえヨメのいる奴は。
トビアス君、仕草が時々おやじなくせに。
猫侍女に抱き着いたままのトビアス君は、ぐるんぐるんとはち切れんばかりに首を振って否定してくる。
あんだよー?
同担拒否?
「ショタだとは思っていた」
バリエ談。
「アイルとかアイン殿下とかショタ枠だな」
バルトは何を言っている? そんなこと言ったらお前もショタ…。
「アイル氏はショタジジだとの話だが…それでも…?」
一兄ぃ!
済まないが丸聞こえだよ、お前ら…俺は子供の正しい育成に助力したいだけだよ。
子供の幸せ万歳!
「トビアス君何歳?」
ごぶっ!
トビアス君、見ためが幼い、16歳位に見える。
色白いしそばかすとか幼く見えるな。
でも領都の大学の一年生なら18歳、なら立派な成人だろ?
酒飲んで馬鹿騒ぎ出来るんだよな?
な?
「…飛び級で大学入りましたので16歳ですが…」
見たままかよ!
「アウト」
二兄、言うか!
「ギリ、アウトですね」
バリエまで!
てか、ギリアウトってなんだよ?
「リーダぁー、未成年はダメですよ?」
何もねえよ!
「僕をそういう対象にしないでください、僕にはヨメがいるので」
ハイハイ、ゴーレムのね!
てか!
俺を変態みたいに言うな!
そういう対象って なんだよ!
「トビアス君は俺のイマジナリーフレンドじゃないのか!」
「それ、空想上の友達って意味ですよ?」
墓穴! 意味まで覚えてなかった。
精神年齢50歳のくせに!
二兄の膝に顔を埋めた。
「気持ち悪いぞ、よん」
二兄ぃ!
ソレはない 絶対ない。
「俺を何でもいい変態にしないでください」
兄の太ももは筋肉で堅いがいい匂いがした。
ポケットに誰かから貰ったいい匂いのするものが入っている?
くんくん彼女から? 彼氏から?
モテるくせに鈍感なとこ、気持ち悪いよ兄貴…
「元気になったならヒザから降りろ」
何かを察したか? 容赦ない。
てしっと頭はたかれて渋々起き上がる。
「…ミネルバ卿は浮気者なんですね」
あひる座りで俺を覗いていたアイン殿下は視線を落とした俯き加減で呟く。
「はい?」
俯いているので眼が合わない。
「変態で浮気者なんですね」
は?
アイン殿下、怒ってます?
なんで?
「私に踏んで欲しいだの罵ってほしいだとか言いながら…」
踏んで罵って欲しいとは言ってません…。
不敬って罵ってくださいとは言いましたが(笑)
「平気で私の眼の前で他のコと心中しようとする」
ソレは仕方ない。
ため息。
「申し訳ありません」
「でも、私一人の命で助かるならいいのでは?」
兄二人共、眼を細めたらしい気配。
残念ながら俺には見えない。
アイン殿下はというと座り込んだままぺたりと更に深く俯いてしまった。
「殿下?」
床に頭ついちゃいますよ? 王族なのに。
「…すぐ死ぬ…」
俯いたまま、絞り出すような小さい呟き。
いや、まだ死んでないです。
前世では一回死んでますけど?
バリエがアイン殿下を後ろから覗き込んでため息をつく。
「ミネルバ卿がアイン殿下泣かせました」
「泣いてない」
即答、珍しいアイン殿下の子供口調。
子供って泣いてるとき強がって言うよね、かわいい…とか言っていられない。
お怒りの原因は何?
「殿下…お気に召さない部分があったら直します」
俺も必死。
「無理」
一言!
「…すぐ死ぬから私の護衛からはずす」
そこまで!
ツヴァイ殿下がすり寄ってアイン殿下を下から覗き込む。
そしてため息をつくようにアイン殿下を抱きしめた。
「うん、ミネルバ卿懲戒免職」
ツヴァイ殿下容赦ない!
「不敬罪で王都追放」
断罪されてる?
なんだかいつのまにか、この部屋にいたメンバーに囲まれて責められてる。
コレは乙女ゲームでいう悪役令息断罪劇。
令嬢ではなく、悪役令息か!
囲んでいる奴らからは俺の弁明も擁護もない。
沈黙は是?
俺が何したっていうんだよ!
アイン殿下が言葉を続ける
「私の代わりはいくらでもいる」
ドキリと鼓動がはねる。
〈でも、私一人の命で助かるならいいのでは?〉
さっきアイン殿下に俺が言った言葉。
「誰も私を守って死ぬことはない」
王族の席を守るといいながら前国王と王弟だけ、を守った第一騎士団。
俯く顔を上げた。
俺たちは油断していた。
だんだん子供らしい表情を学習していくと、アイン殿下に期待していた。
健全に成長していくのだと油断した。
表情が抜けた人形の様な顔。
瞳が硬質な光を帯びている。
父王に無視され、大人達に利用され安い命と見積もられた。
「私を殺す為に死ぬものがいる」
図書館棟のアイン殿下を狙った自爆テロ。
まずい。
命令することは為政者として当たり前だろう。
道理をといて道を正す。
正しく物事を動かす為?。
選択して捨てる命。
守る命。
その判断を責任を10歳の子供に押し付けたのは俺たち大人。
他の王族や貴族達はアイン殿下が玉璽を押すことを大したこととは考えていない。
決定したことに、ただ判を押すだけの事と誰もが考えている。
玉璽を押すことにより動く金。
動く人間。
引き起こされる戦い
処刑される罪人。
その責任は誰が負うか、アイン殿下は知っていて玉璽を押す。
子供がよく言う 嫌い、やりたくない、好きじゃない、…。
アイン殿下からは聞いたことがなかった。
だから気がつかなかった と言うのは詭弁だ。
可愛げのない、聡い、子供なのに気持ち悪い。
金の散る瞳の化け物。
そんな言葉ばかりの中にいた殿下が傷つかない訳がない。
まずい。
殿下が負うものは〈負〉のみ。
手を伸ばしたかった。
抱きしめて違うといいたかった。
それを子供に押し付けた俺たち大人に殿下を慰める都合のいい掌はなかった。
沈黙。
と、無力感。
東の辺境伯の兄弟。
兄弟間の呼び名。
長男が いっちや。
次男が にちょん。
滑舌の悪い頃からの呼び名
三男 さんちゃ
四男 よん、又はよんちゃ
以下、同様に数字呼びでごー、ろくと続くが
八男は、はっちー……。
叫ぶ八男
なんでやねん!




